千恵莉の憂鬱
6月某日。中間テストの返却が始まった頃。
突然ですが、私、福田千恵莉は…胡桃城太郎君のことが好きです…。え?みなさん、前から気づいていらっしゃったんですか…!?
―昼休み、中庭のベンチ―
「ちえりん、何だか元気ないね…?ああ、中間テスト、出来が良くなかったの?」
「ううん。別に…。」
「優等生の千恵莉が、勉強で悩むことなんてあるわけないじゃん!ね、千恵莉。」
「ううん。別に…。」
「…ちえりん、胡桃君とはどこまで進んだの?」
「…だーかーらぁー!城太郎君とは、何でもないって言ってるでしょ!!」
私は自分でも驚くくらい大きな声で叫んでしまった!
「やっと、まともな返事返してくれたね!…でも千恵莉、今、胡桃君のこと城太郎君って言ったよね…?」
「え!?…わ、私そんなこと言ってないよ!胡桃君って言ったよ!」
「ちえりん…。私も聞いたよ。城太郎君って…。」
「二人の仲はそこまで、進んだの…!?」
「…だから、違うってば!それに…じょ、胡桃君が好きなのは…!」
そう…私が想いをよせる城太郎君が好きな相手は…。
その時、私たちの方へ誰かが来る?
「おー!千恵莉。お前のおかげで、数学85点やった!!」
城太郎君…!なんというタイミングで…!!
「く、胡桃君…。今、千恵莉のこと呼び捨てだったよね…!?」
「何でや?千恵莉は、千恵莉やろ?」
「二人は…下の名前で呼び合うほどに…!!」
「ちちち、違うってば!!…じょ、胡桃君!ちょっと、来て!…ごめんね、二人とも。私、胡桃君とちょっと…話があるから!」
私は、城太郎君の手をつかんで、二人から離れた。
「何やねん?突然…よそよそしくなって…。ワイ、何かお前の気に障るようなことしたか?」
「違うの…城太郎君…。さっきは、私の友達の前だったから…その変な誤解されたらいやだから…。」
「ああ、すまんかった…。そうやな…。ワイみたいな不良と仲が良く見られたらいややな…。」
「ううん、そんなことないよ!城太郎君だって私の大切な…友達だよ!…ただ、あの二人…。私たちが…。その…。」
「何や?」
「…私たちが…付き合ってると思ってるの…!!」
「はあ!?なんでそうなるんや!!ワイと千恵莉は、ただの友達や!それに、ワイが好きなんは…」
ただの友達…。
「リンゴちゃんだよね…。」
顔が赤くなる城太郎君…。わかりやすすぎる…。
「…そうや。」
「やっと、自分の気持ちに気づいたんだね…。」
いや…それは、私も同じだね…。
「城太郎君。私もね、今…好きな人がいるんだ!」
「なんや、お前もか!奇遇やな…。それで、誰なん?」
「それは…。」
それは、あなたです!!…とは、言えないよね。
キーン・コーン・カーン・コーン。予鈴が鳴った。
「ああ、もう昼休み終わりだね…!」
「えええ!千恵莉は、誰が好きなや!?」
「ほら、教室戻らないと、授業に遅れちゃうよ!」
私は、城太郎君が好き。城太郎君が好きなリンゴちゃんは、大切な友達だけど…。私は諦めません…!