41.銀灰色の血姫
《銀灰色の血姫》
ライカに与えられた二つ名はそんなものだった。
ついでに、ジルコニア側から公式発表があって、ライカの名と二つ名、そして獲得した実績が全世界に知れ渡った。
…かつて、数年前に、『初の実績獲得とそのプレイヤー』の発表があって以降、久しぶりの公式発表にジルコニア中が驚いた。
『実績獲得』自体は割とよくある話。
ただ、『初の実績獲得』となると話が変わってくる。
ジルコニアでは『初の実績獲得』を行った者を『イニティウム』と呼ぶ。
彼ら彼女らは唯一の存在として『公式から認められた存在』になるため、他のプレイヤーなんかより一段階上の存在として扱われる。
……まぁ、当の本人は『公式発表』の存在すら知らない上に、《銀灰色の血姫》に秘められた意味をあんまり理解していないのだけれど。
そう。銀灰色とはライカの現実主義的側面と、髪色を噛ませた表現で、血姫というのは虐殺を楽しむ少女を表す表現である。
ベルカ…美鈴は違った。
ライカが一歩先に上へ行ってしまって、自分の怠慢を悔いた。
…『実績』を意識して生きてこなかったことをベルカは怠慢だと考えた。
なので、透華が寝ている時間も少しだけ長くジルコニアで実績解除のための特訓をし始めた。
ベルカも『大和エリア』では名の知れたプレイヤーで、その実力はかなりのもの。
なんなら、バグを全力で使って戦うライカと互角に渡り合える可能性すら秘めている。
そんな彼女は、大きな赤と金のフードを被って、ジルコニア内の様々なエリアを歩き、そして荒らしを駆除して回ることにした。
…ベルカは、ライカほど暴力に酔える人間では無い。
理性的で、明るく、太陽のように周りの人間の心を晴らしてくれる。
ただ、彼女はその分、責任感が強く、人の幸せを壊す人間には残忍になれる。
「……あなた達を懲らしめに来ました」
冷たく、凛とした声。
場所はローマエリアの、商店街の裏道。
「ああん?なんだ?」
そう言い振り向いた男たちはマスケット銃やサーベルなんかで武装した荒らしだった。
「簡単には死ねないよう調整するから」
ベルカは氷で剣を作って、即座に男の方へ飛び込んだ。
そして腕と足を素早く斬った。
続けて他の男たちもどんどん四肢を切断していく。
ベルカは彼らから奪ったサーベルと共に、彼らの胴体を荷車に載せて輸送する。
そして裏道から出て、街灯の木の柱に彼らをサーベルで突き刺し、晒し者にした。
プラカードにはこう書いてある。
『私は人の幸せを壊しました』
周りの人達はそれを見て、ニヤッと笑った。
彼らに色々な嫌がらせを受けていたからだ。
自分の今に激しい羞恥心を感じた男達は、ログアウトした。
きっと、もうVRを起動することはないだろう。
…ベルカは口角を上げた。




