病院にて
―胡桃総合病院、セカイの部屋―
「…そういうわけで、リンゴちゃんが僕の初恋なんだ。」
セカイの初恋の相手がリンゴ…。
「ねぇ、城太郎君の初恋は?…城太郎君?」
「セカイ…ワイが絶対、お前を治してやるからな!!」
「うん…ありがとう?…それで、城太郎君は?」
「せやから、お前が元気になったら教えたる!…お子様のセカイには、ワイの初恋は刺激が強すぎる!」
「僕を子ども扱いしないでよ!城太郎君と同い年だよ!!…僕だけ話して、城太郎君が話さないなんて不公平だよ!」
言えるわけないやろ…。ワイが好きなんは…お前と同じリンゴやって!!
「…ワイそろそろ帰るわ。」
「逃げる気だね…ずるいぞ、城太郎!」
「だから、セカイが元気になったら…いつでも教えたるよ!」
「…わかったよ。城太郎君、今日も来てくれてありがとう…。」
「じゃあ、また明日な!」
「うん、また明日!」
セカイの部屋を出たワイは、なんや、もやもやした思いを抱えながら速足で廊下を歩く…。セカイの好きな子がリンゴやなんて…。世界は、狭いな…。
ワイが角を曲がろうとした時、反対側から歩いてきた人にぶつかった…!?
「きゃあ!…ちょっと、あなた!どこを見て歩いていたの?」
ぶつかったのは、女の子や…。
「ああ、悪かった…。ちょっと、考え事しとったんや…。すまん…。」
ぶつかった女の子は、ピンクっぽい金髪の長い髪をサイドに三つ編みにした髪型で、緑色の瞳をした…お人形みたいにえらい可愛い顔した子で…。上品な、フリルやリボンが付いた半そでのピンク色のワンピースを着ていて…。
「気を付けてください!ああ…せっかくのお花が台無しよ…!」
女の子は花束を抱えていたらしく、ワイとぶつかって花束が潰れてしもうた…。
「ほんま、すまんかった!」
「私の大切な方のためにお花だったのに…。」
女の子の緑色の瞳に暗い影が帯びる…。
「城太郎君ー。ああ、良かった。まだ、いたんだね!」
セカイがやって来た!?
「どうしたんや?」
「城太郎君、カバン忘れてるよ!」
「おお!すまん、わざわざ届けに来てくれたんか?」
リンゴの件で頭が混乱してたからな…。
「それより…。何かあったの?」
「ああ、ワイがその女の子にぶつかって、その子の花束が潰れてもうたんや…。」
「もう、いいです!…次からは、気を付けてください…!」
女の子は、悲しそうな瞳のまま立ち去ろうとした。
「待ってください。良かったら、僕の部屋にあるお花をあげましょうか?」
「え?」
「セカイ、ええんか?」
「うん。今日の午前中に僕のお父さんが、お見舞いに来てくれた時に持ってきてくれたものだからまだ、新しいから…。それで良ければどうぞ!」
「でも、それでは、あなたのお部屋のお花がなくなってしまうわ。それに、あなたのお父様から頂いたものでしょう?」
「僕は、お花に興味はないですし。お父さんも誰かのためになるなら喜ぶと思います。」
「それなら…お言葉に甘えさせていただくわ…。」
「じゃあ、今持ってきますね!」
「セカイ、恩に着るわ!」
「あの…あなた、お名前は?」
「僕は、烏丸セカイです。この子は僕の友達の胡桃城太郎君。あなたは?」
「私は、白雪姫果よ。ありがとうセカイ。」
「いいえ。お役に立てて良かったです。」
「白雪姫果…。続けて読むと…白雪姫か!」
「ちょっと、城太郎!私の名前で遊ばないでくださる!元を正せば、あなたが前を見てなかったから…私の花束が!」
「だから、それはもう謝ったやろ?…全く、しつこい女やな!!」
「…何ですって?」
「二人とも、喧嘩しないでよ…。」




