毒島リンゴの過去1
10年前。リンゴは、まだ4歳でした。幼稚園に入園してまもないころ、さっそく人生で初めて名前をからかわれ泣かされてばかりいたころでした。幼稚園で名前をからかわれてもリンゴは決して両親にそのことを言いませんでした。いいえ、言えなかったのです。リンゴは、両親が大好きだったのです。だから、「どうしてこの名前を付けたのか」聞くことができなかったのです。
ある日、リンゴの家族が住んでいたマンションが謎の爆発事故により倒壊しました。幸か不幸かリンゴは外で遊んでいたため難を逃れましたが、その事故で両親を失いました。
リンゴは叔母(父の妹)に引き取られることになりました。名前は小学校にあがってもずっとからかわれ続けました。リンゴは、自分の名前が「毒島リンゴ」が嫌いにななりました。でも、この名前を本当に心の底から嫌いになることはできませんでした。あの忌まわしい事故により、リンゴの住んでいたマンションは倒壊し、リンゴのものも家族のものも、思い出も何もかも跡形もなく消えてしまったのです。リンゴが両親からもらったものはこの名前以外何も残されていないのです。