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不完全燃焼

作者: 水樹雫
掲載日:2026/08/31


 出会いの無い別れなどあるのだろうか? そもそも別れとは、出会いがあってのものではないのか?

 はー、なんでそんな事を考えているのかって? それは私が出会いの無い別れを経験したからよ。



 時は遡ること三日前────


「お見合い!?」


「そ、家は少し離れるけど、同じ町内で代々続く農家の次男坊。歳はあんたの三個上だね」


 残業帰りの疲れた頭に、母がいらぬ情報を詰めてくる。


「ちょっと待ってよ、あたしに彼氏いるの知ってるよね」


「500キロ離れた土地の長男坊なんて知らん。あんたはうちの近くで分家になりなさい!」


 そう言って母は話を切った。うちは古くから続く農家だ。とはいえ私は次女、家を継ぐのは姉だし、どこに嫁ごうが構わない身なのだが、彼氏が遠方の長男とわかってからは母の妨害が酷い。


 彼を家に連れてきても、そそくさといなくなる。聞こえているはずの挨拶も、聞こえないふりで立ち去る。完全無視の嫌がらせだ。


 長男に嫁いだ母がこの家で苦労してきた事も知っているし、心配してくれるのもありがたい。だけど、だけどね、結婚となると話は別。今回のお見合いはきっぱりと断らせていただきます!


 この時の私は、三日後に自分が()()()()()になるとは思っていなかった。



* * *


 日曜の朝、台所にやってきた私に母が言った。


「あの話、向こうから断ってきたから、無くなったよ」


 は? 何すか? その「今朝は晴れだよ」みたいなノリは! そもそもそちらから来たお話なんじゃないんですかー!


 なぜだろう、怒りがわくのはなぜだろう。会ってもいないのに? はぁ? 断ると? 向こうから断ってきただとー? はぁ! 何が不服なの? ねぇ?


 容姿? 性格? 学歴? んん?

 頭の中がぐるぐるでぐちゃぐちゃだ。


 いやいやいや、こっちも断るつもりだったし、同じくらいに失礼なことを言ってる訳なんだけどもね。うんうん。


 あちらも彼女さんだったり、お見合いが嫌だったりしたのでしょうけれど。そうそう。

 私も断るつもりだったし、どのみち結果は同じだから万々歳なんだけどね!!



 ……会ってもいないのにフラれた感じがするのは、なぜなのだろう。


 完



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