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セカイ防衛少女毒リンゴ  作者: 苺鈴
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城太郎と病院

―大阪府、胡桃総合病院―

「あら、城ちゃん!大きくなって…。まさか、えらい良い男になったやん!!」

「高橋のおばちゃん、その呼び方やめれ!ワイは、城太郎や!!」

 うちの病院の看護婦長の高橋のおばちゃんは、体格のいい元気なおばちゃんで、ワイのことを小さい頃から「城ちゃん」て呼ぶんや…。なんか女の子みたいな呼ばれ方で…小さい頃から嫌やったんや。

「城ちゃんは、城ちゃんやん!それにしても、良くこの病院を継ぐ気になったねぇ!偉い、偉い。」

「ワイの姉貴のためや!」

「城ちゃんなら、良いお医者さんになれるで。なんたって医院長さんの子なんやから!今日も、学校の帰りに病院の見学に来よるなんて、ほんま立派や!!」

 高橋のおばちゃんがワイの背中をバシっバシっ叩く!!…痛い!!力加減せえや!!

「それで、ワイに会わせたい患者さんって誰や?」

「先月、入院してきた子なんやけど。その子は、生まれつき体が弱くてね…学校にもほとんど行けんで…友達できへんかったみたいなんや。それで、ちょうど城ちゃんと同い年なんやって。だから、話し相手になってあげてほしいんや…。それが、またえらい綺麗な子でね!!」

「なんや、女の子か?」

「いや、男の子なんやけど…ああ、この部屋や!…セカイ君、入りますよ。」

 セカイ…?高橋のおばちゃんに続いて、病室に入る。1人部屋やけど…結構広いな…。

「こんにちは、婦長さん。…その子は?」

 ベットから上半身だけ起こしてこちらを見つめるのは…真っ白…いや銀色の髪で…髪だけやなくて、眉毛もまつ毛も同じ色で…瞳は真っ赤で…肌も血の気がなくて真っ白で…。女の子みたいに綺麗な顔した…!

「ああ、紹介するね。この子は、我が病院の未来の医院長、胡桃城太郎君や!!」

「胡桃城太郎や…。よろしく。」

「僕は、烏丸セカイです。こちらこそよろしくね、胡桃君。」 

「城太郎でええよ。」

「それじゃ、私は他の仕事があるからこれで。…城ちゃん、セカイ君のこといじめちゃあかんよ!!」

「わかっとるわ!!」

 高橋のおばちゃんが部屋から出て行った。


 何話したらええんやろ…?

「城太郎君、動物好き?」

「え?…ああ。別に嫌いやないけど?」

 セカイは、ベットから起き上がると、部屋の隅にあるテーブルの上に置かれた大きな水槽の前に行き。ワイを手招きする。何か飼っとるのか…。ワイも水槽の所へ行く。

「城太郎君に僕の友達を紹介するね。」

 水槽の中には、手のひらより大きいくらいの大きさの亀が3匹いた…。亀ってまた渋いな…。

「この子がレオナルドで、こっちの子がラファエロで、そのすみっこにいるのがミケランジェロだよ。」

 全部同じやつに見えるんやけど…。そして、お前のネーミングセンス!亀だからって…。

「ドナテロは、いないんやな…。」

「ああ、ドナテロは…2年前に死んじゃったんだ…。」

 ワイ、病人に一番やってはいけない話題へ導いてもうた…!!医者失格やん!!

「そうか…。すまん…。」

「別に気にしないで…。ドナテロだけじゃないんだ…。今までいろんな動物を飼ってきたから…。」

 セカイの赤い瞳は、とても悲しそうで…。

「なあ、セカイ。元気になったら、一緒に亀買いに行かへん?やっぱり、ター●ルズは4匹いないとしまらんやろ!」

「…ありがとう城太郎君。でも…僕は、もう元気にならないから。」

「なんでや?」

「僕は…もうすぐ死ぬから…。僕の病気は、治らないんだ…。だから…もう、諦めてるんだ。」

 何言っとんのや…お前…。

「そうだ、城太郎君。僕が死んじゃったら、この子達みんな城太郎君にあげるね!…それだけが、気がかりだったんだ。あとは、もう僕には思い残すこともないし。僕は、死ぬのなんて怖くない…城太郎君!?」

 ワイは、両手でセカイのパジャマの襟元をつかんでいた!

「セカイ…!お前、それは嘘や…。お前の目は、嘘ついとる目や!!お前の本当の気持ちを言えっ!!」

「僕は…死ぬのなんて…怖くないよ…!もう、いいんだよ…。僕は、この『セカイ』に未練なんてひとつもないんだよっ!!」

「…嘘や!お前は、嘘ついとる!!…はっきり言えや!!」

「だって…誰も…僕を治せないんだ…。このまま生きていたって…いろんな人に迷惑かけるだけで…!それに…この前ね…ずっと好きだった子に会えたんだ。その子は、僕のこと忘れてしまっていたけど…。その子の顔をもう一度見ることができて…声が聞けて…僕…嬉しくて…。だから、もういつ死んだってかまわないんだ!!」

「この大馬鹿野郎っ!!」

 ワイは、右手の拳を握りしめてセカイに…。



 城太郎君に殴られると思って、とっさに目を閉じた僕。でも、拳は僕に当たらなかった…。そして、城太郎君が僕を抱きしめていた…!?

「城太郎君…?」

「セカイ…。ワイ、お前が死んだら、あの亀全員、シュレッダーにかけたるわ…!!」

「ええええ!?なんでそんなことするんだよ…!!」

「それが、いやだったら絶対に死ぬなっ!!ワイが、医者になって…お前を治療できるようになるまで、絶対に死ぬなや!!」

 城太郎君が、体を離して、僕の肩をつかんで、僕の目を見つめながら叫んだ…!

「…そんなの…無理だよ!」

「無理やない!!…病は、気からや!!そんな、アホみたいに死ぬ死ぬ思っとったら、治るもんも治らなくなってしまうわ!!…セカイ、頼む…本当の気持ちを言ってくれや…。死ぬのが平気なやつなんて一人もおらんわ…!」

 城太郎君は…泣いていた…。僕の目からも…知らないうちに…涙があふれていた…。

「僕は…本当は…。」

 死にたくない…。まだ、リンゴちゃんに…思いを伝えてない…。リンゴちゃんが僕のことを忘れてしまったまま死んでしまうなんて…絶対にいやだ!!僕は…死にたくない…!!

「僕は…生きたい。生きていたい…!」

「それが、セカイの本心やな…!」

「城太郎君…。ごめんね…。僕、本当は死にたくない…!あの子に気持ちを伝えるまでは…!」

「よし!ワイが医者になって、絶対セカイを治したる!!…だからセカイ、絶対死ぬなよ!!ワイが絶対セカイを元気にしたるから、お前のことを忘れたその馬鹿女に気持ちをぶつけてやれっ!!」

「…うん!ありがとう…城太郎君…!」

「ほら、もう泣くなや!…こんなとこ高橋のおばちゃんに見られたら、ワイがお前をいじめたと勘違いしてまうやろ!」

「…城太郎君だって…泣いてるじゃないか。」

「泣いてへん!…目にゴミが入っただけや!」


 




 

 

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