表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/16

【第10話】走り出した私!

 二人が出会って初めてのデート……だった。しかし、彼女の体調が悪くなり早々に切り上げる事となった動物園。なんとかマンションに戻って来たのではあるが、数時間後に現れた巨大な壁に戸惑う剛。

 彩恵は、静かに眠っています。

 薬が効いているのでしょう。

 私は、彼女の寝顔をずっと見ていました。


 …………。


「はっ!? 何時?」


 いつの間にか眠っていた様です。


「!?」


 首筋に汗がにじんでいます。

 これは大変だ!

 そう言えば……


「こっちのタオルで汗を拭いて下さいね。何枚か用意しておきました」


 用意してあったタオルで、首筋の汗をぬぐいました。

 そして、こっちのバスタオルには……


「確か、着替えを挟んでいると言っていた。はっ!? 着替え!」


 私が着替えを行う事になる?

 緊張して来ました。

 すごく緊張して来ました!


「……つよしさん」 

「あっ!? いや……、これは着替えを…………。確認を」


 その時、静かな部屋に響き渡る呼び鈴の音!


 「誰だろう!?」


 出るべきなのか?

 留守で流すか?

 取りあえずモニターで確認しました。


 女性?

 どうするか?


「はい……」


 意を決して出てみました。


「彩恵姉さま! 大丈夫ですか?」

 

 彩恵姉さま!?

 妹さんか?

 私は、玄関のドアを開けました。


「母です!」


 お母さん!?

 モニターには、一人しか写っていなかったはず。


 とっ、とりあえず挨拶か?


「初めまして、山……」

「彩恵さんはどこですの?」


「そこの部屋です……」


 なんという威圧感?

 お母さんと妹さんは、彼女の寝ている部屋に入って行きました。

 私も入ろうとしました……


「彩恵さん……まぁ! 汗びっしょりじゃないの!」 

「着替えましょう! 彩恵姉さま」


 着替えは、二人に任せる事にしました。

 私は、リビングのソファーに座って待つ事にしました。

 なにか気まずい……


 二人が部屋から出て来ました。


「あら? あなた、まだいらしたの?」

「へ? あ……いや、私は……彩恵さ」


「お引き取りください。ここは、莉彩りささんと二人で大丈夫です」


 私は、追い出されるかの様に外に出されました。

 仕方なく5階の自分の所に戻る事にしました。


 何とも情けない……

 何も出来なかった……

 自分の事を何も話せなかった……


 一人の部屋は、とても静かでさみしい。

 今までは、一人でも平気だったのに……


「何なんだ? あの母親は……」


 でも、再び彼女の所に乗り込む気にはなりませんでした。

 情けない……

 そう思いながらも彼女の事は、すごく気になっています。


 私は、動物園で撮ったデジカメの写真を再生しました。

 それに写っている楽しげな彼女の笑顔は、とても光っていました。


 もどかしい感情が、また私を取り囲む……


「メールしてみようかな?」


 あの母親の手に、彼女のスマホが……

 いや、妹の手に落ちているのかも知れない


「あぁ……。どうすればいいのか?」


 何を考えているいるんだ?

 二人は、彼女の家族なんだ。

 極悪人ではない。


 あれこれ考えても仕方ない。

 今は、あの二人に任せるしかない。


「写真にして来ようかな……」


 時刻は、まだ18時32分

 私は、いつも利用しているカメラ屋に向かう事にしました。

 その店は、大きなショッピングモールの中にあります。


 彼女の部屋は、明かりが点いています。

 まだ、二人は居るのでしょう。


 いつものショッピングモール、いつもの店……


「へぇ~。こんなのも出来るんだ~?」


 いつもは、普通の大きさのL判しか目に入らなかった。

 よく見ると色々なサービスをしているのに気付いた。 

 私は、見本を手に店員に聞いてみた。


「本当に30分くらいで、こんな写真集みたいなのが出来るの?」

「お客様の混み具合にもよりますけど、今でしたら大丈夫ですよ」


 初めての試み……

 一冊作ってみる事にしました。

 ひと通り入力を終え、出来上がるまでの時間を書店でつぶす事にしました。

 カメラ雑誌を見ていると、なんとも新しいカメラが欲しくなってきた。


「まだ、時間あるな~」


 何だか、時間の流れが遅い気がしてしょうがない。

 仕方なく店内をぶらぶら歩く事にしました。


「こんな時間でも結構、人がいるんだな~」


 クレーンゲーム、カードゲーム、メダルゲームなどしている人達

 両替をして、どんなのがあるか見て回った。


「おっ! これやってみよう!」


 今、テレビで人気のキャラクターらしいけど、なんか周りからの視線を感じる!

 変な緊張感!


「あっ……」


 失敗した。

 まぁ~、こんなもんである。

 私が、そこを離れるとすかさず子供を連れた家族がプレイを始めた。

 昔は、結構得意だった……

 そうココロの中で思いつつ次なる標的は!

 期間限定で、一回100円!


「これだ!」


 特大のぬいぐるみ、これも何かのキャラクターなのだろう。

 早速やってみた!


「うわっ!! あと少し?」


 見ると、あと一息っぽい感じなのだけれど、これがまた取れない。

 ちょっと意地になってるのかもしれない……


「これが最後!」


 キセキは起きました!

 見事に特大のぬいぐるみをゲットしました。


「あれ? 山美さん」


 横から女性の声がしました。

 見ると、会社の事務をしている佐々木さんでした。


「えっ!? これ取ったんですか?」

「結構使ったんだけどね……」


 私は、急に照れくさくなった。

 すぐ取ったぬいぐるみを袋に入れました。


「この間の彼女さんは? きれいな人でしたね」

「あぁ……。今日は、居ないんだ。今は、写真が出来るまでの暇つぶしってわけ」


「どんな写真ですか? 山美さん撮るの上手いって有名ですから見てみたいです。ダメですか?」


 少し戸惑いました。


「いいけど……。そろそろ出来上がる時間だ」


 私は、佐々木さんとカメラ屋に向かった。


「こんなの出来るんですね!」

「そうそう、なんか良いよね。オレもそう思った」


「ちょっとお茶しません? ゆっくり見たいです」


 成り行き上……


「いらっしゃいませ! こちらへどうぞ」


 普通に席に通された。

 当たり前か、ただの客だからね。


「ご注文がお決まりになりましたら、お呼び下さい」


「山美さんは、何にします? 夕飯になっちゃいますね」

「そうだね。ははは……」


 いいんだろうか?

 別にやましい事をしている訳でないから大丈夫なんだけど……

 取りあえず、注文した。


「さっきの見せて下さい。……良いですね」

「なんか照れるな~」


「へぇ~、やっぱりきれいな女性ひとですね」


 これは、参ったな……

 照れているのを隠しきれない。


「これと、これは撮ってもらったんだけどね」

「山美さん! お願いがあります」


 なんだか急に改まってどうしたのだろう?


「えっ!? 何? オレに出来る事?」

「私、結婚するんです。来月……」


 最近、同じ様な話しを聞いたのを思い出しました。

 私の周りの結婚事情が妙に活発です。


「おめでとう。でも、こんな所でオレなんかといていいの?」

「問題ないです。お願いと言うのは、式のカメラマンをお願いしたいのです」


「カメラマン?」

「そうです。カメラマンです。色々ありまして……」


 何だろう色々というのは?

 まあ、余計なせんさくはしない方がいいかな……


「良いけど。……で、何時いつなの?」

「来月の12日の土曜日です。 午後3時からなんですけど大丈夫ですか?」


「12日……あれ?」


 確か、その日は……


「どうかしたんですか? 何か予定が入っているとか?」

「まぁ……。 午前中だから平気だと思う。大丈夫! 引き受けるよ」


 ちょっと、安易過ぎたか……

 佐々木さんから、具体的な詳しい話しを聞いた。


「じゃあ、よろしくお願いします」


 佐々木さんと別れて、特に用事も無かったので、私はマンションに戻る事にしました。

 帰りの車の中で、来月の予定が気になっていました。

 マンションに戻り、すぐチェックしました。


「確か、カレンダーに……」


 思った通り授賞式の日でした。


「ん!? メールが来ている」


 彩恵かのじょからでした。

 しかし、その内容は……


「これから、実家に帰ります。会社もしばらく休職します。母達が失礼な事をして申し訳ありませんでした」


 ちょうど佐々木さんの結婚式のカメラマンを引き受けたあたりだと思います。


「なんて事だ!」


 私は、3階の彩恵の所に向かいました。

 呼び鈴を押してみました……


「居ないのか? メールは、本当だったのか」


 電話を掛けてみましたが通じませんでした。

 メールを送ってみました。

 1時間、2時間経っても返事は返って来ませんでした。


「実家の住所なんて知らない……。畜生~!」


 ベランダから星の無い夜の空を見上げると、ゆっくり雪が舞い始めていました。


「彩恵……」


 名前をつぶやいても現実は何も変わりません。 

 悔しい事に……


 次の日、あの病院に行ってみよる事にしました。

 叔父さんに聞いてみようと……

 会社には、急用で午後から出勤する事を伝えました。


「あの~、こちらに美板彩恵さんの叔父さんられると思うのですが?」

「叔父さん……。あぁ、院長の事ですね。少々お待ちください。失礼ですがお名前は?」


 院長先生だったとは……

 私は、何かもの凄く大きな物に挑んでいる気がしました。


「あぁ、君か。さえちゃんの実家? 私の実家でもあるけどね」


 しまった~!

 何て私は、うかつなのでしょうか……


「へぇ~、姉さんがねぇ。言っておくが姉さんは、とてつもなく怖いぞ! 相手にする覚悟はあるかね?」


 どんなお姉さまなのですか~~!?

 私は、心の中で大声で叫びました。


「覚悟と言うか、このままだと納得出来ません! 話しをしたいと思いまして……」

「おもしろいね君は! 山美君と言ったよね。ほら、行って来なさい!」


 渡されたのは、住所の書いたメモでした。


「いいんですか?」 

「おかしな事を言う人だな。何の為に、ここに来たのかな?」


「それは……。ありがとうございます!」


 メモを手に病院を後にしました。

 だが、私にも事情が……

 すぐにでも行きたい!


 考えたら、叔父さんは後押ししてくれたんだよ。

 何の反対もしなかったけども味方なのか?


 私は、決めました!

 ここに書かれている住所に行こうと思います。


 鳥取に!!



第11話へ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ