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【第2話】雪の朝

雪の降る帰宅途中に寄ったスーパーで同じマンションに住む女性を見かける。と言っても挨拶程度な関係。普段は、道行く人に声など掛けることなどしないのに声を掛けて送り届けてしまった。この昨夜のことを頭の片隅に置き? むかえた次の朝。

ピピピッ! ピピピッ! ピピピッ! ピピピッ!


 気が付くと、目覚まし時計が鳴っていました。


時刻は、午前4時30分……


 会社は8時から始まるから、1時間10分後には家を出なければならない。

 テレビの情報だと、雪は9時頃まで降るとなっている。


午前5時41分、やはり雪は止みそうもない。


「本当に止むのかな?」


 グレーがかった空を見上げてつぶやいた。

 完全な徒歩装備にマスク多めで外へ出た。


 例年に無い大雪という事もあって歩くのも一苦労である。


……1時間後


「ふぅ~何とか半分」


 途中にあるコンビにで、缶コーヒーと昼食で食べる物を買い再び歩きはじめた。


午前6時45分


 このままでも遅刻はしないのだが、少し歩くペースを上げることにした。

 次第に風景は、住宅街から工場地帯に変わってきた。


午前7時50分


 いつもの? の様に2時間くらいで、会社に着いた。

 まるで、ウォーミングアップでもしたかの様に体は出来上がっていた。


「お早うございます。山さん、やっぱ歩きっすか」

「あぁ、おはよう。……車で来たのかい?」


「はい。全然オッケーっすよ」

「へぇ~すごいな」


「やっぱタイヤ買っちゃいましょうよ。スタッドレス!」

「あぁ、考えがえてみようか……いや歩きも悪くないぞ!」


 後輩の言うのが正論なのかもしれない。

 世間一般にもそうかも……。


 そのうち雪は1時間もしない内に、小降りになり次第に止んでいった。


「雪止んだみたいっすね」

「あぁ、予報通りだね。じゃあ、もう今日は降らないかな?」


「そうだといいっすね」


 今まで隠れていた太陽が顔を出し、その日差しはとても心地いい。

 しかし、時間が経つにつれ太陽も傾き気温もどんどん下がってきた。


 今日の生産数をクリアさせるには定時間では終わらない。

 1時間くらいの残業が必要である。


 この雪だから早く帰りたいところだけど、中途半端に残して帰る訳にもいかない。


……従業員ですからね。


「よ~し! 今日の作業終了だな」

「山さん、送っていきますよ。帰りも歩きっすよね」


「あぁ、でも方向が間逆じゃん。大丈夫だ。ゆっくり帰るから、明日休みだし」

「そうっすか……じゃあ気を付けて帰って下さいよ。お疲れ様です」


 後輩からの好意を断って、18時16分……会社を出発した。


 雪が降っていないだけましだが、歩道はどこも狭くなっていた。

 仕方なく車道を歩かなければならない所もあった。


 車道は、もっと狭く感じられ運転手にとっては、歩いている歩行者は邪魔だろうなと思った。


 朝寄ったコンビニに着いた。

 私は、肉まんを2個とコーヒーとカップめんを買って店を出た。


 コンビニから歩きづらい歩道に出ようとした時でした。


「あの~……やっぱり」


 私の歩きを止めたのは、美板みいたさんだった。


「美板さんじゃないですか……」

「今日は、車じゃないんですか? え~と? お名前なんでしたっけ?」


 そうだった~! うかつにも昨日は、自分のことを言ってなかった。

 それなのに挨拶程度で、よく私の車に乗ってくれたもんだと思った。


「あっ……あ~、山美やまみです。山美 つよしです」


 うぁ~~フルネームで言ってしまった。


 何か恥ずかしい……


「帰るのでしたら乗って行きますか?」


 気にしているのは、私だけ……


「えっ? あ……はい。いいんですか?」

「それ、私も言いましたよ。昨日」


 はまっている私……


「そっ、そうでしたっけ? ははは……」


 コンビニの駐車場に、止めてあった美板さんの白い軽自動車に乗せてもらうことにした。


 そんなに着飾った感じでもなくタバコの臭いもしない。

 多分、吸わないのでしょう。


 勝手な私の思い込みに過ぎないけれど、ただ一つ気になった物があった。


「スタッドレスですよね? やっぱりいいですか?」 


 私は、何ともくだらない質問をしてしまった。


「山美さんは、違うんですか?」

「ノーマルです。でも、あのくらいが限界ですね。ははは……」


 何か苦笑いになってしまった。


「後輩に買った方がいいって言われたんですけどね。もう12年もこんな感じで歩いていますから今更って言うのもありますね」


「そうなんですか? 何かすごいですね。あのコンビニまで結構ありますよ」

「まぁ、普通に歩いて1時間くらいかな」


「え~そんなに掛かるんですか? 想像したこともなかったです」


 車中はこんな会話で、途切れることはなかった。

 そんな中、私はやはり気になっていた。


「明日、お休みですか?」

「えっ? 休みですけど……」


 なんだ? どういうことだ?

 この期待をさせる展開は……


「タイヤ買いに行きましょうよ。昨日までは、大丈夫だったかも知れませんが危な過ぎます。ダメですか?」

 突然の彼女の「買いに行きましょう」という言葉に心が揺らいでいる私がいた。


 心配してくれているのだろうか?

 それと意外に強引なタイプなのかなと思った。


「あ……いや、ん~タイヤはいいですよ」

「すみません。何か困らせてしまったみたいですね」


 少し沈黙的な空白…………


 女性の沈んだ声はよろしくないです。


「じゃあ、また雪が降って歩くことになったら、ちょっと考えますよ」


 何か話題は無いか?

 話しになる物……あるじゃないか!! 


 この世界のバードシリーズ第3弾のこれが!


「あの~これ……ハシビロコウですよね」

「はい! 私大好きなんです…………変ですよね」


「いや、そんなことないですよ。あの辛抱強いところが何かいいですよね」

「そうそう獲物を獲るときの……山美さん? 好きですか?? ハシビロコウ」


「えぇ。実を言うと、これウチにもあるんですよ」

「そうなんですか~!! 何か嬉しいです。私の会社に好きな人が居ないっていうか、存在すら知らない感じなので本当に嬉しいです」


 ハシビロコウの話しで、ものすごく会話が盛り上がってきました。

 私もこの鳥で会話が出来る人が身近に居るとは思っていませんでした。


「山美さん、今度見に行きませんか?」

「いいですね。一番近くで見れる場所は……あそこですか?」


「そうですね。ふふふ……何か楽しい」


 やはり強引なのでしょうね、私が引っ張られてしまいます。

 でも挨拶程度の存在から、ずいぶんと親しくなった様な気がします。


 昨日の今日で……


「そう言えば何号室でしたっけ? 聞いてませんよね」

「あ~5階の503です」


 この後、メールアドレスを交換した。

 それぞれの事情もあって、一応家に戻ることにしました。


 40分くらい経ったでしょうか。

 美板さんから一通のメールが届きました。


内容は……



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