セカイと姫果2
「城太郎。私は、セカイと二人だけでお話ししたいことがあるの。悪いけど、席を外してもらってもいいかしら?」
「ワイがいちゃまずい話なんか?」
「ええ、そうよ!早く、出てって頂戴!!」
姫果ちゃんは、思いつめたような顔をしている…。
「城太郎君、僕からもお願いするよ。姫果ちゃんと二人きりで話したいんだ。」
「…セカイがそう言うなら。姫果、セカイのこといじめんなよ!!」
「いじめないわよ!」
「15分したら、戻ってくるから。それまでに、話終われよ!」
「戻って来なくていいわよ!」
「ごめんね、城太郎君。」
「セカイが謝ることやないやろ。じゃあな。」
城太郎君が病室から出て行った。
「姫果ちゃん。僕に話って何?」
「セカイ…。私のお父様、明日、別の病院に転院することになったの…。今度は東京の病院なの。だから、この病院に来れるのは今日が最後なの…。」
「そうなんだ…。さみしくなるね。」
「セカイ…。私、セカイのことが好きよ!」
「僕も姫果ちゃんのことが好きだよ。」
「私の好きは、友達としての好きじゃなくて…!」
姫果ちゃんの顔が赤くなる…。姫果ちゃん、もしかして僕のことを…!
「セカイ、私と結婚を前提にお付き合いしてください…!!」
け、結婚…!?姫果ちゃんの緑色の瞳が、僕を真っ直ぐに見つめる。
「姫果ちゃん、ありがとう。こんな僕のことを好きになってくれて…。すごく嬉しんだけど…。」
「だけど…?」
「僕には、ずっと好きな人がいるんだ。だから…姫果ちゃんと付き合うことはできないよ…。本当にごめんね…。」
姫果ちゃんの表情が暗くなる…。
「…それじゃあ私、今日のところは引き下がるけど。私、諦めないからね…。」
「姫果ちゃん…。」
「次にセカイに会う時はその子よりも素敵な女の子になって…絶対、セカイに私のことを好きになってもらうからね!!」
姫果ちゃんは、元の明るいはつらつとした顔に戻り、僕に微笑んだ。
「うん。でも、僕はあの子のことが大好きだから…。」
「いいえ、絶対、私がセカイを振り向かせて見せるわ!だから、セカイ。それまでに元気になってね!」
「うん!」
「セカイの好きな子ってどんな子なの?」
「とっても、可愛い子だよ…。リンゴちゃんは、僕の初恋なんだ…!」
「リンゴ…?」
「うん。その女の子の名前はリンゴ!」
セカイの好きな子は…リンゴ。私の…大嫌いな、私から…大切なものを奪った…リンゴ!
「姫果ちゃん?…どうかしたの?顔色が悪いけど…。」
「…大丈夫よ。セカイ、また会う日まで…ごきげんよう。」
「姫果ちゃん。今までありがとう。またね!」
私は、セカイの病室から出ると、急いで走り出した…!
廊下の途中で、誰かにぶつかりそうになる…!
「おい、姫果。廊下走ったら危ないやろ!!セカイとは話終わったんか?」
城太郎…。
「姫果?…なんで、お前、また泣いとるん?セカイと何かあったんか?」
「…何でもないわ。ごきげんよう、城太郎。」
私は、城太郎と別れてまた走り出す…!
リンゴなんて、大嫌いよ…!!
私から、お父様だけでなく…今度は、セカイまで…!!
私の…初恋まで、奪おうとするの…!?