胡桃城太郎と病室2
そうや!思い出した。あの女。毒島リンゴに殴られたんやった。
わい、胡桃城太郎は、小さいころから喧嘩っぱやかった。自分でもようわからんが何かにつけて他人につっかかった。怒った時ってそいつの本心が見えるきして。相手を煽って怒らせて本心を出そうとしてしまう。
小さい時、両親の仕事仲間の会合やらパーティやらよくつれだされた。お品の良い、いわゆる上流階級?なやつらがぎょうさん集まったやつ。その頃には、わいが勉強もなんもできないダメ息子であることは明らかで
皆、何でもできる良く出来た姉貴をほめたたえておった。
「瑞城さんは本当に成績優秀で、前回の全国模試も上位だったんですってねぇ。」
「陸上の全国大会出場おめでとうございます。本当に良く出来たお嬢さんをお持ちでご両親が羨ましい。」
それでも、社交辞令でわいのこともなにか言わなあかんので
「弟の城太郎君もご両親にそっくりで聡明なお顔だちね。」
「こんな立派なお姉さまの弟さんならきっと将来が楽しみですわね。」
おばはん達は虫も殺さぬ笑顔で言った。
でも、わいは知っとる。こいつらが本心で言っているわけやないことを。会場をでたロビーでこのおばはん達が、話していたのは
「胡桃さん家の城太郎君、お受験失敗なさったそうよ。」
「まぁ、一番レベルが低い私立幼稚園なのに?瑞城さんは名門女子幼稚園卒業よねぇ。」
「お姉さんが良く出来ていても、弟さんはダメだったみたいですわねぇ。」
『おほほほほ。』
みんな本心で思っとることを顔に出さずに淡々と心にも思っとらんことを平気で言うのが怖くてたまらんかった。
わいは相手の本心を聞き出すために喧嘩を売るようになった。