【第7話】タイミング
彩恵さんの前で倒れてしまった剛。搬送させられたのは病院?そして、鳥取工場への報告……
身体を動かそうとしても熱のせいなのか?
何だか怠くて動かせない。
おまけに関節も痛い。
何なんだ!?
今までにないくらい重症じゃないのか?
と思うくらいの状態……
声も出せないのか……
たかが風邪じゃないのか?
こんなに動けないのか?
子供じゃあるまいし!
私は、ふと気付いた。
自分の家ではないという事。
ここは、どこなんだ?
目だけを動かして辺りを見まわした。
点滴をしている?
……病院か?
彩恵さんの姿も確認できた。
「どうですか? 叔父さん、剛さんの容態は?」
「まだ少し熱いかな」
どこの病院だろう……
「ただの風邪なんだけどね。さえちゃんは、昔から優しいね」
「でも、あんなに苦しがっていたし……」
「それじゃあ、今日は、このまま一泊入院させよう」
一泊!?
病院に……
「疲労もだいぶ溜まっている様子だからね」
どうやって来たんだ?
タクシーが打倒か……
まさか!?
…………救急車?
全く記憶がない。
数時間後
彩恵さんに聞いてみた。
「私……。びっくりしてしまって……」
やっぱり救急車なのか?
風邪で救急車!?
恥ずかしくなってきた……
この病院は、24時間看護だから付き添う事は出来ないらしい
「明日、また来ます」
彼女に、鳥取工場の事をどのタイミングで話そうか……
翌日……
「おはようございます。剛さん」
まだ、少し怠いけど昨日より全然いい。
というか、病院なんかに長居は無用。
「さぁ帰りましょう」
もう、タクシーが待っていた。
乗る前に後ろを振り返った。
「この病院は……」
ここは、私が知っている病院ではありませんでした。
「あれ? 彩恵さん会社は?」
「休みました。……いいんです」
私の為に……
「まだ寝てた方がいいですよ」
「あぁ、うん」
私達は、マンションに戻って来ました。
「いろいろと、ありがとう」
「本当に、びっくりしたんですよ」
彼女は、ソファーではなく膝を折って私の隣に座った。
「ソファーに座れば……? 彩恵さん」
私の声が届いていない様子?
「彩恵さん!?」
「剛さん、これ……」
テレビの横にある5体のハシビロコウのフィギュア指差していました。
「前に、車の中で言ったでしょう。ウチにもあるって」
私は、彼女をコレクションの部屋に案内した。
「すご~い! あっ!?」
何を見たのか、すごく驚いた様子でした。
実際、何だかんだで、まだ何も処分出来ずにいたのです。
「どうしました?」
「ブルーメッキのが、2つもですよ! 私これだけ無いんです」
美由香にもらったハシビロコウ……で、2つなのです。
「良かったら、1つあげますよ」
「……ホント!? ありがとうございます!」
私は、自分が当てた方を彼女に渡しました。
美由香からもらったのは、ただのコレクションにすぎない。
「もう昼ですね。おかゆ食べます?」
朝、作ったらしく彼女は部屋に戻った。
携帯を見ると、美由香からメールが届いていました。
「言い忘れた事があります。もっと自信持っていいんだよ!」
という内容でした。
「お待たせしました」
数個の小さなタッパにやくみが入っていました。
それをのせて食べてみました!
おかゆは絶妙な塩加減で、味噌にも梅にも何にでも合いました。
私は、覚悟を決めました。
「彩恵さん、あの~急な話しなんだけどね」
「何でしょう?」
「……明日、鳥取にある工場に応援に行く事になってるんです」
言ってしまった!
「鳥取ですか? 何日ほどですか?」
「期限というのが無いらしく……」
何だか、私が困惑している感じです。
「平気です。いつでも会えますよ」
「どういう事?」
意味が分からない。
「実家、鳥取なんです」
全然、分からない。
「車や電車だって簡単には行けないでしょ」
「そんなに深く考えなくていいですよ」
「いやいや! 彩恵さん考える所でしょう!」
「そうですか? いいじゃないですか」
金持ちですか?
あなたは……
でも、見た感じ彼女は普通なんだよな~。
「大丈夫です! 会えます」
彩恵さんは、自信満々という感じです。
何気なく時計を見た。
そろそろ会社にチケットを受け取りに行かなければならない時間でした。
「一緒に行きますか?」
彩恵さんを誘ってみました。
「はい」
即答でした。
会社に到着し、チケットを受け取りに中に入った。
彼女は、車で待機という事で……。
「えっ!? そうなんですか」
事態は、急を用したみたいです。
後輩の「桂」が代わりに鳥取工場へ予定通り行ったそうです。
車に戻って、この話しをしました。
私が風邪を引いたばかりに……
桂に、迷惑をかけてしまった。
!!!
見ています! 見られています!
まだ会社の駐車場でした。
きっと明日言われるな!
覚悟しておくか……
会社から離れる事にしました。
「会社の人、見ていましたね」
「そ、そうですね……」
彩恵さんも気付いていたみたいです。
「別のところに、車止めれば良かったかな」
「照れちゃいますね。興味津々という感じでしたね。ふふっ」
この女性は、強い人ですね?
「何か食べに行きますか?」
「……剛さん、もうお腹空きました? おかゆだけですものね」
彼女の言う通り、何だかお腹が空いてきました。
私達は、大通りにあるファミレスに向かう事にしました。
「そんなに頼むんですか? 剛さん……」
「食べたい気分なんです」
テーブルには、結構な量の料理が並びました。
「大丈夫ですか?」
「平気! 平気!」
なんでだろう?
あっさり完食できました。
マンションに戻る前に桂に電話してみました。
「全然平気っすよ! 山さんこそ大丈夫っすか?」
問題なさそうです。
マンションに帰ってくると……
兄が、待っていました。
「悪い! 緊急なんだ! 今日も泊めてくれ!」
何だよ!?
このタイミングの悪さはっ!!
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