藤林ももと美術室4
入学式が終わり、教室でホームルームが始まった。賀東先生が学校生活のもろもろについて説明をしているんだけど、誰一人、しゃべらず、先生の美声に耳をかたむけていた!静まり返る教室。
「あれれ?みんなやけに静かだけど…いや、ちゃんと話を聞いてくれてるのはうれしいんだけど…緊張しているのかな?何かわからないこととかあったら何でも質問してください。」
賀東先生の何気ないこの一言で、教室中から先生への質問が飛んできた!
「はい!先生はおいくつですか?」「彼女はいますか?」「何で瞳の色が紫色なんですか?」「好きなタイプの女性は?」「長い髪ですね!お手入れ大変じゃないですか?」「先生は受けと攻めどっちですか?」
やまない質問の嵐!
「あ、あの…。質問は、まず学校生活に関することでお願いします…。あははは…。」
ホームルームが終わると、先生はたくさんの生徒(学園中の)に囲まれ質問攻めにあっていた。
賀東紫苑先生は、24歳独身彼女なし(やったぁ!)。某有名美大(エンブレム騒ぎの人の母校ではない)の大学院卒で専攻は日本画。フランス人と日本人のハーフで、フランス生まれだけど、日本画を勉強するために日本の美大を選んだんだって!
1日にして賀東先生は学園中の生徒の心を奪取してしまったのです!…でも、このころの私にとって賀東先生はすごく遠い存在で…私は、ちっぽけな平凡な一人の生徒でしかなくて…。どうしたら、もっと先生に近づけるんだろう…。そんなことばっかり考えていた…。
そして、私は先生との唯一の接点である美術部に入部したのです!賀東先生効果で美術部の入部希望者は、とんでもない数になってしまって、学園側は仕方なく人数を絞るために、入学前にいくつかの美術に関するコンクールなどで既定の個数の賞をとっていることを入部の条件にしたの。そしたらぐぅーんと減ったね。私はもちろん、入部の条件を満たすことができたの!最終的な部員数は現在、高等部4人、中等部5人(私を含めて)の計9名になったの。
初めて賀東先生に私の描いた絵を見てもらった時のことは、私は…いまでも忘れられない。あの時、私は賀東先生に本当に…心奪われてしまったのです…!