毒リンゴの噂
苺鈴です。
ここからは、またリンゴちゃんの語り手に戻ります。
読んでくれている方本当にありがとうございます!
生徒指導室から出る勇気がない…。もし、私に親しい友達がいたらこんな時に迎えに来てくれるのかな。
でも、私に友達はいない。
『毒リンゴ』の噂は入学した当時からあった。みんな私を恐怖と興味の目でみてきた。噂は時を越え、尾ひれを生やし浸透していった。入学当初はこの目にさらされることがなにより辛かったけど、慣れれば平気だった。そういえば、ある時、こんな噂が流れた。
「毒リンゴの噂話をすると呪われる。」この噂がでまわってから、毒リンゴの話をする人はいなくなった。
でも、今度は
「毒リンゴの噂話をした日の夜、枕元にリンゴをお供えする(さっちゃんかっ!)と呪われずにすむ」という噂がでまわると、また噂話が広まった。いったい誰が考えてるんだか…。
噂の流行り廃りは激しいらしく、毒リンゴの噂も最近はほとんど聞かなかった。みんな、野球部のキャプテンがマネージャーと幼馴染に二股かけてたとか、2年のある先輩が有名雑誌のモデルにスカウトされたとか、みんなの関心はすぐに別のものに移って行った。
それが、この朝の一件でまた学校中に広まってしまった。
まぁ、とにかく、この部屋からでなければ何も始まらないか…。胡桃君にも謝らなきゃだよね…。煽ってきたのは向こうだけど、殴ったのは私だし…。お見舞い行ったほうがいいのかな…?取り巻き君達にお礼参り?とかされたらどうしよう…。怖い…。あ、でも毒リンゴの噂を知ってたから私には手を挙げないかな…。
「両親の事故死は毒リンゴの呪い」誰がこんなひどい噂を流したんだろう…。ガチャ谷君かな…?私のこと恨んでそうだし…。こんな噂聞きたくなかった。私は確かに自分の名前が嫌いだったけど、両親を恨んだことは一度だってなかった…。本当にひどい…。
ガラガラと生徒指導室の扉が開いた。