青島琳華のセカイ1
「はあ…。絶好のプール日和なのに…。何で私、アレになっちゃったんだろ…!タイミング悪すぎ…。しかも、見学者はプールサイドの掃除とか…だるいよねぇ…。ねえ、琳華?」
「そうね。みんな、気持ちよさそうだね…。でも、私泳げないし…準備運動だけでダウンしちゃうから。」
「ああ、そうだったね…。ごめんね、琳華は、体が弱いから体育はいつも見学なんだよね…。私、無神経なこと言っちゃって、本当にごめん…!」
「いいよ、気にしないで。それに、私、掃除好きなんだ。みんなの泳いでる姿見るのも楽しいし!」
季節は、移り変わり…今は、夏。私、高等部2年の青島琳華は、体育の授業(水泳)で見学中というか、掃除中。でも、今日は一人じゃなくて、同じクラスの美咲ちゃんも一緒。授業時間が残り15分になったから、自由時間になり、プールから上がって雑談するグループ、まだ泳いでいる子、水をかけっこをして遊んでいる子達…。飛び交う水しぶきをみていると、私の…嫌な記憶がよみがえる…。
「…琳華?どうしたの、顔色悪いよ…?先生、呼んでこようか?」
「ううん。大丈夫よ…。ちょっと、疲れただけだから…もう授業も終わるし。あはは…本当に私、体力なさすぎだよね!」
私は、水が嫌いだ…。水を見ると…嫌な記憶がよみがえってくるから…。とても、悲しい記憶が…。
―放課後、美術室―
今は7月。先月、衣替えして私、毒島リンゴは半そでの赤襟のセーラー服を着ている。星屑学園の中等部の夏服は、白地に青みの強い紺色のラインが入った半そでのセーラー服で、リボンの色は青色。
有寿ちゃんの一件以来、ヴァニラは、姿を現さなくなった…。ヴァニラは、いったい誰なんだろう?私の本当の名前を聞いたとき…何だか私のことをすごく憎んでいる感じだった…。
「リンゴ、どうしたの?なんか、元気ないね…。ああ!わかった、明日の体育が水泳だからでしょう?」
「そうなんだよ、もも…。私…泳げないから、水泳嫌い!アレは、先週きちゃったから…来月まで来ないし…。体調も悪くないから見学できないよね…。」
「実は、私、昨日なっちゃったのアレ…。だから明日、見学なの!明日も暑いみたいだから、絶対プール入りたかったのに!!」
『アレ』っていうのは…。まあ…『アレ』のこと何だけど…。女の子に月に一回くる『アレ』のこと…!
「てか、もも…。この部屋、私達だけじゃなくて…唯君もいたんだよね…!」
「大丈夫だよ。唯は、絵を描いている時は、周りの音が耳に入ってこないから!」
唯君は、結局、作品展に出す作品が間に合わなくて、提出できなかったんだって…。それで、怒って今日水泳部の方をサボってこっちに来たみたい…。部屋の隅っこで黙々と絵を描いている…。
その時、美術室の扉が開いた。水泳部の先輩たちが、唯君を探しに来たんだ!
唯君は、教卓の後ろに隠れる!
「この部屋に中等部2年の甘夏、来なかった?」
「いえ、来てませんけど…?」
先輩たちが、部屋の中をジロジロ見てくる…!
「…本当に、来てないですよ!!もう、寮に帰っちゃったんじゃないですか…?」
「そうみたいだな…。邪魔して悪かったね。」
先輩たちが、帰ろうとしたその時…!
「あれ、君たちは水泳部の子達だね…?何か用ですか?」
賀東先生が、やってきた!そして、教卓の方へ向かう…!ああ、先生そこには唯君が…。
「賀東先生、中等部2年の甘夏君は、今日は美術部に来てないですか?」
「え、唯君なら…なぜか教卓の後ろに…いますけど…?」
あああー!先生…。そこは、黙っていてあげてよ…!
先輩たちに見つかってしまった唯君!
「やっと、見つけたぞ甘夏…!さあ、みんな甘夏を部室へ連行するぞー!!」
「先輩方、待ってください…!俺、今日…生理なんです!!」
とんでもない言い訳を思いついたね…!てか、唯君…私たちの話、聞こえてたんだね…。
「はああああ!?何を馬鹿なことを言ってるんだ!お前は、どう見たって男だろ!!」
「…俺、実は女の子だったんです!名前も唯って女の子みたいな名前だし…!」
「ふざけんなー!!お前の裸なんかほぼ毎日見てるし!女の子の訳ねーだろっ!!」
「…先輩方、嘘ついてすみません。お願いします…!今日は、美術部に出させてください…!」
土下座する唯君…。よっぽど、ももの側にいたいんだね…。
「君たち…唯君を今日は休ませてあげてくれないかな?唯君、うちの部に来るのは、1カ月ぶりくらいだし…。」
賀東先生が助け舟を出してくれた。さすが、賀東先生!…良かったね唯君。
「そうですけど…。顧問の葦原先生がなんて言うか…。」
「先生には、僕から断りを入れておきます。僕が無理に唯君を美術部に参加させたことにすれば、君たちも唯君も咎められることはないでしょう?」
さすが、賀東先生!!これで一件落着だね…。
「…いえ。俺、やっぱり…水泳部に出ます!」
え…!?何言ってんの、唯君?
ああ、賀東先生は恋敵だから…手を借りたくないのかな…。
「本当にいいんですか、唯君?」
「賀東先生、ありがとうございます。…でも、先生にご迷惑はかけられません!」
こうして、唯君は水泳部へ行ってしまった…。
「唯のやつ、何考えてんだか…わけわかんないね!」
「あはは…そうだね。」




