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第二話 訓練の日々

今回はルーゼ目線です。

 こうして私は彼女への魔術の指南を始めたのだった。


 私が行う指南は主に基礎的な技術をより深める事。魔力の制御や、消費効率の上昇など基礎でありながら今の彼女には必須である物を中心として鍛えるプランをとらせた。実戦訓練なんかは中央学院に入ってからいくらでも出来る、今はとにかく基礎的な能力を向上させる事が優先だ。


 彼女は勿論私に対して数多くの質問や要求をしてくる、自分の力の為に。彼女の成長に対して貪欲な態度は本当に素晴らしいと思う。


 訓練の中、彼女の魔術のや学園生活に対する悩みついてより知ることができた。彼女の膨大な魔力量のせいで制御出来ていない出力は、彼女の身体かなりの負担をかけていること。学園生活で学友や設備を破壊してしまうのではないかということ等。


 6日目の訓練の休憩中、アチーブが話しかける。


「ルーゼさん、貴方から指南を受けてから今日でもう6日経ちますが、私は成長できているのでしょうか。こう言っては何ですがあまり実感が湧かなくて・・。」


 彼女がそう思うのも無理はない。私から見ればちゃんと成長している、だが本人が目に見える形の結果が出ていないからだ。唯一目に見えて結果に出る魔力の制御で木の枝を壊さないようにする訓練も、まだ成功していない。


「大丈夫さ。当たり前だが一朝一夕で身に付くものじゃない。ゆっくりとでいいんだ、それにこれらは中央学院に入ってからでも出来る事だ。前も言ったが毎日の積み重ねが一番大事なんだ。アドバイスをするなら、もう少し優しく魔力で触るようにするんだ。まるで赤子に触れる時のようなイメージで。」


「はぁ・・?はい・・。」


 今のは私が悪かった。彼女に対して私の感覚基準のみで話してしまった。


「済まない。今のは私が悪かったね。急にそんなこと言われても理解できるわけがない。と言っても本当に感覚の問題なんだ。ならば・・よし、魔力に対する認識に関する話をしよう。まず、君は普段魔力を込めるとき、どう言ったように魔力を感じ、それを出している?」


 そう言って私は町から拝借したボードを取り出し書き始める。

 彼女は少し考えてから、


「身体の中に感じる魔力を・・・そうですね、流して使っている感じ、なのでしょうか。」


「そうだな、基本的にはそうだし私でも基本的な部分はそうしている。では何故、君と私で差がこうも生まれるのか。それは魔力を行使する際の認識の違いが起こしていると私は考えている。」


「認識が違う・・・」


「そもそも、魔力とは身体全体の中に存在する”力”だ。身体のどこかから湧いている、と言うようなものではない。全身を象る力なんだ、だから私は魔力をもう一つの自分の身体を表すものと考えている。例えば・・君は大きな岩などに対して加減もせずに力任せに殴ったりするかね?そしてその理由は?」


「絶対にしませんね。手が痛みますし、下手をすれば怪我をするからです。」


「そうだ、普通に考えたら当たり前のことさ。余程の馬鹿力か本当の馬鹿でもなければそんなことはしない。だが、君は無意識に魔力でそれをしてしまっているのだよ。」


「魔力で・・ですか。」


 彼女はそう言って魔力を込めながら、手を開いて閉じてを繰り返す。魔力はもう一つの身体という私の考えを自分なりにイメージしようとしているのだろう。


「そう、杖や魔導書が壊れるのも、体で力任せに持って叩き付けて壊したような感じだ。だから君がするのべきなのは自身の身体で当たり前にする事を魔力でするというだけさ。」


「はい・・。」


「すまないね。結局抽象的な言い方になってしまった。少しでも理解に繋がれば良いのだが。」


「いえ・・大丈夫です。なんとなくですが・・。イメージできそうです。」


「そうか、じゃあ早速やってみよう。」


 そうしてアチーブは木の枝を積んだ山から一本を取り出し、


(私の手で赤子に触れるような優しさを・・魔力で・・)


 赤子に触れるかのように優しく魔力を込める。枝は壊れない。アチーブは緊張した面持ちでそのまま闇の初級魔法を撃つーーーー


「あっ!!」


 その瞬間枝は砕けてしまった。


「すみません。でも今のーー」


「素晴らしい!これだけすぐに実践に移して結果になるとは!やはり君は私が見込んだ通り!いやそれ以上の才能を持っている!」


 思わず興奮して拍手しながらまくし立ててしまう。


「あ、あの・・ルーゼさん・・?」


 彼女が引いているのを見て、ようやくハッとして落ち着いた。


「・・・コホン、済まない。しかし・・そうだね、まさかすぐにここまで上手くいくとは・・。君の才能も勿論だが、君の今までの積み重ねもあるからだろう、そこは自信をもっていい。それと、撃つ前に壊れてしまったのは、君も分かっているだろうが、最後に力んでしまったからだね。」


「はい、そこはこれから改善していこうと思います。ありがとうございます。これで糸口が掴めそうです。」


「そうか、力になれたのなら幸いだ。」


 そこからは速かった。彼女の魔力の精度はみるみるうちに安定していった。まだ枝は壊れてしまうがそれでも撃つ前までに壊れることはなくなった。彼女の素晴らしい所は素直に学ぼうとするところだ。私の教えたい意図をしっかり飲み込み、実践しようとする。そうして確実に自分の物にしていく、そういう人間は確実に成長する。


 そして彼女の一番魅力的なところは魔術の訓練を楽しんでいることだ。楽しんで出来る人は義務でこれを行う人よりも成長速度やその限界が圧倒的に高い。それに、そういう者に指南をするのは非常に楽しい。私も口を挟む程度なのが、より積極的に指導するようになっていった。






 指南を始めてから12日、彼女の出発まであと3日。私はふと気になり、今まで聞いていなかったことを突如として聞いたのだ。


「そう言えば、今まで聞いて来なかったのだが。どうして中央学院に入れんだ?いくら魔術の才能があるとはいえ、豪商でもない君の家が入るには資金が重すぎるはずだ。貴族から許可認証を得るにも金がかかる。貴族とのコネクションも無さそうだが。一体どうやったのだ?」


「・・・・・・・」


 彼女は少し黙り、少し重たく口を開く。


「町の・・皆が・・・・お金を集めてくれたから・・入学金を工面できて、貴族への許可認証も取れたのです。」


「一体何故そこまで・・」


「皆にとっては・・私は町の希望なんです。もし私が中央学院で優秀な成績を収めたとすれば、帝国の宮廷魔術師とか、中央学院の重職とかに平民でも就けるかもしれないんです。後は有力貴族に嫁いだりとかもあるでしょうね。」


「そうすればそれで得た大金で、町を裕福にすることが出来ます。皆はそれを私に期待しているのでしょう。皆、学問を頑張れとしか言って来ませんしね。」


「・・・そうか。」


 少し気まずい空気が流れる。それを破るように彼女が


「でも!楽しみもあるんですよ?きっと友達も出来るでしょうし、それに今年は”500年祭”もあるってことですし!」


「・・・500年祭?なんだそれは」


 なんの500年祭だ?聞いたことがない。


「知りませんか?今年はローザンテ帝国が建国してから500年たつって事で、」



ーーーそうかーーー


「10月に中央学院のある帝都で大規模な記念祭があるんだそうです。もう既に準備が始まっていて帝都は大変賑わっているそうですよ。」




 ーーーーー500年、か・・・・・ーーーーー




 ーーーーーーもうそんなにも経ったというのか・・・・・?ーーーーーー




「どうやら中央学院の生徒も参加出来るようです。」




 ーーーーー私は、そんなことも忘れかけていたのか?ーーーーー




「あの”緋炎皇帝ローズ”と”大賢者ゼーレ”の建国神話は私も大好きですからね。今から楽しみで仕方ないですよ♪」




 ーーーーーこのままでは彼女との旅も忘れてしまうかもしれないーーーーー




 ーーーーー戻ろうーーーーー




 ーーーーー余程のことをしなければ正体もバレるまいーーーーー



「って、聞いていますか?ルーゼさん?」


「よし、アチーブ。」


「はい?」


「私も500年祭とやらに興味が湧いた。君の帝都までの道のりに私も同行させてくれないか?勿論君に損をさせるような真似は決してしないさ。」





「は?」



読んでいただきありがとうございます。

これからも不定期に更新していきたいと思っています。

まだまだ慣れないので拙い部分もあると思いますが、優しく指摘していただけると嬉しいです。


これからもよろしくお願いします。



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