リンゴ覚醒1
トークショーのあとは、熊野先生のサイン&握手会がはじまった!みんな一列に並ぶ。私は、『くまりんず』の絵本の第5巻。(『くまりんれっど』が表紙のやつ!)ももは、『くまりんぴんく』のぬいぐるみにサインしてもらうんだ!早く番にならないかなぁ…。あれ?あの子誰だろう?
小学生くらいの男の子が特設ステージの横の物置?みたいなところに向かって歩いていく。その子は、金髪でウェーブのかかった短い髪。顔は白い肌にアーモンド形の赤い目に、つんとした鼻と唇。可愛いらしい顔立ちなんだけど、何か悪戯でも企んでいるような表情…。服装は星屑学園の学生服とほとんど同じデザインなんだけど、色が違っていて、白地で黒のラインが入っている。
「こら、君。こっちは入っちゃだめだよ!」
警備員さんが男の子の前に立ちはだかる。すると、その男の子が警備員さんの前に手をかざすと…
「うわぁあああー!」
警備員さんが、何か見えない力で突き飛ばされてしまった!
騒ぎに気づき、会場がざわつき始める…。
「何が起こったんだ!?」「人が今飛ばされたぞ!」「誰!?あの男の子?」「何があったのかな?」
男の子は、物置に向かって手の平から黄色く光るビーム?みたいなもの放った!
「どーも。はじめまして。僕の名前は『クリーム』。…さるお方のために『セカイ』を滅ぼす者!」
クリームがビームを放った物置から、『くまりんず(着ぐるみ)』が出てきた!
「なんで、着ぐるみが動いているんだ!?ショーが終わって、中に誰も入っていないはずだ!」
スタッフの人が叫んだ!って、ちょっと!夢も希望もないこと言わないでください…!
「僕のビームを浴びた物は命を宿すんだ!そして、僕の命令に絶対服従。さぁ!お前らこの会場をめちゃくちゃにしろ!」
クリームに操られた『くまりんず』は、会場内で暴れはじめた!特設ステージの柱をなぎ倒し、観覧席の椅子を投げつけ…やりたい放題。会場中は大パニックに!
「うわあああんっ。くまりんずが、わるいことしてるぅー!」
「こわいよ…。くまりんず、こわいよぉ…ママぁー!」
子どもたちは『くまりんず』の豹変ぶりにショックを受けて泣き叫んでいる…。
「お願い、やめて!私の『くまりんず』に酷いことをさせないで!」
熊野先生が悲しそうな顔でクリームの元へかけよった!
「うるさい。どうせ『セカイ』は滅ぼされるんだ…。だからお前の『セカイ』を壊してやる!!」
「きゃああっ…!」
熊野先生はクリームの見えない力で突き飛ばされてしまった…!
酷い…!ももを含め、会場中にいた人々は、この突然の出来事にショックを受けたのか倒れこんでしまった。でも、なぜか私は大丈夫だ…。なんでだろう…?
クリームも私に気づいたらしく、こっちに向かってきた。
「あれぇ?おかしいな…お姉さんは、どうして平気なの?」
「君は、いったい何者なの?どうして…こんな酷いことするの!?」
「言ったでしょ。僕の名前は『クリーム』。『セカイ』を滅ぼす者だって?お姉さんこそ何者なの?」
「私は…毒島リンゴ。…ただの中学2年生。」
「毒島…リンゴ…。ぷっ…。ふふふっ…。ははははっ!変な名前!毒島の毒とリンゴで、『毒リンゴ』ってこと?ははははっ!お姉さんの名前のほうが酷いよ!そんな酷い名前つけられるなんてよっぽど、親に愛されてないんだね?」
ぷつん…。私の中で何かが切れる音。
「今、私の名前を馬鹿にしたわね…?」
「あぁ!『毒リンゴ』の毒島リンゴ!」
その瞬間!私の体が光始めた…!?




