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5 心療内科

明日もう一度、心療内科に行って私の状況を詳しく話したい。

聞いてもらいたい。

情けないが、聞いてもらうだけで少し楽になりそうな気がする。


このままでは心がもたない。


この状態を知られたら会社の方からやめた方がいいのではと言われそうだ。


翌日早く心療内科の扉を開いた。

医師は今回も優しくしっかり私の話を聞いてくれる。


医師と話すだけでやはり不思議だけど少し気が楽になったような気がする。

私には気が付かない医師の技があるのだろうか?


「夜寝る前の導眠剤と不安でどうしようもない時のお薬を出しておきます」と言ってくれる。


「心配ないですよ。

怖がることはないですよ。

何か気になることがあればいつでも来てください。

少し様子を見させていただきたいので、月に1回程度だけでもいいので通院出来ますか?

様子を聞かせてくださるだけでいいんです」


先生の言葉を聞いてやはり心が軽くなってきた。


しかし、家に帰ってひとりなるとすぐ不安が襲ってくる。


この不安は言葉で表現できそうにない。


体が地面にめり込んで息が苦しくなり、出てこれなくなるような現実離れした感覚だ。


頭ではそんなこと起こるはずがないとわかっているが、そう感じてしまうのだからどうしようもない。


薬を飲もうかと考えたが、どうしても耐えられなくなった時だけにしようと考えていたので飲まずに頑張ってみる。


とにかく会社には連絡しなければいけない。

何て言えばいいのだろう?


下手に言うと仕事を失うことになるかも知れない。

それだけじゃない。


仮に今回退職して、次の仕事が決まりそうになった時、そこで前の会社の退職理由が、バレたりしないだろうかとそんなことまで考えてしまう。


心療内科ではなく、内科を受診したことだけを伝えることにしよう。

話がややこしくなるのは避けたい。


気になっているのは、

やりかけの仕事のことじゃない。


生活費のことだ。

支払いのことだ。


もし、私に十分な貯金でもあれば、どこかでゆっくり心を休められるのに。

そんな余裕があれば、快方に向かっていくことは容易なことのように思えた。


「休むことが一番大切です」と医師に言われたが、横になっても心が休まらない。


お金のことが気になって気持ちが休めない。


なんでも相談して下さいと医師に言われているので、変なプライドを捨てて生活費のことが心配で休めないことを正直に話してみようか?


このままでは本当に正気を失ってしまうかもしれない。

明日はまだ診察日ではないが医師に会ってアドバイスしてもらいたい。

しつこいと思われてもいい。助けてもらいたい。


翌朝、ゆっくり起きて病院に行く準備をしていた。

体もだるく、気が重い。


ふと机の上の本棚にある一冊の本が目にとまった。

ずっと昔、買った本で何気なく開いて読んでみたら、ある文章が目に飛び込んできた。


(できるだけあなたのまわりの騒音レベルを下げるようにせよ)


もう何十年も前に亡くなったアメリカの牧師の書いた本だった。

私がまだ10代の頃何度も読み返していた本だ。


好きな本だったのでずっと本棚の見えるところに置いていた。


私が心を擦り減らして、自分を見失ってしまうほどの状態になったのはこれだと直感した。


自分で処理できないほどの出来事に心を配り頑張ってしまっていた。

そしてそれは正しいことで、自分を成長させることのように感じていたのだ。


しかし、今やっと気がついた。

やるべきことは頑張り続けることではない。


抱えきれない情報と迫ってくる出来事に対して私はいやだ、聞きたくない、したくないと宣言する事だ。


(あなたのまわりの騒音レベルを下げるようにせよ)


昔読んだはずのこの言葉が、私を蘇らせてくれる唯一の解決の道だと心に鋭く突き刺さってきた。

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