表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/19

第十三話☆帰宅

日がだいぶ高く昇ったころ、自分の部屋の近くまで戻ってきた。


「どこへ行っていたの?」


お隣さんが洗濯物を干しながらぼくに気づいて聞いた。


「東の果て」


「東の果て?そこになにがあるの?」


「階段の終わり。その先に荒野が広がり、もっと先に海が見えた」


「そんなところへ何しに行ったの?」


「朝日を見に行ってきたんだよ」


「なんでそんなことしたの?」


ふあああああ。


ぼくは大あくびを一つ。


「ものすごく眠いんだ。夜じゅう歩いてたし、朝になってからももどってくる間ずっと起きてたから」


「ばかじゃないの?」


「ほっといてよ。とにかくもう眠くてしょうがないんだ。おやすみ」


「あきれた」


お隣さんは、理解できないといったていで、ぼくを見ていた。


ぼくは部屋に戻ると、火を消したカンテラを棚の上に置いて、脱いだ上着をソファに投げ出した。


「おやすみぃ」


ふかふかの布団にもぐりこむ。


やっぱりここが一番いい。


あの荒野を越えて、海を渡るとずっと遠くに異国の世界がひろがっているんだと、新聞に書いてあった。




かいじゅうたちのいる島に渡った少年は、そこで王様になって暮らすけれど、やっぱり自分の家がいいと、帰ってくる。


今のぼくの心境だね。


くう、すう。


寝息を立てて眠る。幸せなひととき。




「なにしてるの?」


見知らぬ女の子がぼくに聞いた。


「作ってるんだ」


「なにを作っているの?」


「階段。始めから終わりまで階段が続く国を作っているんだ」


「なんでそんなことするの?」


「ぼくだけの国。階段の国」


「じゃあ、あなたがこの国の王様なのね?」


「王様?そんなんじゃないさ。ぼくは作る人。お話を紡ぐ人」


「創造主?」


「想像主」


「空想の人?」


「そう。空想からいろんなものを紡ぎだす」


「じゃあ、私もあなたの空想から出来ているの?」


女の子はいつのまにかお隣さんに代わっていた。


「きみはきみ。きみだけの世界観を持って生まれてきたぼくの隣人」


なぜぼくはここにいるんだろう?


ぼんやり思って、きっと、お隣さんといっしょに過ごす時間のためにここにいるんだろう、と結論付けた。




「んー、なんか変な夢見ちゃった」


しょうがない。とりあえず空腹を満たして、仕事の続きを少しでもやっておかなくちゃ。


ぼくは大きくのびをした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ