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6 退職

今朝、起きるまで心療内科に行くつもりでいた。

しかし、起きると同時に今するべきことは病院に行くことではないと内側から強い促しを感じていた。


やはり、自分の直感を信じたい。

それは私の周りの騒音レベルを今すぐ下げることだ。


今すぐにだ。

これが今私がすべきことだ。

静かな確信があった。


即断した。

実行だ。

迷っている時間はいらない。


スマホを握る。

気まずさを振り切るんだ!

会社に電話して上司に繋いでもらった。


次の仕事のことなど気にしている場合じゃない。

何も隠す必要などない。


次の仕事を探す時がくれば、その時は前職はメンタルの問題で退職しました。

そう言えばいい。


それだけのことだ。

弾かれてしまうならそれでいい。


スマホを手にする。

なんて言おうかなどは考えずに上司につないでもらった。


「 もしもし、先日心療内科を受診してきました。

適応障害だと診断され、仕事はできない状態です。」


それだけ一気に話した。

そのあと声が詰まってしまい、その雰囲気が上司にも伝わったことがはっきりわかった。


「退職する事になると思います。」

絞り出すようにやっとその言葉を言った。


上司は優しく

「わかった。」

とだけ言ってくれた。


口調から私の状況は誰かから伝わっているんだとすぐにわかった。

社会は私を必要としていないと感じてしまう。


「失礼します」

とだけ言ってスマホを切り、ベッドに投げた。


惨めさが押し寄せてきて、涙が溢れてくる。

体育座りをしたまま膝を抱えて気の済むまで思いっきり泣いた。


短い会話だったが、それでも伝えなければならないことを伝えることが出来たので、これでいいと自分を納得させた。


生活費の事と支払いのことが気になるが、今すべきことは、騒音レベルを下げることだ。

すべてはそれからだ。


今は側溝に足を踏み入れてしまい、骨折と出血で動けない状態なんだ。

出血を止め治療をして休まなければどうしようもない。


(騒音レベルを下げる)


この言葉が頭の中に深く浸透してきていた。

確かにこれは今の自分にとって1番重要なことだと思う。


これ以上、脳内に何かを流し込んではいけない。


過電流で脳も心も焼き切れてしまう。

こうしている間にも電流は流れ続けている。


自分の中に入ってくるいろんな情報が飛び込んでこないように手を打たなければ、このままでは本当に自分はダメになってしまうんだ。


情報過多と心配事が内側から私を壊している。今ははっきり自覚出来る。


何から手をつけよう?

いつものノートに箇条書きで書いてみた。


1すぐに退職することを診断書を持って正式に会社に伝える。


2スマホとタブレットを触らない。


3心療内科に通院する。


4医師を信頼して必要な薬は副作用を恐れずちゃんと飲む。


5市役所に行って失業手当やこんな病気に支援制度があるか確認しにいく。


6両親に今の私の状態を正直に話しておく。


思うままに書いてみた。


迷っている時間はない。

今にもブレーカーが落ちて気を失ってしまい、二度と正常な状態に戻れない気がしていた。


次の朝、10時ちょうどに迷わず会社に2度目の電話をした。

1度目は退職の意向は伝えたが、まだ正式には言ってない。

今日は退職することを明確に伝えるんだ。


私は今、力を振りしぼってやるべきことをやっているんだから、敗者なんかではない。

自分に言い聞かせてスマホを手にした。


受話器の向こうで上司が言う。

「どうだ?調子は?」


「すみません。やっぱり仕事は辞めます。

近いうち病院の診断書を持ってお伺いします。

今までありがとうございました。」


「...わかった。ゆっくり休んで元気になれよ...。」


これで仕事の件はもう心配しなくていい。

間髪入れずに、その後すぐ母親に電話した。


「お母さん、あのね...

...仕事を辞めました。

詳しいことはまた今度話すね。

心配いらないから。


少し休めばまた新しい仕事を見つけて頑張るから。

とにかく心配しないでね。


仕事が忙しすぎて、心の休息が必要だとお医者さんに言われたの。


電話は定期的に必ずするから私を信じて騒がないでね。」


母は「うん...うん...」

と頷いていた。

母の困惑する様子が伝わってきたが、それ以上は何も聞かないでくれた。


「また連絡するから...」

また涙声になってしまった。


母との会話が終わって、しばらくスマホを眺めていると、ちゃんと話せたと思って安心したのかわからないが、また声を出して泣いてしまった。

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― 新着の感想 ―
★付けました
xから来ました。 難しいことを書いておられますね。 心の底から追い詰められ、限界の淵で自分自身と真正面から向き合う主人公の一挙手一投足に、胸が締め付けられるような切実さを感じました。何が正解なのか、何…
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