マトリョーシカな世界
海底の宮古アトランティスに僕は立つ。
上を見上げれば空があり、下を見ればちゃんと地面がある。
煌めく空に惹かれるように、僕は地面を強く蹴る。
砂埃が巻き起こった地面を後目に僕は空へと飛んでいく。
だんだんと近づいてくる空に手を伸ばす。
そして、次の瞬間僕の手は、空を貫いた。
と、ほぼ同時に僕の頭も空を通り抜ける。
まぶしい光に手をかざし、瞑っていた眼を開ける。
すると、そこには今通り抜けてきたはずの空が青々と広がっていた。
―空の向こうに空が広がっていた…
驚きと興奮に呼吸が速くなる。
目の前の青から目が離せない。
ずっとそうしていると、空に吸い込まれる感覚が僕を襲う。
そんな浮遊感覚に身をゆだねながら、僕は考える。
―きっと、あの空の向こうにも空があって、さらにその向こうにも新たな空があるのだろう
世界の神秘に心が躍る。
目の前の神秘に感動を覚える。
いくつもの空に想いを馳せる。
「まるで、マトリョーシカのようだ。」
空の中に空。そのまた中に空。そして、そのまたその中に空。空。空…
そんな中の小さな僕も、またひとつの小さな世界なのかもしれない。
世界の広さに胸を躍らせ、僕はまた空の中の世界へと帰っていく。