リンゴと生徒指導室
途中まではいつもと変わらない朝だったのに…。私、毒島リンゴのセカイは一変した。
父さんと母さんの命を奪ったあの事故があった日もそうだった。…。
いつもと変わらぬ朝だったのに…。どうして…。
生徒指導室の椅子に座りながら私、毒島リンゴはぼんやりとそんなことを考えていた。生徒指導室なんて自分は在学中に入ることは一度もないと思っていたのに。校則を破ったり、問題を起こしたり、先生に反抗したり、そういう問題児が入れられる部屋なのに…。
ガラガラと扉が開き人が入ってきた。担任の先生だ。薄い頭の毛にダサいメガネの中年男性教師。名前なんだっけ?先生は私の主面の椅子に腰かけた。
「毒島、少しは落ち着いたか?」
「…はい。」
私は落ち着いていますよ先生。動揺はしているけど…。
「安心しなさい。胡桃はお前に殴られたショックで軽い脳振盪を起こしただけだ。一応、病院で精密検査を受けてるみたいだが、男子が女子に殴られたくらいで死にやしないよ。普段真面目でおとなしいお前が男子を殴り倒すなんて学校の先生みんな驚いてたぞ!」
先生は笑いながら言った。
「なんでも、胡桃達不良グループに絡まれてた女子生徒を助けようとしたんだって?何人かの生徒達がお前らのことを見ていたらしいし、お前に非がないことははっきりしている。この件についてお前への処罰は一切ないことになった!まぁ、落ち着いたら安心して教室に戻りなさい。」
教室には戻りたくないな…。教室だけじゃない…。きっと学校中が「毒リンゴ」の話題でもちきりなんだ。




