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セカイ防衛少女毒リンゴ  作者: 苺鈴
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不思議の国の有寿3

『裁判だー!!裁判だー!!裁判だー!!』

 私は、法廷の被告人席に立たされていた…。なんで、こんなことになってるんだろう…。法廷には、たくさんの人たちが集まっていた。トランプの兵隊たちや、鳥や動物たち。ここへ来るまでに出会ってきたアリスに出てくるキャラクターたち。

 そして、玉座にはハートの王様と、その隣にいるハートの女王様は…有寿ちゃん!?どうして…有寿ちゃんがハートの女王様に?…ヴァニラのチェシャネコは、いないみたいだから…やっぱり有寿ちゃんがヴァニラなのかな?

「伝令、起訴状を読みあげろ!」

 王様が命じると、白ウサギさんがラッパを吹きならし、それから巻物を広げて、起訴状を読み始めた。

「ハートの女王様が大切にしていた、おばあ様の形見の万年筆を壊した罪でアリスを起訴する!!」

「評決にかかるように。」

 王様が陪審員に言い渡す。え!?まだ、何もしてないじゃん!

「まだです、王様!その前にやることが山ほどありまして…!」

 白ウサギさんは、慌ててラッパを吹く。

「第一の証人、前へ!」

 第一の証人は、イカれた帽子屋だ…。片手にティーカップ、片手にバターつきのパンを持って前にでてきた。たしかお茶会の途中できたんだよね。それで、お茶会を始めた日は、いつだったのかとか、帽子が盗品だかなんだかもめるんだよね…。アリスの物語通りに話が進んでいく…。でも、アリスは被告人じゃないし、万年筆のくんだりからおかしくなったよね…。ハートの女王様のおばあ様の形見って言ってたよね。それじゃあ有寿ちゃんの万年筆が壊されたってこと?

「あ、あの!」

 私は、思い切って発言してみることにした。法廷中の人たちが一斉に私を見る。

「被告人は、黙って!」

 白ウサギさんに止められる。それでも、私は話すのをやめない。

「有寿ちゃん!私の声聞こえる?私は…誰だかわからないんだけど…。有寿ちゃん、私はあなたの万年筆を壊したりしてないよ!」

「被告人は、黙りなさい!」

「万年筆を壊したのって…もしかして、有寿ちゃんを小学生の時にいじめた子じゃないの!?」

 ハートの女王様の格好をした有寿ちゃんの顔がはっとする。

「…そうよ。私の大好きだったおばあちゃんの…形見だったのに…。童話作家になりたいっておばあちゃんに話したら、おばあちゃんがいつも使っていた万年筆を私にくれたの…。その次の年におばあちゃんは死んじゃったの…。いじめられて辛かった時も、この万年筆で童話を書くことで耐えられたけど…。ある日、私の一番仲良かった子がいじめの首謀者だってわかって…。そして、その子が万年筆を…!」

 

「いいえ、女王様。万年筆を壊したのは、アリスです!!」

 その声は、ヴァニラ!

 チェシャネコのヴァニラは、突然、私の目の前に現れた!玉座に有寿ちゃんがいるってことは、ヴァニラの正体は、有寿ちゃんじゃなかったんだ!…良かった。じゃあ、ヴァニラの正体はいったい誰?

「ヴァニラ、あなたは、いったい誰なの?」

「私は、チェシャネコ。あなたは、アリス。女王様、万年筆を壊したのはアリスです!!あなたの友達の振りをしながら、あなたのことを騙して、陥れて、傷つけてきた悪い女よ…。さあ、女王様、アリスに判決を!あなたの大切な万年筆を折ったんだから…アリスの首をちょん切ってしまいましょう!!」

「ちょっと、待ってよ!私は、有寿ちゃんの万年筆を壊してないよ。それに、私の名前はアリスじゃないよ!私の名前は…。名前は…。」

「本当の名前が思い出せないんでしょう?だったら、あなたはアリスよ!さあ、トランプの兵隊たち、アリスを取り押さえなさい!」

 トランプの兵隊たちが私の体を取り押さえる!

「なんで、あんたの命令を聞くの?女王は、有寿ちゃんでしょ?」

「この不思議の国のアリスの『セカイ』は、有寿ちゃんに眠っていた『チカラ』を私が無理やり『覚醒』させて作りだしたものよ。だから、この『セカイ』に私は自由に干渉できるの!」

「…ヴァニラさん、もうやめて。その子を傷つけないで…!その子は…私の万年筆を壊してないよ!その子は…名前は思い出せないけど、私の友達になってくれた子なの…!」

 ヴァニラは、有寿ちゃんを睨みつけた!…すると有寿ちゃんは、意識がなくなり、その場に倒れこんでしまった!

「有寿ちゃん…!?ヴァニラ、有寿ちゃんに何をしたの!」

「さっき、言ったでしょう。私はこの『セカイ』に干渉できるって。この『セカイ』の真の支配者は私なのよ!」

 ヴァニラが指パッチンをすると、私の目の前に巨大なギロチン台が現れた…!

「まさか…本当に私の首をちょん切る気なの…!?」

 ちょっと!この作品、残虐描写は禁止のはずでしょ…!某魔法少女アニメの3話みたいなことになっちゃうじゃん!そうこうしてるうちに、トランプの兵隊たちに無理やり、ギロチン台に固定されてしまった私…!本当の名前を思い出せなければ、私の『チカラ』を使えない!

 

 私の名前は…。いつもからかわれていたよね…。いじめっ子は、何て言って私をからかったんだっけ…?思い出すんだ私…!私の名前は…?


「さあ、アリス…!これで、お別れよ…!」

 ギロチンの刃が動き出した!かなり高いから、落ちてくるまで時間がかかるみたい…!早く、思い出して私!私の名前は…。私の名前は…?


 ギロチンの刃は速度を増して、私の首を目指して、滑り降りる…!あああ、早く思い出せ、私!


 その時。私の目に前に…誰かが現れた…。白ウサギさん…?いや、違う…。それは、人間で…男の子で…。白ウサギさんの毛みたいな綺麗なプラチナブロンドの髪に、桃色…ううん、赤い瞳のあなたは…!?

『君の本当の名前を教えてあげる…。君の本当の名前は…。』

 その男の子は、私の耳元で優しくささやいた…。そうだ…これが私の本当の名前…!あなたは、私の名前をからかわなかった…。私をいつも守ってくれた…。そして今も私を助けてくれた…。


「ありがとう、セカイ君…!」


 私の体が光始めた…!

 



 


 

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