澪門有寿のセカイ1
「ごめんね!有寿ちゃん。今日、当番の日じゃないのに、私がリンゴ探しに行ってる間、やってもらっちゃって。」
「本当にごめんね!私が当番なの忘れてて…。」
「いいよ。二人とも気にしないで。私、放課後はいつも図書室に来てるから…。」
この女の子は、私達と同じ図書委員で中等部2年の澪門有寿ちゃん。クラスは3組。肩までのばしたストレートの黒髪に黒い瞳、名前はアリスだけど純日本人な顔立ち。頭に白いカチューシャをしていて、なんだか全体的に落ち着いた感じの優しい雰囲気の子だね。
「有寿ちゃんて、本好きなの?」
「うん…!図書室にある本はもう大体読んだの!…ああ!ごめん引くよね…。私、暗いよね…。」
「ううん。そんなことないよ、すごいよ!」
「…私ね、童話作家になるのが夢なの。いつか自分も、今まで読んできた物語のように、読んでくれた人が幸せになれるような童話を書きたいの…!」
有寿ちゃんは、優しそうな瞳を輝かせながら夢を語った。
「有寿ちゃんなら、きっと素敵な童話が書けるよ!ねえ、もも。」
「そうだよ!…そうだ、有寿ちゃんが書いた童話に私が挿絵を描いてもいい?」
有寿ちゃんの瞳がまた輝いた…!すごく嬉しそう!
「…うん。ありがとう、藤林さん、毒島さん…。」
「水臭いよ、有寿ちゃん!私のことは、ももって呼んで!どうしても苗字で呼びたいんなら賀東(以下略)」
「私も、リンゴでいいよ!」
「…うん。ももちゃん、リンゴちゃん…。私、童話が完成したら、一番に二人に読んでもらうね…!」
「やったぁ!私達、有寿ちゃんの読者第1号だね!」
「それじゃあ、私、今日はもう帰るね…。ももちゃん、リンゴちゃん…ありがとう。」
「いやいや、お礼を言うのは、こっちだよ!当番やってくれてありがとう。それじゃまた明日!」
有寿ちゃんは、帰って行った。
「あんなに嬉しそうな有寿ちゃんの顔見るの初めてだよ!…あのねリンゴ。有寿ちゃんと同じ小学校の子に聞いたんだけど…。有寿ちゃんて、小学生の頃、学校でいじめられてたんだって…。それで、人と関わるのを怖がるようになちゃったみたいで…。昼休みも放課後もいつも一人で図書室に来てるの…。私はクラスは違うけど、なんか気になっちゃって…。そしたら、今年、委員会が一緒になってよく話すようになったんだけど、やっぱり距離とられちゃってて、だから、今日あんな嬉しそうな有寿ちゃんの顔が見れて…私、すごく嬉しい!!えへへ、これもリンゴが当番を忘れてくれたおかげだね!」
「そうなんだ…。私、もっと有寿ちゃんと仲良くなりたい!」
「私も!有寿ちゃんの童話が出来たら、私の全力をそそいで挿絵を描くよ!!」




