琳華と琳吾
私は、夢をみていた…。これは…私と兄さんが10歳の時…あの事故が起こる少し前の出来事…。
「兄さん、その格好どうしたの?」
「ああ、これ父さんが中学生の時に着てた制服。母さんが掃除してたら出てきたんだって。」
それは、青みの強い紺色の学生服…。星屑学園の中等部の制服…。
「へえ。兄さん、かっこいい!」
「あら、琳吾。その制服着てると父さんの子どもの頃にそっくりね!」
「…母さん、俺、この制服の学校に行きたい!」
「琳華もその学校がいい!」
「それがね…。その学校、今閉鎖しちゃったのよ…。」
『えええー!!』
その制服は、兄さんの体には少し大きくて…でも、兄さんがもう少し大きくなったら絶対に似合うと思ったのに…。学園が再開したら絶対、二人でこの学園に入るって…約束したのに…!!
全部…私のせいだ…!!私が…弱いから…。こんな弱い私なんて…琳吾じゃなくて私が…あの時、死んでいれば良かったのに…!!
誰かが…呼んでいる…?
この声は…リンゴちゃん?
「琳吾さん、目を覚ましてください…!その体は、あなたの妹の琳華先輩なんです!琳華先輩のか弱い体でそれ以上戦ったら、琳華先輩が…死んでしまいます!」
私がいくら呼びかけても、琳吾さんの攻撃が弱まることはなくて…!このままじゃ…琳華先輩が…!!
『あなたは…リンゴちゃんなの?』
私の頭の中で、琳華先輩の声がした!?
「琳華先輩!私の声が聞こえるんですか?」
『いったい、何が…どうなってるの?』
「信じてもらえないかもしれないけど…琳華先輩の体には、琳吾さんの魂が宿っているんです!でも、今、琳吾さんの魂は、悪いやつに操られてて…。このまま、戦い続けたら…琳華先輩の命が…!!」
『…よくわからないけど…私の体の中に兄さんの魂がいるの!?』
「はい。どうしてかは…わかりませんが。うわあっ!!」
『リンゴちゃん!?どうしたの!?』
私は、琳吾さんの振り上げられた一撃で、刀を落としてしまった…!!やばい…!!
琳吾さんの刀の刃が私の前に、向かってくる…!!
その時!私に刀の刃が触れる直前で、琳吾さんの動きが止まった…!?
『もう、やめて!琳吾。その子は、私の大切な後輩なの!その子を傷つけないで!!』
私は、私の体の中にいる、琳吾に呼びかけた。
『琳華…。俺は…琳華を守る!琳華を傷つける存在は、誰であろうと俺が斬る…!!』
『琳吾…。ごめんなさい…!私が弱いせいで…あなたをいつも苦しめて…迷惑をかけて…命まで…奪ってしまって…!!私なんか…こんな弱い私なんか…生まれてこなければ良かったのに…。』
『…琳華。俺は、あの時、お前を助けられて本当に良かったと思ってる…!俺は、お前を恨んだことなんて一度だってない…。お前は、弱くなんかない!俺は…ずっとお前のことを見てきた。学年トップの成績なのは、毎日遅くまで勉強しているからだし、学園の生徒全員の顔と名前を暗記して、困っている生徒がいないかいつもみんなに気を配っていて、少しでも体力をつけるために毎週、ここで素振りをしていることも…!琳華…お前は、自分の出来ることを何でも精一杯やって、自分の弱点を克服しようと努力して…お前は、弱い人間なんかじゃない!!』
『琳吾…。』
『だから…。前にも…言ったけど、俺はお前と一緒に生まれてきて本当に良かった。お前と一緒に生きていけないのは…辛いけど…。俺は、琳華が好きだ。』
『琳吾…。私も琳吾のことが好きだよ!』
『ありがとう琳華。琳華…もう、生まれてこなければ良かったなんて言わないか?俺が死んだことで自分を責めずに生きていけるか?』
『…うん。私…もう、生まれてこなければ良かったなんて思わないよ…!自分を責めたりしないよ…。』
『じゃあ…。俺がいなくても、もう大丈夫だな…。』




