プールにて
―星屑学園、屋内プール―
「琳華先輩、だいぶ泳げるようになりましたね。」
「唯君の教え方が上手だからよ。」
私、琳華は、夏休み中も学園に残って、唯君の指導のもと絶賛水泳練習中です!
「唯君、午前中は、部活の練習で疲れてるのに…午後は、私の練習に付き合ってもらってしまって…本当にごめんね。」
「別にいいですよ…。」
唯君て…無愛想で不器用だけど、優しいところがなんだか、琳吾に似ている…。
「ねえ。唯君は、ももちゃんのどこが好きなの?」
「な…!!」
唯君の顔が真っ赤になる。可愛い!
「ねえ…教えてよ?」
「ももの好きなところは…。」
「何?」
「それは…。」
「こんにちは、二人とも。今日も水泳練習ですか?」
プールサイドにやってきたのは、賀東先生。用務員さんの代わりに、プールの点検をしに来たのね。
「はい。先生、私25m泳げるようになったんですよ!」
「すごいですね!」
「これも全部、唯君のおかげです。」
「そういえば、唯君、顔が赤いけど…どうかしたの?」
ああ、さっき私がももちゃんについて聞いたからです。
「唯君に好きな女の子のことを聞いていたんです!」
「…ちょっと、琳華先輩!」
「へえ…。唯君は、誰が好きなんですか?」
賀東先生、唯君がももちゃんのこと好きなの知らないのね…。
「先生まで…。ちょっと、やめてくださいよ!」
「賀東先生、唯君が好きな子は、先生のクラスの子ですよ。」
「琳華先輩…!!」
「僕のクラスの子?…誰だろう?」
「賀東先生。更衣室の掃除終わりました。こんにちは、琳華先輩、唯君。今日も水泳練習ですか?」
「ありがとう、リンゴさん。」
プールサイドにリンゴが来た。夏休み中、賀東先生のお手伝いをしてるのよね。
「リンゴ、私25m泳げるようになったのよ!」
「琳華先輩、おめでとうございます!!」
「ありがとう。リンゴもお疲れ様。」
「唯君、教えるの上手なんだね!」
「いや、俺は別に…。」
「それじゃあ、私は今度はトイレの掃除してきます!」
「はい。よろしくお願いします。リンゴさん、君が手伝ってくれて本当に助かります。」
「いいえ!賀東先生のお役に立てて嬉しいです。」
リンゴは、元気に駆け出して行った。リンゴは、本当に賀東先生のことが好きなのね…。
「ああ!もしかして、唯君が好きな子って、リンゴさんですか?」
賀東先生…。どうして…そうなるんですか…。
「違います!!」
全力で否定する唯君。
「うーん。じゃあ、誰ですか?」
「唯君が好きな子は賀東先生のこと大好きですよ。」
「…もしかして、ももさん?」
再び、顔が真っ赤になる唯君。
「正解です!」
「そうだったんですか…。確かに、唯君とももさんは、小学校が一緒でしたよね。そうか、唯君は、ももさんのことが…。」
「賀東先生は、恋のライバルだね、唯君!」
「…琳華先輩。」
「あはは。唯君、安心してください。ももさんは、僕の大事な教え子だけど、恋愛関係に発展はしませんよ。」
先生が生徒に手を出したら、犯罪になっちゃうものね…。
「先生がそうでも、ももは…。」
落ち込む唯君…。ももちゃん、賀東先生にぞっこんだからね…。
「そういえば、賀東先生は好きな人いるんですか?」
「な…!?」
顔が真っ赤になる賀東先生…!!可愛い…!!
「いるんですね?」
「いませんよ…!!」
「賀東先生、俺の好きな人を教えたんだから、教えてくださいよ!」
「私も賀東先生の好きな人、知りたいです!」
「だから、いませんよ…!!」
「先生、顔赤いですよ?ねえ、唯君。」
「…もしかして、この学園にいるとか?」
先生の顔がギクリとする!
「ちょっと、二人とも!…本当にいませんよ!!」
「先生、怪しいです。先生かな?それとも…まさか生徒に!?」
「…そんなに、知りたいなら教えますが。それなら、琳華さんも好きな人を教えてください!」
「えええ…!?私ですか…。私は…誰が好きなんでしょうか?」
「いや、先輩。俺たちに聞かれても…。」
「私は、兄の琳吾のことがずっと好きだったので…。琳吾より好きな男の子なんて…考えたこともなかったです…。」
「先輩…どんだけお兄さんのこと好きなんですか?」
「じゃあ、僕は他の仕事があるので、これで失礼します。」
「ああ!先生、逃げる気ですね!!」
賀東先生は、逃げ去って行ってしまった…。賀東先生が好きな人って誰だろう?




