第二十九話 圧倒
「!!」
ルーゼは自身を包囲した水の槍の全てを障壁魔法で防ぎ下がる。
が、それを更に追うように水の槍と先程までいなかった幻影魔獣が襲い掛かる。
「チッ。」
水の槍は障壁、幻影魔獣の方は火の魔術で撃ち落とし、間髪入れずに[ 光の矢 ] を十数本一斉に打ち込む。
ダダッ! ドダダダダダッッ!!!!
『ほう・・・、あの男の同胞と言うだけはあるようだ。』
水魔術で障壁を作りルーゼの攻撃を防いだ魔獣はそう言った。
ルーゼは魔獣を睨み付けながら言う。
「・・・・いきなり何をする。」
『我をここに封じたあの男の同胞と言うのならば、生かしては帰せぬ。』
「ロワがだと?どういう事だ?」
この魔獣の言う事を信じるのであれば、かつてロワはこの魔獣をこの地に封じ、その上でルーゼに向けて何かを遺したというのだろう。
(・・・理由が分からない、ロワが何故そんな事をしたのだ?)
『貴様に話すことなどない!話は終わりだ。望みを通したくば、我を圧倒せよ!』
次の瞬間、魔力が込められた大量の水がルーゼを押しつぶさんと迫ってきた。
(まぁいい、そんな事は後回しだ。もしかすると大した理由ではないのかもしれん。)
ルーゼは先程同様、それを障壁魔法で防ぐ。しかし今度は先程と異なり、その障壁の形状を途中で変質させることで水の層に風穴を開ける。
そうして出来た僅かな道を跳び抜け、脱出。視界が開けるが否や魔獣目掛けて、
[ スティーム・エスクルリープ ]
そう詠唱した瞬間。巨大な一刃の風が魔獣を襲う。
『甘い』
魔獣は先程同様に水の障壁を張る。
が、障壁が風の刃を打ち消す直前、その風刃が無数に分裂し一斉に包囲し襲い掛かる。
『ぬう!?』
ズバンッ! ザザザッザ! ザッ! ザンッ!!!
分裂した無数の風の刃が魔獣の頭部から首を一斉に切り刻む。
ボト・・・ ボトボト・・・・・
魔獣の赤黒い血が大量に滴り落ちるのを余所眼にして、ルーゼは付近の足場を使い更なる攻撃を加えるべく高所を取り
[ 放電]
水魔術を行使するに当たって、自身の全身もずぶ濡れになっていた魔獣は全身を感電し、雷が如き雷魔術師によって全身が焼け、引き裂かれる。
(・・・・どうだ?)
ルーゼに殺意は無い。
魔獣にはまだ聞きたい事があり、死んでしまっては困る。要は戦意を失くさせればいいのだ。
”どうせこの程度では死なないだろう”
そう重いながら、電熱によって発生した煙から魔獣の姿を確認する。
グオオオォオオォォォオオオ!!!!!
煙の中から魔獣が姿を現す。身体は裂け崩れ落ち、至る所から流血しているものの、生命活動に影響はなさそうだ。
傷跡がゆるりと治りつつあるが、白魔術の類ではなく、生体に元から備わっている物なのだろう。自己回復していく。
魔力を使わずしてもこれだ。
だが、
「もう分かっただろう。この場において、どちらが格上かを。」
ルーゼは敢えてそうしなかった。が、魔獣が再生する間に攻撃の手を緩めなければ、魔獣は本当に死んでいただろう。
「お前はともかく、私は別にお前を殺しに来たわけでは無いんだ。先程私が言った通り、ロワの遺物について話してくれればそれでいいさ。なんなら身体も治してやる。」
魔獣の反応を伺いながら、ルーゼは更に続ける
『侮るな。』
魔獣はルーゼの提案を拒絶し、睨み付ける。
「何?」
『この程度で、我を圧倒出来たなどと思い上がるなぁッ!!』
魔獣はそう言い、咆哮を上げながら生み出した水のレーザーで薙ぎ払う。
ズガァン!!!
並の人間が当たれば水圧で跡形も無く消し飛ぶような威力だ。
が、ルーゼには当たらない。しかし、その威力で先程までルーゼが乗っていた足場は崩落し、ルーゼは再び地面へと着地する。
「いいだろう、そうまでするなら付き合ってやる。」
ルーゼはそう呟き、先程までとは打って変わって魔獣との間合いを詰めるべく駆け寄る。
魔獣が咄嗟に生み出した幻影魔獣達を薙ぎ払い、魔獣本体の攻撃を躱しながら瞬く間に接近する。
グイエアアァアアァアアア!!!
魔獣は咆哮を上げながら前脚を大きく上げる。
その足には魔力がこもっている。踏み下ろし、何かしらの術を発動するつもりなのだろう。
しかし、
[ 隆地 ]
ルーゼが先手を打って発動した土魔術によって地面がせり上がり、魔獣が足を踏み下せぬ様にする。
さらに同様の魔術によって他の脚や身体を固定する。
『ぬうっ!!』
「ここまでだ。」
魔獣に向けてそう言い放ち、ルーゼは魔獣目掛けて
[ 死光閃 ]!
ダキュン!!!!
光の熱線が魔獣の心臓を甲羅ごとぶち抜いた。
グゥエエエエエェエアアアアァアア!!!!!!
魔獣が悍ましい悲鳴を絶叫させながらのたうち回り、倒れる。
「・・・・下手な龍に比べれば、見事だったな、君は。」
まだ息があるが動かないことを確認し、
「お前の言う通り圧倒して見せた。さぁ、話してくれ、私が求める話を。」
と、宣言してみせた。




