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第十話 帝都グレンミューリ

今回は3人称視点で物語を進めていきます。


第2章は次回で最後です。

 ーーーサングレス平原を出発して6日後、ルーゼ、アチーブ一行、帝国直属領内、帝都中央街の西門に到着ーーー


 帝都グレンミューリはローザンテ帝国南部にある、大陸最大の都市であり皇帝の住まう宮城がある帝国の首都。かつてサングレス撃滅戦の為に皇帝ローズが置いた大規模な軍事拠点に人が集まり、それが今日の帝都成立のきっかけであった。


 そして大賢者ゼーレの指導の下、帝都内には巨大な運河が築かれ、帝都の中央街周辺は城壁に囲まれて、さながら城塞都市となっている。中央街の外は中規模の街や、広大な平原や森林もあり、商売や狩猟も盛んである。


 今、一行はその中でも宮城が置かれている帝都の中心街に入ろうとしていた。一応、ルーゼの様な流れの者でも、宮城のような場所でなければ、帝都に入る事が出来る。


 そして、彼らの目的にしている中央学院は帝都の南門から出た先に建てられており、今日から2日間は帝都で待機するのだ。


「いよいよだな。」


「ええ。少し緊張しますね。」


 帝都前の門に到着したルーゼとアチーブは、アチーブは初めて見る帝都に対する期待を、ルーゼはかつ築いた帝都の中心街の変化に対する興味を、それぞれ持っており、その門をくぐる時を心待ちにしていた。


「お待たせしました。それでは、これから帝都に入ります。」


 馬車に乗り、帝都の門が開き、一行は帝都に入るのであった。


「凄い・・・・。」


 帝都に入って開口一番、アチーブはそう言った。


 帝都の門をくぐりまずそこにあるのは、帝都最大の大通りだ。その地で商売をしている商人達やそれらに売り込む為の、狩猟で得た獲物や、大量の武器、魔導書等を運んでいる者達。或いは他の領地や帝国外から来た行商人達が集まっており大規模な市場を形成している。


 それだけでなく、ルーゼの様な流れの旅人や、帝都の騎士達、或いは傭兵等、様々な人間が集っており非常に活気に満ちあふれている。


 特に今は500年祭のためにさらに多くの人間が集っており、より一層の人や物の流れが多く、帝都に集まっており、さらに活気が溢れているのであった。


「・・・私の故郷でこんな活気だっているのは見たことないですよ。凄いですね・・・。」


 アチーブがそうして息を吞む。


「・・・そうだな、いやしかし、久しぶりに来たが、あの時以上に美しい街並みだな。」


 500年前は、これほどの数の建物はなかった上、人もいなかった。その当時でもほかの都市よりは人口も多かったが、それも現在程のものではない。


「ルーゼさん、以前帝都にきたことがあるんですか?」


「ん?話してなかったか?一度だけだが、以前来たことがある。ただ、この時は中央街がこれ程まで盛り上がってはいなかったが。やはり500年祭の影響だろうか。」


「そうでしたか。・・そう言えば、ここは商店というよりかは、出店とか屋台が多いですね。」


「中央街の出入口だからな。行商人が商売しやすいようにとか、私達みたいな旅人が物資を整えれるように、そうなっているんじゃないか?」


「ああ、成程。確かにそういう人達からしたら、その方がいいかもしれませんね。」


 ルーゼの見立て通り、この大通りの中でも中央街の門の出入口周辺は、行商人の交易や旅人物資を集めるために利用するための場所として使われている。


「もし、時間があるようなら後で寄ってみるかい?」


「え?いいのかな・・・?」


「衛兵達に後で聞いてみよう。私は何時でも行けるが、君がこう言った場所に来れる機会は限られるだろう。行ける時に行った方がいい。それに、各地から様々な品が寄せられているだろうからきっと面白いし、勉強にもなるぞ。」


「でしたら、後で一緒に行きましょう!」


「ああ、できたらいいな。」


 そして、いくつかある街の大広間の一つに近づくと、アチーブの目に巨大な銅像が見えた。


「ルーゼさん。あれ見てください!皇帝ローズと大賢者ゼーレの像ですよ。」


 大剣を携え仁王立ちする威厳に満ちたその女性の像は、この帝国の初代皇帝にして、滅竜戦争を勝利に導いた英雄「皇帝ローズ」。


 そして、お互い背中を預けるように立っている魔導書を携えた男の像こそが、皇帝ローズの相棒として常に共にあり、人類に魔術を広めたとされ、魔術、学問の父とされる「大賢者ゼーレ」である。


 大々的に祀られている若き頃の自身の像を見て、気恥ずかしさに内心で苦笑いしつつも、ルーゼが答える。


「ああ、いやしかし、ここが帝都なだけあってこれまで見てきた物の中では一番立派な代物だな。」


「そうですね、この帝国の繁栄の全てが、元を辿ればこの2人の活躍に集約されるのですから、とうぜんでしょう!・・・本当に凄いですよね。」


 少し興奮気味のアチーブとそう会話していると、衛兵のリーダーが馬車の中のルーゼ達に声をかけてきた。


「お二人方、この近くに外部から来た者達が馬車を停めるための施設がありますので、そこに馬車を停めます。その後は徒歩による移動ですね。よろしいでしょうか。」


「はい、大丈夫です。ありがとうございます。」と、アチーブが


「ええ、私も大丈夫ですよ。ありがとうございます。」と、ルーゼが返答したのを確認してから、


「ありがとうございます。では、荷物の整理と支度をしておいてください。」


 と言って、隊列の配置に戻ろうとするのをアチーブが引き留めた。


「待ってください!・・その、もし時間が許されるようでしたら、さっきの行商人達の市場を見てみたいのですが、その・・大丈夫ですか?私の我儘なのは分かっているんですが・・・。」


 その言葉を聞いて衛兵のリーダーは意外そうな表情でアチーブを見る。彼からすれば、彼女がこの様な願い出をする事が非常に珍しかったからだ。


「それでしたら、馬車を止めた後、私たちの物資を調達するグループに別れるので、そちらについて行って下されば、そちらを回れると思います。それでもよろしいでしょうか。」


「・・・!ありがとうございます!」


 アチーブの返事に衛兵のリーダーは笑顔で


「ええ、大丈夫ですよ。」


 そう言って、今度こそ隊列に戻る。


「良かったな、アチーブ。」


「ええ!」


 その後、ルーゼとアチーブはそれぞれ荷物をまとめ、馬車を停めた後馬車から降りる。その後衛兵のリーダーが全員を集合させ点呼を取り、


「それでは、これから先ほど通過した市場での物資調達班と、街で宿場の確保を行う班に別れて行動します。アチーブさんとルーゼさんは物資調達班の方へついて行ってください。」


「「了解です。」」


 そうして、ルーゼとアチーブ一行は二手に別れて行動を開始した。ルーゼがその前に衛兵のリーダーに何かを呟いていたが、アチーブはそれには気づいていなかったようだ。


 ルーゼ、アチーブは物資調達班についていき、先ほどの市場に到着した。いざ、自分の足でそこについて見ると、馬車で乗っていた時と比べて市場の盛り上がりを直接肌に感じる。


「改めて見ると、本当に千差万別の品物が売られてますね、やっぱり、様々な地域から品物が集められている市場なだけありますよね。あっ、見てくださいルーゼさん。アーテル領から来た商人もいますよ。」


 アチーブの言葉に反応したルーゼがその方を見ると、アチーブの出身地であるアーテル領の商人達がその一帯の特産品である、ヤギの肉を売っている出店があった。


「おお、あそこからも来ているのか、そう言えばあの一帯はヤギ肉が有名だったな。」


「はい。結構クセが強いですけどおいしいんですよ?どうですか?買ってみます?」


 アチーブがそう、故郷の物を自慢しながら宣伝してくる。


「いや、今は遠慮しておこう。あそこで売ってるのは生肉じゃないか。今から調理する暇はないだろう。」


 一応、まだまだ寒いのに加え、氷や状態劣化を遅らせる魔術もかけられているので、保存状態は良好ではある。・・・もし機会があれば買ってみようか。会話しながらルーゼはそんなことを考えていた。


「そうですか・・。あ!ルーゼさん。あそこの店に行きましょう!」


「ん?ああ。」


 そう言って、アチーブがルーゼを連れて行った先にあったのは、小豆をペースト状にしたそれを卵と小麦粉で作った生地で包んだ菓子であった。


「一個だけ食べましょうよ。どうですか?ルーゼさん。」


 アチーブはそれを見て目を輝かせているのに対し、ルーゼは苦い顔をしながら


「・・・いや、申し訳ないが私は遠慮させてもらおう。」


「あ、すみません。ルーゼさん、甘い物苦手でしたよね。(でも、食べたいな・・・)あーじゃあ、・・・・すみません、これを・・」


 それに対しルーゼは笑いながら


「大将、これを一つ。この子に頂戴な。」


「はいよ!」


 と、屋台の店主が菓子を用意するのを見て、ルーゼは財布を取り出す。アチーブはそれを見て驚きながら。


「いや!ルーゼさん!?何財布取り出してるんです!?私が食べるんだから私が出すべきでしょう!?」


 と、ルーゼを制止する。


「何を遠慮することがある。素直に喜んだらどうだい?」


「いやでも・・・、申し訳ないですよ。毎回毎回。」


「別に構わないさ、これは私自身からの君への感謝の証の一つと思って受け取って欲しい。」


(・・・感謝?)


 その言葉に対する疑問をルーゼに問おうとしたところで、屋台の店主が、


「お待ちどう様!」


 と言って、出来上がった菓子を渡してきた。ルーゼがそれを受け取って、店主に代金を払いアチーブに渡した。歩いて、店から離れたタイミングでアチーブが先ほどの疑問をルーゼに聞く。


「ルーゼさん。さっき感謝だとか言ってましたが、どういう意味ですか?」


 ルーゼは彼女の方を向き、


「ああ、別に大した意味じゃないぞ?君と出会えたお陰でこうして楽に帝都までこれたし、君達との旅も楽しかったからね。それに感謝してる、ってだけさ。」


 そう照れくさそうに笑う。


「そんなのはお互い様じゃないですか・・・。こちらこそ、何かお礼がしたいですよ。」


「そんなのは君が大人になって大成してから考えればいい。それよりも、出来たてを食べないと勿体ないぞ?」


 そう言われて、納得がいかないも良い香りを放ち続ける菓子の誘惑につられアチーブはその菓子を頬張る。


「ん~~~!おいしい!」


「そうか、良かったな。」


 と、アチーブの感想を聞き、ルーゼも彼女の笑顔につられ笑う。


(いつか、必ずルーゼさんに恩を返そう。)


 改めてアチーブがそう考えていると、そのルーゼはアチーブを置いてフラフラと別の店に寄っていくのであった。


「ちょっと!?待ってくださいよ!」


 慌ててその後をついていくと、ルーゼは行商人が開いている出店で物色をしていた。一体何を見ているんだとアチーブも覗いてみると、そこには沢山の魔導書や杖が売られていた。


「魔導書でしたか・・・・・ルーゼさん?・・・・あの、ルーゼさん?聞いてます?」


「・・・・・・・・・ああ、いや、どんなものを売っているか気になってね。」


 無言でまじまじと魔導書たちを睨み鑑定していたルーゼはアチーブの声に気付き、振り返る。


「お客さん。中々お目が高いですねぇ。どれも良いものですからねぇ、どうですか?お一つ手に入れてみてはいかがですか?」


 と、行商人が二人に対して言うと、ルーゼは顔を上げてその行商人に対し、


「なぁ、お前さん。あんた一体どっからこれを仕入れたんだい?」


 と言って、一冊の魔導書を指差す。それはかなり古い物で表紙の紋様はかすれていたが、その見た目から闇の魔導師だと思われる。


「おっ、それに気づかれるとは、お客さんも相当な目利きのようですねぇ。・・・ここだけの話ですよ?あまり詳しくは言えませんが、廃墟にあったものを拝借してきたんですよねぇ。」


「えっ?それじゃあ、これって盗品・・・」


 行商人のその発言にアチーブは思わずそう言ってしまう。するとその行商人は「しーっ」と口に指をあてて、


「人聞きの悪いことはやめてくださいよ?その地の人の話じゃ、なん10年も前に潰れた廃墟らしくて、危ない事をしなけりゃ好きにしていいと言われたものですからねぇ、決して!後ろめたいものではありませんよぉ?」


「ああ、そうかい。じゃあ、これを私にくれないかい?」


「ルーゼさん!?」


「おっ!じゃあ、大金貨20枚だ。」


 提示されたその金額にアチーブは思わず「っ!?」と息を吞む。大金貨20枚あれば、彼女の地元で彼女自身の3人家族が3か月は十分に暮らせる額であるからだ。


「ああ、安いもんだ。」


 たったの一瞬で物凄い額の額が動いたことにアチーブは啞然としつつもその取引は成立し、その魔導書がルーゼの手に渡る。


「ありがとうございましたぁ。またのご贔屓をぉ♪」


「ああ、ありがとう。」


 そう言って、何事もなかったかのようにルーゼは去る。アチーブはその彼を追いかけて


「いいんですか!?どう考えてもぼったくりじゃないですか!それに、どっからそんな金が・・・」


 と、問い詰める。すると、明らかに興奮気味のルーゼが


「・・・正直、物を見ればむしろ良心的なまであるぞ!?おそらく250年くらい前のものだ!まさか出くわせるとは思わなかった!」


「!? そんなに前のなんですか!?」


 以前、彼から古い魔導書が現在まで残っているのは珍しいと聞いている。驚くアチーブの反応に対してルーゼはやや興奮してるのか、魔導書を掲げ笑いながら続ける。


「ああ、それに制作者も相当な魔術師だったんだろう。見ろ!この精巧な造りを!」


 と言って、見ていた魔導書をアチーブにグンと近づけ何ページか見せてくる。アチーブはそれをまじまじと見てから申し訳なさそうに言う。


「すみません・・。よく、分からないです。」


 と、言うと彼は少しだけ残念そうな顔をして


「・・・そうか。いや、今は分からなくても大丈夫さ。いつか、この素晴さが分かるようになるだろう!それに、君も闇魔術を学んでいるのだ。尚更そうおもえるさ。」


「は・・はい。」


「それで、金のほうか。まぁ、なんてことはない。私は色んな所で日雇いの傭兵だったり、手に入れた貴重な物を売りさばいたり、時には賭博をしたりして、案外結構稼いでいるんだ。心配は要らないよ。」


「そ、そうですか・・。」


 それらのより詳しい内容を疑問に持ちつつも、どうせ話さないだろうと、直ぐに気を取り直し残った時間を活用して様々な出店を回ることにした。特に彼女達が約2ヶ月の旅で経由しなかった地域の物を売っている店を中心に。


 その中には、剣や槍といった武器や、服などをはじめとした装飾品など様々なものがあり、ルーゼとアチーブはそうして廻った中からいくつか目ぼしい物を購入した。


 その後、別れていた衛兵達と合流し、この日は宿で宿泊することとなった。


 その際に、衛兵のリーダーがルーゼに話をしにきた。


「ルーゼさん。先ほどの件ですが、大丈夫だそうです。」


「そうか!?ありがとう!一体誰が許可をくれたんだ?」


 一方、話についてこれないアチーブが2人に


「二人共、何の話ですか?」


「頼んでおいたんだ。この中央街の何処かで訓練場か何か借りれないか、聞いてきてくれないかと。」


「そうしてアチーブさんの事情を話すと共に聞いてみたら、中央街の衛兵をしている魔術士達が快く受け入れてくれたんですよ。」


「え。」


 とアチーブは驚いた表情で固まってしまった。


「本当に最後までお手数をおかけしましたね。ありがとうございました。」


 そう言うと、衛兵のリーダーは


「いえいえ、こちらこそ。ありがとうございました。では、お先に失礼します。」


 と言って、他の衛兵達と共に宿場の方へ向かっていった。


 アチーブは、しばし沈黙した後口を開く。


「本当に、皆、私の為に・・・・本当に、ありがとうございます。」


「良いんだ。それだけ皆が君を大事に想っているんだ。・・何はともあれ明日が、私が直接指導出来る最後の日だ、これまでの成果を確かめるために有意義な時間にしよう。」


「はい・・。お願いします!」


 そうして、一行は宿に戻り、それぞれ休息をとることとなった。






 そして宿の個室に入ったルーゼは、個室にある机に向かって座り、自身の荷物に入っている紙や羽ペン、インク等の書き物一式を取り出しそれらを置く。その後一息つきながら、これまでの彼女との旅路を思い返すのであった。


(・・・思えば、私がここまで一人の個人に対して関係性が続いて、それに入れ込むのは随分と久しぶりだな。)


 この500年間、時々色んな人と関わることはあったが、正体が暴かれない為とはいえ、その日限りの関係だったり、数日間だったりと非常に短期間のものであった。


 そしてアチーブとも本来はそのつもりだった。が、彼女から聞いたこと500年祭の話、そして彼女が持つ魔術の資質とその成長に興味を持ったことで、2ヶ月にも渡る長期間の関係性になったのだ。


 そう、500年祭。それもこれも、元を辿れば、これも全てあの日にローズが私を救ってくれたお陰か。そして、500年祭に導いてくれたのはアチーブだ、少しでも彼女に礼をしたい。そう考え、再び机に向かう。


「さぁ、やろう。」


(私とアチーブの出会いは、彼女の人生に良くも悪くも少なからぬ影響を与えてしまうことになっただろう。いや、これはただの自惚れだろうか。)


 そう思いながらもルーゼは早速作業に取り掛かる。


(アチーブはこれから自身よりも実力を持つの魔術師に、何人も出くわすだろう。私の一番の懸念はこれだ。)


 そうした理由で、道半ばで心折れてしまった者を何人も知っている。だからルーゼとしては、彼女にはそうなってほしくなかったのだ。どこまでも魔術が好きで、努力し続ける、そうあって欲しい。そうして彼女には彼女の幸せを掴んで欲しい。


(これは私の独善だ。それでも、一度アチーブに魔術を教えた者として最後まで彼女の支えになりたいのだ。ーーーーそれに、これが今生の別れになる可能性の方が高い。)


 そう思いながら、制作する予定の物の大まかな設計を立てる。


「ふぅ・・・これなら今日明日の睡眠を犠牲にすれば完成出来そうだ。」


 2つの設計図を前に彼はニヤリと楽しげに笑うのであった。









 一方、アチーブは部屋のベッドに寝転がり、彼女も同様ルーゼとの出会いや、この2か月間を思い返していた。


 結局、彼についてはあまり分かったことが少なかった。あるとすれば、相当な魔術の腕を持っていること、過去に浮浪者だったこと、あとは・・・彼の恋か。彼には申し訳ないが、中々いい話を聞かせてもらった。


(本当は誰から魔術を教わったのかとか、どこの出身だったのとかもっと色々聞きたかったけど、あれ以上言ってくれそうになかったなぁ。それに・・・・、もっとあの人から魔術を学びたかったかなぁ。)


 この2か月でも、彼の魔術師としての底知れぬ実力を、結界術や、私の魔術を軽々と消したこと、それに、当たり前のように殆ど全ての魔術を使える事などを通して、何度も見てきた。そんな人から魔術を学び続ければ、私はもっと魔術の力を身に着けれたかもしれないと考えていた。


 でも、この2か月間彼から学んだ魔術は、今後の私の人生において、ずっと役に立つ物になるだろう。


(そう思うと、ずっと借りを作りっぱなしだったなぁ・・・。私は彼に何も出来なかった。)


 ルーゼのことだ、そんなことを気にもしていないだろう。どうせ、いつか大成したアチーブを見れたら十分とでも言うのだろう。でも、それじゃあ、彼女自身が納得できなかった。


(私の悪い癖だ。直ぐに結果と成果を出そうとばかり考える。・・・でも、)


 もしかしたら二度と会えない、そんな気もしていたのだ。


(だからせめて、私のこれまでの成果の全てをルーゼさんに見せたい。それに・・・・、)


 彼女はこれまでのルーゼの魔術を思い返して考える。


(欲を言えば彼の全力も見てみたい。)


 まだまだ素人のアチーブでも、彼が全力を出していないのは何となく感じていた。何とかして少しでもその片鱗を明日の内に見れないか、そう考えていた。


 でも、明日の訓練も結局これまでの振り返りを行うための時間になるだろう。


(・・・あ、でも・・。)


 この方法なら、もしかすればそれらを纏めてできるかもしれない。彼女の脳内に一つの案が浮かんできた。彼がその提案を呑むかはわからないし、そもそも訓練場の魔術師達が許可してくれるかはわからないが、それでも試してみたかった。


(よし、決めた。)


 確固たる決意を持って真剣な思いのまま、彼女は眠りにつく。







 ーーー翌日、訓練場ーーー



 ルーゼは予定していた時間の5分前に訓練場についた。彼が訓練場に中に入り、辺りを見渡すと場内にいる大勢の魔術師達が揃って自分を見ている。しかも誰一人訓練場を使っておらず、全員端の方に寄り、まさに訓練のための場を開けていた。


(あの人か・・・) (どう思う?) (多分、相当強いぞ?大丈夫か?)


 と何やらひそひそと話しているのも聞こえるし、全員の目がルーゼを値踏みするような目で見ていた。


(どういう訳だ?いくらここを借りる余所者とはいえここまで注目されるものか?)


 そう考えていると、訓練場の中央に向かって少女が一人歩いてきた。


 アチーブだ。


「おはようございます。ルーゼさん。今日もよろしくお願いします。・・目の隈、どうしましたか?」


 そう明るい声で挨拶する。しかし、その表情はいつになく真剣なもので真っ直ぐルーゼを見つめていた。


「・・・ああ、おはよう。昨晩ちょっと寝れなくてね。・・・それよりも、これはどういう状況だい?」


「これは、ここの魔術師の皆様に協力していただきました、全て私の為にです。」


「そうか、確かに有り難いが、何故ここまで・・・・。」


 彼らの好意なのかもだが、迷惑ではないのだろうか?一体どうして?ルーゼがそう考えていると、


「ルーゼさん。」


 ルーゼを刺すように、アチーブが声をかける。


「なんだい?」


 アチーブは緊張した面持ちで、しかし、決意を固めた表情でルーゼにとって予想外のことを申し出る。





「私、アチーブ=レルネンは、ルーゼさん、貴方に決闘を申し込みます。」


皇帝領は帝国内最大の規模を持つ巨大な領域。大運河や帝国最大規模の港を持ち、商業、軍事共に帝国内最大勢力である。かつて、竜族が支配してた地域をも支配下に置いている。


そして、帝都グレンミューリはその中で宮城や中央学院がある巨大な城塞都市である。



読んでいただきありがとうございます。


書き始めて思ったのですが見せたいこととテンポを考えると自然とカットされるのが多くなるんですよね。本当に・・・難しい。もしかしたらまたどっかで補足するかもしれません。


あと、帝国の大まかな地図は今度乗っけます。


あと、今回初めて3人称に挑戦してみましたがどうでしょうか?筆者としては思ったよりも書きやすかったです。


それも含めて、忌避なき意見と感想を是非お願いします。


では、これからもよろしくお願いします。

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