リンゴと保健室
次の日の朝、私、毒島リンゴは急いで保健室へ向かった。
「おはようございます、深沢先生!セカイ君は…?」
「あら、おはよう毒島さん。セカイ君なら…昨日帰ったけど…。彼に何か用?」
「あの、セカイ君は、次いつ学園に来ますか?」
「さあ…。体調がずっと優れないみたいで、今までは都内の病院に入院してたんだけど、今度、関西の病院に転院するそうよ…。だから、当分、休学するんじゃないかな?」
「そうですか…。教えてくれてありがとうございます。こんな朝早くに突然押しかけてすみません…。」
「いいえ。毒島さん、セカイ君てほとんど学園に来たことないでしょう、だから友達もいないみたいなの。だから、毒島さん、セカイ君と仲良くしてあげてね。セカイ君とは、知り合いだったの?」
「はい。多分…セカイ君は、私の初恋の男の子かもしれないんです…!」
「まぁ!そうなの!?二人はいつ出会ったの?」
「えーと、幼稚園が一緒だったんです。それで、私が他の子に名前のことをからかわれていた時に、セカイ君が助けてくれたんです…!小学校は別々だったから、卒園してから一度も会えなかったんですが。」
「へえ。それが、この学園で運命の再開なんて…!きゃああー!リンゴちゃん、それって素敵すぎるね!」
保健医の深沢小夜先生は、綺麗な長い黒髪で、落ち着きがあって綺麗な大人の女性って感じだけど、今は恋バナに夢中な女の子みたいだ…。なんだか可愛い。私の下の名前で呼んでくれた!ああ、名前からかわれた話したからかな。
「おい…。さっきから、うるさいぞ…。」
あれ?奥のベットから今、どこかで聞いたことのあるような声が…。そして、なぜかタバコのにおいがする…。もしや…。
「コラ!橘君、学園内で喫煙しちゃだめでしょ!仮眠はとってもいいけど、タバコはだめ!ここは保健室なのよ!もう…!」
「うるせーな…。タバコ吸わないと目が覚めねぇんだよ…。昨日は遅くまで学園に残ってテストの採点してたから、ほとんど寝てねえんだよ…。」
寝起きも態度悪すぎ…!!
「ほら、もうすぐ職員の朝礼が始まるわよ。早く起きて顔洗ってきなさい!上着、アイロンかけておいたわよ。」
「わかってるよ…。だいたい、小夜は昔っから、お節介なんだよ…。」
「リンゴちゃん、私もこの学園出身なの。橘君とは同学年で卒業までずっと同じクラスだったの。」
橘先生が、下の名前で呼んでる…!なんだか、いい雰囲気だし…。もしかして、この二人って…!
「あの…。つかぬことをお聞きしますが…お二人は、恋人同士ですかっ!?」
『はぁああああー!?どうしてそーなるの!!』同時に叫ぶ二人…!!
「だれが、こんなデリカシーなしニコチン依存カス野郎なんかと…!」
「だれが、こんな貧乳お節介年増女なんかと…!」
「はぁ…?誰がカス野郎だって…?」
「そっちこそ…私が一番気にしてることを…!」
どうしよう…。何だかすごく険悪なムードになちゃった…。
「…なんか、変なこと聞いて…すみませんでした!!」
「…リンゴちゃんが謝ることないわよ。全てはこの、デリカシーなしニコチン依存ヤリ●ンカス野郎のせいよ。」
なんか、悪口が増えた!しかも、とんでもないところに入れたせいで、とんでもない単語が生まれてしまった!!
「…そういえば、リンゴちゃんって百合恵ちゃんの娘なんだよね?」
「はい、そうですけど…?」
「実はね…。橘君の初恋の相手って、百合恵ちゃんなんだよ!」
ええええー!?そうだったのー!?
「うわああああああー!!小夜ー!!コイツにだけは、絶対に言うなって言っただろー!!」
「えー。そうだっけ?…忘れちゃった!」
「て、てめぇ…!絶対、わざとだろ…!」
こんなに動揺してる橘先生、見るの初めて…!めちゃくちゃ恥ずかしがってる…。ふふふ…これで橘先生の弱みを握れたね!
「へえー。そうだったんですかぁ…。まさか、橘先生が母さんのことを…。」
「あああー!!もう、それ以上、言うな…!」
わあ…。橘先生、顔真っ赤!
「私の母さんが初恋の橘先生、テストの採点のことなんですが、先生はテストの採点もレポート並みに厳しいそうですね…?もう、この話題は蒸し返さないので…どうか採点の方お手柔らかにお願いできないでしょうか?」
「…わかったよ!…その代り、もうこの話題は二度と蒸し返すなよ…!!」
「はーい。…私の母さんが初恋の」
「だから、やめろー!!」




