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【第9話】約束の予定

ハシビロコウを見に行くという約束。現実のものとなった当日の朝……。

 午前5時11分

 何だか、早く目が覚めてしまいました。

 まるで、遠足当日の子供の様に……

 しかし、隣に居るはずの彼女の姿が見当たりません。

 私は、おもむろに体を動かしながらリビングに向かいました。


「あれ? おはよう剛さん」


 後ろから声がしました。


「おはよう。シャワー?」

「ええ、気分転換に……。7時には出ますよ!」


 ちょっと早めの朝食


「今日の天気は?」


 私は、リモコンを手にしテレビをつけました。


「とりあえず大丈夫だね」

「うん」


 食事後、彼女は思い出したかの様に口を開きました。


「剛さん、見せたい物があるって言ったでしょ」


 彼女の案内でリビングを出ました。

 向かった先は、玄関に一番近い部屋でした。


「ここは!? アトリエ?」


 その部屋には、描きかけの絵などがありました。

 部屋の雰囲気から、何かすごいと感じ取れるものがあります。


「私、絵描くの好きなんです」

「本格的だね」 


 彼女が一枚の写真を見せてくれました。。


「これは?」

「この写っているのが、今回入選した作品なんです」


 写真に写っているのは、ハシビロコウが鋭い眼光で……

 見るからに大きなサイズの絵だと分かる。


「この絵って、かなり大きいよね?」

「えぇ、まぁ……」


 何となく照れているのが伝わってくる。


「趣味ってレベルじゃないよ」

「そんな事ないですよ。素人の趣味ですよ。趣味」


 謙そんしているけども、普通にスケッチブックに描くのとはわけが違う。

 自信がなければ描けないと思う。


「でも、上手いよ」

「ありがとうございます」


 実際の大きさは分からないけど、たたみ2畳より大きい気がする。

 絵の事は、よく分からないので変な表現になってしまった。

 自分も写真を撮るのは好きだけど、それで食っていけるかって言われると微妙である。

 むしろ今の仕事をしている方が楽な気がした。


「あっ! もうこんな時間です! 支度しないと剛さん!」


 この後、私達は予定通り7時出発しました。

 都心に通じる幹線道路は、まだそんなに交通量は多くなく走りやすい。


 50分くらい走っただろうか?


「どっかコンビニで5分でも休まない?」

「うん。そうしましょう」


 走っていると、ちょっと広めの駐車スペースのあるコンビニがあった。

 そこで、少しの休憩をとる事にしました。


「コーヒーでも買って来ようか?」

「それなら……」


 彼女は、水筒を取り出しました。


「どうぞ」

「ありがとう」


「こっちには、昼食の時のお茶が入ってます」


 休憩は、必要です。

 そう思いました。


 再び、動物園に向かい車を走らせました。

 目的の駐車場には何事もなく順調に着きました。


「小さい方のデジカメ、私が使っちゃだめかしら?」

「いいよ。弁当はオレが持つね」


 動物園の開園時間まで、色々とハシビロコウの事を話した。

 

「剛さんは、どう思います?」

「そうだなぁ~うちらの方をキッ!って見てるんじゃない?」


「ふふっ、私もそう思う!」


 開園の時間です!

 とりあえず人気のパンダを見てからハシビロコウへ向かう事にしました。


「いや~! 本当に動物園久しぶりだな~!」

「くすっ」


 一枚撮られた!?

 大人げなかったか? 


「何か好きです。剛さんのそういう所」

「そっ……そう? ははは……雪、思ったより残ってるね」


 何か照れ隠し……

 

「さぁ! 行きましょ!」


 彼女は、私の手をギュッと握った!

 手をつないで歩くなんて照れます。


「もっと人が居ないと思ったけど、来ているもんだね」

「誰も気にしてませんよ。私達の事なんて」


 以外に緊張がバレバレなのか……


「あれ乗りません?」


 彼女は、モノレール乗り場を指さした。

 何度か来たけど乗った事がない。


「モノレール乗るの初めてだな、オレは」

「私もです」


 さあ、いよいよ乗り込みます。


「お~結構、高い所走ってるんだね」

「そうですね。今度は、もっと緑のある時に乗りましょう」


「もう2~3ヶ月もすれば、景色もだいぶ違ってくるんだろうな~」


 あっという間の乗車体験でした。

 

「あれは、フラミンゴ」

「もう剛さんったら、そっちじゃなくて」


 何か、ボケて? しまいました。


「ドキドキしますね」

「そうだね」


 私達は、右からの視線を何となく感じていました。


「おっ!?」

「剛さん! くっ……!」


 私達は、目が点になりました。


「見ていますよ。剛さん」

「見てるね。どう見てもこっちを見てるね!」


 待っていたかの様に凝視している。


「近っ! なんで?」


 私は、シャッターを押した。

 その時、彼女は!


「あっ! すみませんシャッターお願いします」


 私達よりも年上のカップルに声を掛けていました。

 その二人は、見るからに高そうな一眼レフのカメラを首から下げていました。


「じゃあ、真ん中にハシビロコウを挟んで撮るよ! ハイ、チーズ!」


 良いスリーショットです!


「ありがとうございます!」


 あの人は、何者?

 彼女は、すごく喜んでいます。


 私達は、時間の流れも忘れるくらいハシビロコウを見ていました。


「昼にしない? あそこのベンチで」


 私は、近くのベンチを指さした。


「お腹空きました?」

「うん、何かね……」


 私達は、ベンチへと移動した。


「こっちに来ないかしら……。はい、おしぼり」


 午前11時40分

 

「あれ? まだここに居たの? 好きなんだねハシビロコウ」


 私達の方がハシビロコウの様に思えてきました。


「ちょっと、カメラ貸してもらえる? ハイ! こっち見て!」


 撮った写真を見てみると、今から昼って感じのツーショットでした。


「まだ居るの?」

「もう少しだけ……」


「じゃあ、ごゆっくり~」


 絶対、ハシビロコウみたいだって思ってるよ。

 あの人達……

 それから私達は、30分ほど見ていました。


 バサッ!!


「羽を広げるとでかいよね」

「……」


 突然の沈黙……


「どうしたの? 具合悪い?」

「ちょっと、寒くなったかな~」


「少し歩こうか?」


 雪も残っているし、じっとしていると寒いかな?

 

「また来るからね~!」


 彼女は、手を振っていました。

 って、ぐる~っと回って戻って来ました。


「クシュ!」

「もしかして風邪引いた?」


「うん……そうかな~」


 私は、心配になって来ました。


「お土産買って帰ろう。良い写真も撮れたしね」


 とりあえず、ハシビロコウのぬいぐるみを確保。


「へぇ~手拭い? こんなのあったんだ」


 なんだか最終的には、かなりの量になってしまった。


「ハシビロコウの大人買いみたいですね」

「いいんじゃない! うちらは大人だよ!」


 動物園を出て、車を止めているパーキングに戻って来ました。

 私は、彼女の額に手をやった。


「少し熱くなってきた? 運転代わるよ」


 帰りは、私の運転で帰る事にしました。


「ごめんね……」

「また来ればいいよ。今度は、他の動物園にも行ってみようよ」


 出来るだけ早くマンションに戻らなければ……

 ただ、それだけを考えていました。

 彼女は、具合悪そうにスマホを操作している。

 途中、かぜ薬を買いました……

 しかし、彼女は飲みませんでした。


 マンションに着くと、叔父おじさん待っていました!?

 この間、お世話になった病院の叔父さんです。

 看護師も居る。


「まだ歩けるかな?」


 エレベーターで3階に向かいました。

 彼女は、すぐ横になってしまいました。


「風邪だね。処置はした。あとは、ゆっくり休ませてあげなさい」 

「分かりました」


「すぐ良くなるよ。大丈夫だ」


 この言葉にホッとしました。



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