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【第12話】故郷の地へ

突然の事!父親の話しをしたところ田舎に帰る事になった主人公の剛。美板家の女性を引き連れて?引き連れられて?向かいます青森へ!

 空港に向かう車の中です。

 いつもこんな車に乗っているのか……

 見た目もう金持ちじゃないか!

 そもそも、こんな車しか乗らないのでしょう。


 でも、彩恵は軽自動車に乗っているけど……

 特に親子の仲が悪い訳ではなさそうです。


「どうかしまして?」

「いえ……何でもありません。あっ! そう言えばっ……!?」


 こんな時に電話!?


「誰だよ!? すみません。出ます」


 兄貴だよ……

 タイミング悪いな全く、電源切っておけばよかったよ。


「はい。 どうしたんだよ兄さん?」

「おい! お前の彼女だけど、大変なお嬢さんじゃないのか?」


「あぁ……。そのようだね。今、家族みんなで車に乗っているんだけどね」


 兄貴の驚いている顔が目に浮かぶ。


「どういう事だ!? さっぱりつかめないんだが?」

「まぁ~、いろいろとあって青森に……父さんに会いに行くところなんだ」


「はぁ~!? どうして?」


 混乱しているのかな?

 無理も無いか


「貸しなさい!」

「えっ!? あっ……はい」


 美板母の出した手に、なぜか逆らえませんでした。


「もしもしっ!! 正義さんの息子さん?」


 なんか堂々としている。

 それから、兄貴との会話は数分続きました。


「はい。どうぞ」


 携帯を返してもらい再び兄貴との会話


「おっ、おい大丈夫か? 本当に母さんの知り合いか?」

「そうらしいんだけど……」


「お前に任せた! くれぐれも粗相のないようにな!」

「兄さ……あっ」


 ……まったく

 掛けてきたくせに、一方的に切られてしまった。


 少しせき込んでいる彩恵……

 具合が悪いのかな?


「大丈夫? 彩恵さん」

「えぇ。大丈夫です。けほっ……大丈夫です」


「心配だよ! あ!! そうそう、これ!」


 私は、先日作ったフォト・ブックをカバンから取り出した。


「これ上野に行った時の写真なんだけど、結構手頃に作れるんだ」


 この人達の結構手頃っていくらだ?

 くだらない事を考えてしまった。


「ちょっと貸して下さる!」

「あっ!! 莉彩りさ!!」 


「プロから言わせてもらいます」


 プロ?

 何の?

 横取りする?

 失礼か……


「莉彩は、プロのカメラマンなの」


 プロカメラマンなんだ……!!


「思い出した! 何年か前にお嬢様カメラマン誕生という記事を雑誌で読んだ。奇跡の才能だとか……」

「今までは、カメラや写真などには興味は無かったのですよ」 


「どれどれ、わたくしにも見せて下さいな」


 早く彼女にも見てあげたいのだが……


「写真の事はよく分かりませんが、良い笑顔ですこと彩恵さん。ご覧なさい」


 ようやく彼女の手に渡りました。


「くすっ! ハシビロコウの視線がすごいカメラ目線ですね」

「スゴイよね! それと撮ってもらったこ……」


 この時、ハッと二人の視線に気付きました。


「仲がよろしいのね」

「彩恵姉様の笑顔は癒されます」


「間もなく空港です」


 空港に到着して、実家に電話をしたところ弟が出ました。


「兄貴から聞いたんだけど本当か? すごい金持ちが来るって?」

「早いな~兄貴。本当だ! じゃあ、母さんにも連絡はいってるな」


 とにかく、今日行く事を伝えました。


「ここから飛行機ですよね」

「剛さん……。あの~」


 やっぱりファーストクラスなんだろうなと思いました。

 少し、わくわくしています。


 !!??


「チャーター? 自家用機!? なに? マジか?」


 テレビでたまに見る、あこがれの機体です。

 翼の先がちょっと斜めになってる、あのジェット機です。

 常識じゃ考えられない事です。

 良いのだろうか乗っても……?


「参りましょう!」

「はい! よろこんで!」


 私は、どっかの居酒屋の店員か?


「おおぉぉ~!」

「剛さんはもう~」


 感動しています!

 40にもなって、すごく感動しています!

 これは、年齢なんて関係ないです。


「あら? 飛行機は初めて?」

「はい! 初めてです? あっ、いえ! こういうのは……」


 近くに普通の旅客機が見えます。

 こちらがどう見えているのでしょうか?

 この優越感?

 なんか良いですね。


 空港を飛び立ってからすぐの事です。


「さっきの、もう一度見せて下さる」


 フォト・ブックの事かな?

 何か気になる所でもあったのかな?


「どうぞ」

「この鳥のどこがよろしいの? あなた達は?」


 いきなり、そう来ましたか!?


「それはですね。どうですか? この鋭い目つきカッコイイじゃないですか。……ねぇ彩恵さん」

「そうですね~。それに何かこう憎めない……ねぇ剛さん。それとっ」


「もう、結構です」


 何か気に障ったのかな?

 でも心なしか笑っている?


「彩恵姉様、良かったですね」

「えっ? ありがとう」


 にしても乗り慣れているというのか、私だけか浮かれているのは?

 まぁ、庶民って事ですよ。

 当然のことテンションが上がります。


 私達を乗せた機体は、雪のチラつく青森空港に着陸しました。

 ここから、黒石の実家に向かうのだが……

 私は、もう一度電話を掛けました。

 出たのは弟でした。


「今、空港に着いたからこれから向かうよ」

「えっ!? もう着いた? 兄さん冗談だろ!?」


 まぁ、普通にしても、その日の内に来れない訳ではないのだけれど……


「あ~、母さん達ならさっき帰って来たよ。代わろうか?」

「頼むよ」


 実は、今日は父親が退院する日だったのです。


 入院をしたというのは……

 一ヶ月前、弟と家の裏のりんご園で枝の剪定をしていた。

 そこで、弟が父の異変に気付いて救急車を呼んだらしいのだ。

 幸いにも軽度の心筋梗塞と診断されたのだが、思いのほか今日の退院まで時間が掛かった。


「あぁ……、出ますか? 美板さん」


 美板母は、手を前に出して断った。

 どうしたんだろう?


 母さんも驚いていたけど、一応連絡はできた。

 さぁ、家に向かうのだけど……!?


「この車は……!? ハっ! ハマー……って!?」

「何か問題でも? わたくしの趣味です。さぁ、行きましょう」


「はぁ……。分かりました」


 本当に母さんの知り合いなんだろうか?

 何だか、私の常識範囲を大きく超えて来ています。

 もう、とっくに超えてますけどね。


 実家は、市内より離れた所にあって、東北自動車道が近くを通っている。


「庭に入れるかな~? 雪あるからな~結構」


 今年の正月に来た時は、こんな事は気にもしなかった。

 何も心配する事はありませんでした。

 キレイに除雪されていました。

 庭に止めたのを改めて見ると、やっぱりデカい車だと思いました。


「よしこ……ちゃん?」

「……あの日以来ね」


「母さん……ただいま」


 何だか、複雑な感じです。

 あの日とは……?


「ずい分大きな車だ事。雪かきして良かったわ」

「ごめんなさい。押し掛けちゃって」


「どうした騒がしいけど? ……麻木あさぎ!?」


 父さんが出て来た。


「……正義さん! お久しぶりです」

「何年ぶりかな~。……寒いから、話しは中に入ってからにしようか」


 何だか、美板母が少女の様に見えました。

 こんな一面があるなんて意外です。


「お身体からだの方は、どうですの?」

「大丈夫。心配ありがとう」


「あ……いぇ……。心配するのは当然の事ですわ」


 私達は、今までの美板母と別の人物を見ている様な感じにおちいっています。

 特に、彩恵と妹さんは「ふぅ~ん」と言う顔をしていました。


「でも、安心しました」

「本当に何年ぶりだろう? 結構経つだろう」


「恥ずかしいですわ。……わたくしは、強くなりました」


 何があったのかな?

 何となく想像がつくけど……

 母さんは、静かに見守っています。


「みっちゃん! 知っていますの? この二人付き合っているそうなの」

「剛……。そうなの?」


「そうだけど……」


 おお~!

 何だ、急に振って来たぞ!


そどの車、なんぼでっけぇばぁ」

 (外の車、すごく大きいな~)


 弟が、入ってきた。


「あっ! いらっしゃい」

「こんにちわ~」


 どうした?

 妹さん?

 みんなの視線が妹に向けられた。


「へぇ~、この人が彼女さん? 美人だな」


 彩恵が、ほほを赤らめて照れています。


「どうした? 何か顔に……すすか?」

「つでら? 最近、窯調子悪くてな」


「つでら???」


 妹さんが、突っ込みを入れました。


「付いてる? って意味です」


 私は、フォローを入れました。


「くすっ! 私も分かりませんでした。つでらって言う怪獣の名前かと思いました」


 彩恵もなかなか面白い事を言うな~

 確かに怪獣にいそうかな?


「弟さん、窯って……陶芸のですか?」

「なもなも、パンやぐ窯だ!」


「なもなも??」


 妹さん、ハマってしまったか?


「いやいやとか違う違うって意味です」

「くすっ!! 剛さん、通訳の人みたいですね」


 笑いが止まらない彩恵でありました。


「パン作りするんですか? 工房見てみたいです。良いですか?」


 積極的だな妹さん。


「良いよっ!」

「お母様も、お姉さまも行きません?」


「あなた達だけで行って来なさい」


 募る話しもあるって事かな?

 私達は、弟の工房に向かいました。

 すると、中に入るや否や……


「お父様!? これお父様ですわよ! どうして?」

「何年か前に、偶然こさ来て泊まっていったあの人か?」


「ここにと言う意味です」


 つい条件反射で……


「すてきな工房です事! お店ではなさそうですわね」

「あ~趣味趣味。土日しかやらねんだ」


「作ったパンは、どうされるのですか?」

「近所にあげるんだ。趣味だがらな」


 私も食べた事がある。

 ここを店にすれば良いのにと思うくらいだ。


「食べてみたいです!」

「あげだどごは、めぇめぇって言ってるな」

 

山羊やぎですか?」


 ひと通りメモしてあげたいですね。

 方言って、少しずつ違ったりすからきりが無いかもしれないけど。 

 ……こっちを見ています。


「はいはい。この場合は、山羊ではありません。美味しい美味しいと言う意味になります」 

「なるほど~面白いですね」


 妙に感心する妹さん。


「よしっ! 今がらつくるかぁ!? 今日は、特別だ」

「はい! ……」


「カメラあるんでしょ! 私が撮りますよ。もし良ければですが?」


 弟の指導で、パン作りが始まりました。

 以外にも弟は、教えるのが上手く感心しました。

 私は、一生懸命にカメラマンを務めました。

 彩恵……可愛いです。


「なぁ~店にすれば良いんじゃないのか?」

「兄さん、趣味が良いんだよ」


 分からないでもないが……

 やっぱり何かもったいない気がします。

 始めた時間が少し遅かったので、日が暮れてしまいました。


「めぇ! ……こんな感じですか? 使い方は?」

「良いよ。これを応用すると、これなんぼめばぁとか。……普通に美味しいって言った方が良いかもしれないけどね」


「くすくす剛さん面白いです。やっぱり」


 今日は、家に泊まる事にしました。


 朝……。

 私は、彩恵に見てもらいたいものがあって、外に連れ出しました。


「向こうでも見ていたかもしれないけど、青い世界! 一緒に見たかったんだ」

「何だか、幻想的ですね」


「ほら、雪の上に乗っても平気だよ!」


 私は、彩恵の手をつかんで、子供に戻ったかの様にはしゃいでしまいました。


 家から離れた雪原に二人きり……

 彩恵の唇も、この気温でキュッと冷えていました。


「そろそ戻ろうか」

「もう少しだけ……ねっ」



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