リンゴと委員長とヤンキー5
「き、キスって…どういうこと?」
「…ワイ、お前に殴られて呪われてもうたんや!」
「呪いって…。『毒リンゴの噂』のこと…?」
「そうや!そんで、その呪いを解くためには…お前にキスしなきゃあかんのや…。頼む!毒島、キスさせてくれ!この通りや!」
胡桃君!?土下座しちゃったっ!私、人を呪う力なんてないんだけどな…。
「胡桃君!土下座なんてしなくていいよ!…あのさぁ。『毒リンゴの噂』ってあれ全部、嘘だから…。」
「は?」
「うーん。全部嘘ってわけじゃないんだけど…。どうしてこの『毒リンゴの噂』が生まれたのか初めから話すね…。信じてもらえるかはわからないけど…。二人とも聞いてくれる?」
「うん。私、毒島さんの話聞くよ。」
胡桃君が立ち上がる。
「よくわからんけど…。話してみ…。」
私は、小さいころから名前のことでいじめられていたこと。小3の時にいじめっ子に仕返しするために、いじめっ子を殴って、自分に殴られると呪われるという嘘をついたこと。そのことが噂になり、広まっていくあいだに尾ひれがついて噂が改悪されていってしまったことを二人に話した。
「…だから、私に殴られても、関わっても、呪われることはないから二人とも安心してね。」
あれ、福田さん。泣き出しちゃった!?どうしたの!?
「…毒島さん、私…。私ね、毒島さんがクラスで孤立してるの気になっていたんだけど、私、その間違った噂を真に受けちゃって…。毒島さんの力になってあげることが出来なくて…本当に、本当にごめんなさいっ…!」
「福田さん…。泣かないで。福田さんが謝ることなんてないよ…。それに、福田さん私に毎朝、あいさつしてくれたよね?あれ、すごくうれしかったんだ…。今日もわざわざ学校さぼってまで私に会いに来てくれて、本当にありがとう…。」
「私、帰ったらクラスのみんなに話すね…。『毒リンゴの噂』は全部、嘘だって!毒島さんの悪い噂言ってる子がいたら絶対やめさせるね…!約束するよ!」
「ワイも、噂流してる阿呆見つけたら…ただじゃおかへん!このワイをこれだけ苦しませて、土下座までさせたんやからな…半殺しにしたるわ…!」
「胡桃君、そこまでしなくていいよ…。でも、胡桃君なんで私に呪われたと思ったの?まさか、本当に何か悪いことでも起こったの…?」
そうや、ワイのあの症状はなんやったんや?毒島のことが忘れられんで苦しくてしかたなくて…。呪いやなかったら…いったい…?
「ああー!それは、胡桃君の勘違いだったんじゃないのかな?毒島さんに呪われてるって思いこんじゃったから、ほら、病は気からって言うし…。そういえば、毒島さん、制服うちの学校のままだね?」
「この学園、制服がオーダーメイドだから、できるまでに2週間くらいかかるんだって。だからそれまで前の学校のままなんだ。」
「へぇー。すごーい!新しい制服来たら着てるとこ写メ送って見せて!」
「う、うん。」
「えへへ。やったあ!約束だよ。胡桃君にも写メあげようか?」
「はぁ!?い、いらんわそんなもん!(毒島の新しい制服姿ってどんなんやろ…。ってワイ何想像してんのや!)」
「あのさ、福田さん。その…。下の名前で呼んでもいい…?」
「うん!いいよ。学校は違うけど、これからもよろしくね、リンゴちゃん!」
「こちらこそ、よろしくね…千恵莉ちゃん。…胡桃君も、下の名前で呼んでいい…?」
「な!?べ、別にかまわんけど…。」
「千恵莉ちゃんをここまで連れてきてくれてありがとう、城太郎君。」
「!?(なんでワイ、下の名前呼ばれただけでこんなに動悸が速くなってるんや!落ち着けワイ!)」
「良かったね。城太郎君!」
「な!?なんで、福田まで便乗してんのや!」
「あー!私の名前は千恵莉だよ!ち・え・り!ほら、リンゴちゃんの名前も呼んであげなよー。」
「…リンゴ。」
「何?城太郎君?」
「呼んでみただけや…!」