第二十五話 地下脈の浅部
ルーゼを包囲した魔獣達は一斉に襲い掛かってくる。
(・・・・左!)
ルーゼは瞬時にそう判断し、自身の左側に飛びかかってきた小型の魔獣数体を風の刃で切り伏せ、そちらの奥に見えた地下脈の狭い通路目掛けて道を切り開く。
その狭い通路にて入ってくる魔獣を迎え撃つ算段である。
無論、魔力量と出力に物を言わせたゴリ押しで全滅させるのも可能だ。しかし、この地下脈がどれ程の力で崩落するかの見当がついていない以上、規模の大きい魔術は使用できず、この時点で使える魔術は限られる。
大群相手なら範囲の広い水魔術や土魔術等を使うのが手っ取り早いが、地盤に影響を与えかねない時点で論外だ。その為、魔獣を倒すための最低限の出力に抑えた風や火の魔術で対応する。
そして、ルーゼは魔獣共を蹴散らし、地下脈の狭い通路の入り口に駆け込むのであった。
「ふぅ。」
地下脈の狭い道に駆け込んだルーゼはそう一息を吐き、来た方向を振り返る。
背後から魔獣の群れの中から比較的小型の魔獣が狭道になだれ込んでくる。それを風魔術で薙ぎ払い、その奥へと向かっていく、切り伏せた魔術の死骸で狭い通路の入り口は塞がれており、その向こうから魔獣が迫ってくるような気配は感じない。
(──── 一旦は、撒いたようだな。)
そう思うことにして、地下脈の最深部に向けて再び足を運ぶのであった。
ロワの伝言においては地下脈の奥に「渡したい物」があると記されていた。ルーゼの勝手な推測ではあるものの、それは地下脈の最深部にあると見て進んでいた。
(・・・・それにしても、何故こんな回りくどい事を。嫌がらせか?)
そもそも最深部に行くのが中々面倒な上、その最深部には大きな気配が確認出来る。恐らくそいつとの戦闘は避けられないであろう。冷静に考えて嫌がらせとしか思えない。
(・・・ロワはここまで回りくどい事をする奴ではないはずだ。そうまでしても私に渡したい物、一体何なのだろうか。)
渡したい物、の正体を考えながらルーゼは歩く、人一人が通るなら問題のない道だが、魔獣が通るには狭い。そのおかげで魔獣に出くわすことはなく考え事に集中して歩いている。
途中途中道が分かれてはいたが、その都度弱い風魔術で吹き抜けるかどうかを確認しては進んでいるいく。
そんな風に考え事をしつつ進んでいると、いつの間にか狭い道を抜ける出口のような場所につく。しかし、その先に大量の嫌な気配を感じ、ルーゼは立ち止まりそっとその先を見る。
(・・・・回り込まれてやがる。)
魔獣達が知っている地下道でもあるのだろうか、ルーゼが出ようとしている先に大量の魔獣が犇めいている。
(・・・・妙だな。)
ルーゼも馬鹿ではない。移動中に魔獣達に居所を察知されぬよう細心の注意を払っていたつもりだ。にもかかわらず、魔獣達にものの見事に先回りされているではないか。
(・・・指示役がいるな。)
明らかに上手く先回りされていることからルーゼはそう判断する。
そしてそれはこの中にはいない、魔獣達の群れの中に統率を行っている個体は見受けられない。そして、魔力を伏せたルーゼを察知出来る程の実力を持つ個体はいない。今までの経験からそう判断する。
そうなると、指示役に一つの心当たりが浮かぶ。
(・・・最深部にいる奴か?)
この地下脈に入ってからずっと、最深部からの強大な魔獣のものと思しき魔力を感じ続けている。
もし、魔獣達を指揮している奴がいるのであれば間違いなくこいつであろう。
(どの道、ロワの伝言に従っても深部に向かうのは変わらない。)
とりあえず、最深部の魔獣をどうにかするのが先決であろう。
そのためには、目の前の魔獣達を退けねばならない。
後のことと地下脈の安全面を考慮して無闇な戦闘をさけてきたが、この先ずっと追われるのであればここで撃退してしまおう。
(・・・いくぞ。)
そう決意し、ルーゼは魔獣達の群れの前に突撃するのであった。




