澪門有寿のセカイ3
放課後。私、毒島リンゴは『SAWDO』の秘密基地にいた。この前のあの屋内プールにあった盗撮犯のカメラの音声機能が修復でき、音声入りで映像を見ることができた。
「『SDガ●ダム苺大福フルバーニアン』ちゃんの名前は『ヴァニラ』ちゃんだったんですね!またお菓子みたいな名前ですね…。」
「そして、唯君を言葉巧みに挑発し、動揺させ、そして謎の光線によって、彼の『チカラ』を無理やり『覚醒』させたようですね。」
「この子、人魚姫を例え話に使ってるわね…。確かに、上手い例えよね。唯君はももちゃんが好きで、ももちゃんは、賀東先生が好きで…。そういえば、賀東先生って誰のことが好きなのかしら?」
「俺、知ってるよ!しーちゃんが好きなのは、リ」
「相川、話がややこしくなるから、お前は黙ってろ…。」
「え!?賀東先生って誰のことが好きなんですか?」
「みなさん、話が脱線していますよ…。つまりヴァニラは、童話が好きな生徒の可能性がありますね。毒島さん、誰か生徒に心当たりがありますか?」
童話が好き…。まさか…有寿ちゃん?いやいや…有寿ちゃんは、童話が好きだけどあんなふうに唯君を動揺させて、あんな酷い事をするはずないよね!
「童話が大好きな友達は、一人知っていますが…でも、その子はこのヴァニラとは全然違って、とっても優しくて良い子で…。」
「だが、クリムだって『セカイを滅ぼす者』に騙されて、悪事をやらされたてだろ?そいつも、無理やりやらされてる可能性だってあるだろ。」
「そうですね…。毒島さん、ちなみにその生徒というのは誰ですか?」
「中等部2年3組の澪門有寿ちゃんです。童話が大好きで、将来の夢は童話作家なんです。」
「澪門有寿…。れもんありす…。ありす…。あいす…。ヴァニラアイス…!!」
「それは、ちょっと…無理があるんじゃないですか…?私、有寿ちゃんは、ヴァニラじゃないと思います!」
「その根拠は、何だ?」
「それは…『覚醒者』の感です!」
「感ですか…。とにかく、一度その澪門さんに会ってみましょう。彼女は、今どこにいますか?」
「今の時間なら、図書室にいると思います。私、呼んできます!」
―図書室―
図書委員の当番席で童話を書いていた私、澪門有寿は行き詰ってしまった…。私が書いた童話を…ももちゃんとリンゴちゃんが読んでくれるんだ…。それは、とっても嬉しいんだけど…もし、私の書いた童話がつまらなかったら…。二人に嫌われちゃったら…どうしよう!私、またひとりぼっちの『セカイ』に戻っちゃうよ…。
ううん。あの二人なら、きっと…嫌わないでくれると思う…!なんでだかわからないけど…そんな気がする…。早く、続きを書こう…!
「あの、図書委員さん。この本を借りたいんだけど…。」
「え!?あああ、ごめんなさい…。今、貸出印を押しますね。」
私の馬鹿!当番なの忘れて、童話を書くのに夢中になるなんて…。
「はい、どうぞ。貸出期間は2週間です。あれ、あなたは?」
うちの制服みたいだけど…色が違う?
「私の名前は、ヴァニラ。さるお方のために『セカイ』を滅ぼす者よ…。」