リンゴの風邪2
―都内某総合病院―
「うわあ…。混んでますね…。」
「そうですね。じゃあ、僕が受付をしてくるので、リンゴさんは座って待っていてください。」
「はい。お願いします。」
私は、ロビーの椅子に座った…。やっぱり熱は下がらないみたいで…だるい…。
あれ、私の斜め前に座ってる子…。赤襟のセーラー服着てる…って私のと同じだ!まあ、この病院、前の学校の近所だから…生徒がいても当たり前か…。お昼過ぎに学園を出て、今はもう夕方だから、学校は終わってる時間だし…。
後ろ姿だけしか見えないけど、私と同い年くらいで…黒髪の二つ結びで…。どこかで見たことある…もしかして…この子って!…その時、その女の子が何気なく私の方を振り返る…!
「…リンゴちゃん!?どうしてここに?」
「千恵莉ちゃん!久しぶり…!」
「本当に久しぶりだね!リンゴちゃん、顔色悪いよ。どこか具合悪いの?ああ、病院にいるから…そうだよね。」
千恵莉ちゃんが私の隣に座る。
「ちょっと…風邪引いちゃったみたいで…。千恵莉ちゃん、ごめんね!…明日、会いに行けないかもしれない…!」
「いいよ、気にしないで!そんな具合悪いのに無理することないよ。それに…私達もう会えたしね!」
「そういえば、そうだね!…千恵莉ちゃんもどこか具合悪いの?」
「ううん。私は、おばあちゃんの薬もらいに来たの。私のおばあちゃん隣町に住んでるの。足が悪くて病院まで来られないから、私が薬をもらいに病院に来て、土日におばあちゃん家に届けに行くの。」
「へえ…。千恵莉ちゃん、偉いね…。」
「そんなことないよ…。リンゴちゃんは、どうやってここまで来たの?」
「学校の担任の先生に連れてきてもらったんだ。」
「そうなんだ。」
あ、賀東先生が戻ってきた。
「リンゴさん、今日は混んでるみたいで…診てもらえるまであと30分くらいかかるそうです。」
「そうですか…。仕方ないですよね…。」
「りりりり、リンゴちゃん!!…この超絶美形イケメンさんは…誰!?」
「ああ、紹介するね。この人が私の担任の賀東紫苑先生。先生、この子が私の前の学校の友達の福田千恵莉さんです。」
「は、はじめまして!福田千恵莉です…。」
「はじめまして、賀東紫苑です。よろしくね、千恵莉さん。」
あらら…。千恵莉ちゃんが悶絶している…!さすが…賀東先生!
「千恵莉さんが、リンゴさんが明日、会う約束をしいていた方ですか?」
千恵莉ちゃん、放心状態だ…。
「はい。でも、今日ここで会えるなんて思わなかったです…!」
「良かったですね。じゃあ、僕はちょっと学園に電話してきますね。門限までに帰れそうにないですから。千恵莉さん、僕が外に出てる間、リンゴさんのことをお願いしてもいいですか?」
「は…はい!リンゴちゃんは、2年1組クラス委員長の福田千恵莉にお任せください!!」
「ありがとうございます。」
「リンゴちゃん、賀東先生、超かっこいいね!!しかも、若いし!!」
「私も、初めて会った時はびっくりしたよ!」
「いいなー。あんなかっこいい人が担任の先生なんて…!」
「私の友達に賀東先生にぞっこんな子がいてね。」
私は、熱があることも忘れて、千恵莉ちゃんといろいろな話をした。
「あのさ…リンゴちゃん。話題が変わるんだけど…変なこと…聞いてもいい?」
「何?」
「リンゴちゃんは…城太郎君のこと…どう思ってる?」
「城太郎君…?別に…ただの友達だけど…。城太郎君がどうしたの?」
「私ね…。城太郎君のことが…好きなの!!」
「ええええー!?…千恵莉ちゃんが、城太郎君のことが好きなんて…なんか意外だね!」
「でもね…。城太郎君が好きなのは…。」
「城太郎君が好きなのは?」
「リンゴさん、お待たせしました。そろそろ、診察時間になるので、内科の待合室に移動しましょう。」
賀東先生…。なんというタイミングで…!!
「…はい。それじゃあ、千恵莉ちゃん。明日の約束…ちょっと無理かもしれない…。本当にごめんね!」
「ううん!また、会えるよ。夏休みだって近いし…。それに、今日会えたし!」
「私も、ここで千恵莉ちゃんに会えるなんて思わなかったよ!今日は、ありがとう。」
「私もリンゴちゃんに会えて良かった!」
「千恵莉さん、リンゴさんに付き添ってくれてありがとうございます。」
「いいえ!それじゃ私はこれで!リンゴちゃん、お大事にね。」
城太郎君が好きな子っていったい誰なんだろう…?
診察を終えて、駐車場へと向かう私と賀東先生。ただの風邪だったみたい…。
「リンゴさん、千恵莉さんに会えて良かったですね。」
「はい!これで、明日も安心して風邪ひいていられます!」
「あはは。さあ、帰りましょう。」
「ああ!賀東先生、初恋のこと教えてくださいね!」
「…覚えてたんですか。」
「はい!」
「そういえば、リンゴさん。千恵莉さんとは、どんな話をしたんですか?」
「話題を変えて、誤魔化さないでください!」
「仕方ないですね…。車の中で話します。」
「やったー!」
あれ…。急に目まいが…?私の意識が消える…。
「リンゴさん!?」
僕は、突然、気を失ったリンゴさんを抱きとめる。リンゴさんの体が熱い…。まだ熱が高いんだな…。リンゴさんを助手席に乗せる。
眠るリンゴさんの顔をまじまじと見つめる…。似てるな…。あの日、プールで出会った…輝く黄金の髪と瞳をした女の子に。僕の…ファーストキスの相手…。そして…僕の初恋。
私が目を覚ますと…そこは、寮の自室のベットの上で…。ああー!!賀東先生の初恋の話聞きそびれちゃった…!
誰かが…ドアをたたいてる?
「リンゴ、具合どう?」
「もも!鍵開いてるから…入っていいよ。」
ももが私の部屋に飛び込んできた!
「リンゴ、賀東先生とドライブデートしたって本当!?」
「で、でででデートって…!…ただ、病院に連れて行ってもらっただけだよ!!」
「いいなー私も風邪ひきたい!!…リンゴ、私に風邪をうつして!」
「えええー!?そんなことできないよー。」




