千恵莉とデート
期末テストも終わり、夏休み間近の7月のとある日。
「おはよう、千恵莉!今日の放課後、空いてるか?」
玄関で、いきなり城太郎君に声をかけられた私!テスト前は、放課後よく一緒に図書館で勉強してたけど…テスト終わってからは、一緒に勉強しなくなったし…。
「おはよう。どうしたの?テストは、もう終わったけど…まだ勉強で教えてもらいたいところがあるの?」
「ちゃうわ!千恵莉に中間も期末も勉強教えてくれたお礼がしたいんや!今日の放課後、遊ぼう!」
「え?…私と…城太郎君と…二人で?」
「そうや!」
それって…。で、ででででデート…!?
「なんや、今日、用事あるんか?」
「ううん!大丈夫だよ!!超暇だから!!」
「そうか、良かった。じゃあ、放課後、玄関で待っとるから!」
「うん…!」
城太郎君とデート…!!福田千恵莉…人生初のデート!!
「おはよう、ちえりん!…ちえりん?」
「え?ああ、おはよう美鈴ちゃん!!」
「ちえりん、顔赤いけど…。胡桃君と何かあったの?」
「ちちち、違うよ!!」
「わかりやすいなあ…。まあ、いいや。それより、駅前に新しいドーナツ屋さんできたじゃん!今日の帰りに麻衣と3人で一緒に寄って行かない?」
「ごめん!!今日の放課後はダメ、ゼッタイ!!」
「そうなんだ…。放課後なんか用事あるの?」
「うん…。本当にごめんね!」
「いいよ!じゃあ、また日を改めて行こう。それに、オープンしたばっかりで混んでるもんね!」
「ありがとう。」
「それで、胡桃君とは何があったの?」
「もう!本当に何でもないよ…!」
「放課後の用事って…もしかして胡桃君と関係あるの?」
「…違うってば!…美鈴ちゃん2限の英語、今日当てられるんじゃない?ちゃんと和訳してきたの?」
「あー!忘れてた…。ちえりん…いえ、千恵莉様ノート写させて…!!」
「…ノート写させてあげるから、もうこのことは聞かないで!!」
「はい!千恵莉様!!」
そして、放課後。…城太郎君とデート!私は、急いで教室を出ようとしたんだけど…。
「どうしよう…。困ったな…。」
クラスメイトの西君、何か困っているみたい…。クラス委員長として見過ごせないね…!
「西君、どうかしたの?」
「委員長。悪いんだけど…図書委員の当番、やってくれない?」
「ええー!どうして?」
「それが、俺の弟が熱出しちゃって…うち、共働きだから俺が保育園に迎えに行かなくちゃいけないんだ。でも、今日は図書室の本の入れ替え作業があって、もう一人の当番のやつ、忘れて帰っちゃって…。」
「そうなんだ…。」
「…頼むよ、委員長!!」
「…うん。わかった。私が代わりに当番やるね!だから、早く弟君を迎えに行ってあげて。」
「ありがとう!!委員長。」
あああー最悪…。何で…今日に限って…!!城太朗君とのデート…。初めてのデート…だったのに!
私は、城太郎君に今日、行けないことを告げに玄関へ向かった…。
「おう!千恵莉、遅かったな?」
「…ごめん!城太郎君。クラスの子に代わって図書委員の当番することになったから…今日、遊べないんだ。折角、誘ってくれたのに…本当にごめんね!この埋め合わせはまた別の日に…。」
「そうか…。じゃあ、ワイも当番手伝う!」
「ええ!?そんな…悪いよ!」
「今日、本の入れ替え日やろ。1人じゃ大変や。」
―図書室―
「城太郎君…本当にごめんね!」
「だから…気にすんなって!」
「この埋め合わせは、必ずするから…。」
「千恵莉…。ワイ…転校するんや。だから、この学校来るの今日が最後なんや…。」
「え…!?」
「…ワイ、実家の病院継ぐって、親に話したら…向こうの私立の学校に転校することになったんや。千恵莉が勉強教えてくれたおかげで、成績も上がったし!」
「…そうなんだ。なんで…もっと早く教えてくれなかったの?」
「急なことやったから…。それに、変な気使われるの嫌やから…。」
「あのさ…城太郎君…!私…。」
「何や?」
「…ううん。あのさ、城太郎君…いつリンゴちゃんへの思いに気づいたの?」
わあ…城太郎君…顔真っ赤!
「…わからん。でも…ワイは、リンゴが好きや!初めて会った時から…アイツのことが…!せやから、ワイが医者になったら…夢を叶えたら…リンゴに告白するんや…!!」
えええ!?…何かの漫画みたいだね!…城太郎君、純情すぎ!!
「夢を叶えるまで、本当にリンゴちゃんに告白しないの…?」
「ああ!…いくら成績上がったっていうても、ワイの今の成績じゃ…医者になるなんて不可能や…。だから、今は勉強に専念したいんや!…色恋に夢中になってる暇は、ないんや!!」
「城太郎君…。」
「だから…絶対、リンゴにはワイが好きってこと言うなよ!!」
「うん!約束するよ。…それじゃあ、私も夢が叶ったら…学校の先生になれたら、好きな人に告白するね!」
「何で、ワイの真似するんや!?そういや、千恵莉の好きな奴って誰や?」
「私の好きな人は……内緒だよ!」
「はあ!?教えろや!!」
それは、あなたです!
「やだ!…あ、そうだ!城太郎君。早く本の入れ替え終わらせて、帰りに駅前に新しく出来たドーナツ屋さん寄ってこう!城太郎君の送別会も兼ねて!」
「話をそらすなや!」
「今日のお礼に私がおごるから!」
「ワイがお前にお礼したくて誘ったのに…。」
「ほら、早く終わらせちゃおう!!」
私は…やると決めたら後先考えす突っ走っちゃって…ちょっと乱暴で馬鹿で、不器用だけど、優しくて…リンゴちゃんのことが大好きで…可愛いくらいに純情で…そんな、城太郎君のことが大好きです!!




