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閑職のエリアル  作者: stenn


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飲み会

罰としてもう一話上げときます(>人<)

 ――聞いたか――また西区でテロがあったんだってよ。


 まじか。物騒だなオイ。犯人はやっぱり魔法使い……いや魔法士なのか? こないだの奴は確かそうだったよな。どこかのボンボンだったって。名前は出なかったが。


 わからん。警備兵が今調べてるらしいが――そうなると厄介じゃねぇか?


 魔法使いや魔法士は高位貴族と王族しかいないのだから――。




 ……うわ。関わりたくないなぁ。首都警護兵頑張れ。


 見たこともない官僚仲間に声援を心の中で送りつつ私は手元にあった麦芽酒をちびちびと飲んでいた。


 連れてこられたのは夜の酒場。酒場というか、がつっりした食べ物も出てくるのでご飯と言えばご飯なのだろうか。


 私たちを含む――結局五名ほどになった――お客さんでごった返す店内は少々騒がしい。仕切り解かない為、酔っ払い同士が意気投合して飲み交わしていたりもする。


 まぁ。見慣れた光景だけれども。


 ポテトフライを口元に放り込んで誘ってくれたフィジーさんを探すとカウンターで見知らぬ女性とお話していた。こちらをチラチラ見るのは誘った手前申し訳なく思っているのかも知れない。


 気にしなくていいのに。と手を振れば苦虫を潰したような顔になったのは何故だろう。


「ぶはぁ。今日も酒がうめぇなぁ。おい」


 そして私の横には空の瓶に囲まれた酔っ払いが一人。『うぃー。おねーちゃん、もう一杯』なんて一般男性酔っ払いモブみたいなムーブをしているが、立派な女性である。三十代前半。独身。一応これでも私たちの上司――権限が持たされているとは言っていない――であった。ついでに毎日中央に出勤しお店へと顔を出している。


 リアム・ニール。通称店長さんだ。その店長さんは軽くしゃくり上げながら机に突っ伏している。


 うーん。これはストレスが限界突破。


「店長さんっ。あのぅ、いい加減にした方が良くないですか?」


「んー。酒を飲まないとやってられないんだよぅ。ほらほら全然進んでねぇじゃん。お前も飲みな。ったく。あんの、くそ上司。だいたいよ、だいたい――」


 ぐずぐずと何か言っているが聞き取れないが、ほぼ愚痴のようだ。


 本日ずっと愚痴を聞いてここでも愚痴聞いてない? 大丈夫かな。私。


 取り合えず店長さんのその顔はダメな気がする。店長さんの涎を拭こうとしてゆっくりと腰を上げのと同時にのろのろと店長さんが顔を上げた。ぼんやりした顔でゆるりと私に視線を向けて、肩越しに視線を投げた。


「あ―。お前はいいの? あれ」


「あれ――?」


 視線を向けると見慣れた光景が広がっている。


 困り切った顔で『どうしよう』とオロオロしているザイールと周りを囲む女子。私が見知った顔はいないようで偶々この場に居合わせた女子なのだろう。


 こわい。睨み合っている姿が怖い。あの輪に入る自信はないけれども、ザイールが捨てられた子犬のようにこちらを見ている。


 ……。同時に周りにいる女子にも睨まれる私。


 ま、巻き込まないでほしいけど……。けれども。


 あー。と天を仰ぐ。いつもこうよ。子供ではないのだから自分で何とかしてほしいのですけど?


 ゆらりと立ち上がりながら息を付いていた。向こうの攻撃態勢……怖いんですけど。なんで『あの女狐はなに?』みたいな顔で見られても。


「付き合ってんだろ?」


 まさか。と小さく声を上げてしまう。


 私と先輩はただの腐れ縁。偶々先輩が私に懐いただけである。年上が懐くと言いう表現は少しおかしい気もするけれども。


 兎も角そこに恋愛感情は皆無。親友というか、家族みたいな間柄と自負している。兄妹? そんな感じかなぁ。実家にいる姉とは少し違う気がするけれども。それは性別の違いだけだろうと思う。


 まぁ、下手に恋愛関係になって刺されそうだからそんなものにはなりたくない。


「なら、助けなくても良くね? アイツも女に囲まれて内心楽しいだろ?」


 腰を浮かせた私に気付いたのか、店長さんが制止する。私は軽く眉を寄せた。


「いや、先輩は昔色々あったらしくて少し女性が苦手というか、だから助けないと可哀相だし」


 出会ったときは既に手袋をしていたが先輩が手袋をどんな時でも外さないのは、直に『人』に触れられると拒否反応を起こしてしまうから、と聞いた。外さなければ大丈夫と言われればそうなのだけれども。


 その前に――私が助けるのは当然だと思っていた自分自身がいる。


「アイツは、お姫さんかよ。アタシから見たらアレは腹黒の魔王にしか見えんがね。あれなら、フィジーの方がずっとマシだと思うけどなぁ」


「なぜにフィジーさんが?」


 何故に『うっわ』と言われているんだろうか。私。


「ヘタレの事は良いんだよ。ほら、行くなら行ってやれ。そろそろ泣くぞアイツ。争奪戦に男まで加わったら楽しい酒が飲めない。殴り合いの喧嘩なんて目が当てられんだろ」


 しっしっと手で追い払われてしまった。丁度戻ってきたフィジーさんが『どこに』との戸惑った声を出していたが店長さんに首根っこを掴まれて強引に酒を飲まされている。上司なので無下にも出来ず成すがまま。近くにいた同僚が何かに気付いたのんはやし立てている。こっらも酔っ払いであったので止めるのは難しいだろうなぁ。


 ……哀れな。


 私はフィジーさんの検討を祈りつつ一歩、また一歩、敵陣へと足を踏み出していた。


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