リンゴとテスト1
放課後。テスト前日でも、私は『SDガ●ダム苺大福フルバーニアン』ちゃんを探して校舎内を歩いていた。あんな、お人形みたいに綺麗な顔した子ならすぐ見つかると思ったんだけど…。テスト前で部活動は休みだから、生徒が少ないね…。あ、前から歩いてくるのは…。
「リンゴさん、帰って勉強しなくていいんですか?」
「賀東先生。いやぁ…もう、数学は、諦めました!」
「諦めちゃだめですよ…。まだ、時間はあります。良かったら、僕が教えましょうか?」
「ええ!?でも、先生、美術の先生じゃ…?」
「中学の数学くらいなら教えられますよ。」
「それじゃあ…。お願いします。」
あれ?私『SDガ●ダム苺大福フルバーニアン』ちゃんを探してたんだよね…。まあ…いっか。
―2年2組の教室―
「先生、どうしてそんなに教えるの上手いんですか!?数学の名護先生より解りやすいです…!」
名護先生は「俺が正しい」が口癖で、先生が教えた以外の解き方すると嫌な顔されるの。あと、服装にも厳しくて、制服の第一ボタンを留めてないと、ボタンをむしられちゃうの…。
「そんな…おおげさですよ…。」
「先生、数学の先生になれば良かったのに…そうすれば私、数学で満点とれますよ!」
「それじゃあ、僕が教えてあげたから明日のテストは満点確実ですね!」
「…それはどうでしょうか。そういえば、先生はどうして美術の先生になろうと思ったんですか?」
「絵を描くことしか取り柄がなかったからですかね…。」
「でも先生、日本画を学ぶためにわざわざ日本の美大に入学したんですよね?それって、先生の絵に対する思いがすごく強いってことですよね!」
「僕の絵に対する思いは、そんな純粋なものじゃないですよ…。僕の母は、日本人で、僕が生まれてすぐに亡くなったんです…。だから、僕は母のことはほとんど、いや全く知らないんです…。それで、母の故郷である日本のことについて知りたくて、いろいろ勉強しているうちに、日本画に行きついただけです。」
「…先生。なんか…すみません。」
「いいんですよ。僕が勝手に話してるだけです。それに、訳あって僕は父と折り合いが悪いんです。だから、日本に来たのは父から離れるためでもあるんです…。変な話をしてごめんね。…他にどこか解らないところはありますか?」
「…いえ。もう、ばっちりです!」
「明日のテストが楽しみですね。」
先生にお礼を言って、教室を出た私。何かすごいことを聞いてしまった…。賀東先生にあんな過去があったなんて…。私の頭の中は、数学のことも『SDガ●ダム苺大福フルバーニアン』ちゃんのことも消え去ってしまった…。




