第2章:次の悪魔、めっちゃヤバいんですけど!
「ハァ!? 世界を救う!? いやいや、リリスさん、急に何!? 俺、さっき悪魔倒したばっかで頭パンク寸前なんですけど!」
校門前の路地裏で、夜崎悠真は銀髪の美少女・リリスに食ってかかっていた。ゴスロリドレスに眼帯という、どっからどう見ても「普通じゃない」彼女は、ニコニコしながら悠真の抗議をスルー。
「ふふっ、悠真くん、いい感じにパニックってるね! そのリアクション、めっちゃ好み! でもさ、残念ながら時間がないの。ほら、感じるでしょ? 次の悪魔の気配!」
「気配!? いや、感じねえよ! 俺、超鈍感力持ちだから!」
悠真が叫んだ瞬間、地面がドンッと揺れた。路地裏の空気が一瞬で重くなり、まるで冷蔵庫の中に放り込まれたような寒気が全身を襲う。
「――嘘、だろ?」
悠真が顔を上げると、路地の奥に巨大な影が現れた。さっきの悪魔とは比べ物にならない、まるでビルみたいにデカい奴だ。全身は黒い鱗に覆われ、六つの目が赤く輝き、口からはドロドロの溶岩みたいな液体が滴っている。明らかに「やべえ」オーラ全開。
「リ、リリス! あれ何!? さっきの悪魔とレベル違いすぎだろ!」
「ふむふむ、こいつは『中級悪魔・ガルム』ね。悠真くんが死神の力に目覚めたせいで、悪魔どもが本気出してきたみたい! おめでとう、キミ、完全に狙われてるよ!」
「めでたくねえよ! ていうか、助けろよ! 死神協会の監視員だろ!?」
「うーん、監視員はあくまで『監視』が仕事なの。戦うのは悠真くんの役目! ほら、死鎌出して、ガンガンいっちゃって!」
リリスは無責任に手を振る。悠真は頭を抱えたくなったが、ガルムの六つの目がギロリと自分を睨みつけてくる。逃げられる雰囲気じゃない。
「くそっ、こうなったらやるしかねえ!」
悠真は深呼吸し、右目を意識した。すると、ズキンと熱が走り、瞳が再び真紅に輝く。右手にはあの漆黒の死鎌が現れ、まるで自分の体の一部みたいに軽く感じた。
「よし、来いよ、でけえトカゲ! 俺の青春、てめえに食わせねえぞ!」
ガルムが咆哮し、巨大な尾を振り回す。路地の壁が一撃で崩れ、コンクリートの破片が飛び散る。悠真は死鎌を握りしめ、死神の目でガルムの動きを捉えた。
「見える……! めっちゃ速いけど、軌道が読める!」
悠真は跳び上がり、尾の攻撃をギリギリで回避。死鎌を振り下ろし、ガルムの鱗を切り裂く。だが、刃は浅く、ガルムは怒りの咆哮を上げた。
「ぐおおお! 硬え! こいつの鱗、鉄より頑丈じゃねえか!」
「悠真くん、気合が足りないよ! 死鎌はキミの意志の力で強くなるの! もっと『倒す!』って気持ちを込めて!」
リリスが遠くから応援(?)する中、ガルムが溶岩のような息を吐いてきた。悠真は咄嗟に死鎌を盾のように構え、熱波を弾く。
「熱っ! 死ぬ死ぬ死ぬ! リリス、気合って何!? 具体的に教えろよ!」
「ふふっ、ヒント! 死神の目は『魂の核』を見抜く力があるよ。ガルムの弱点、ちゃんと見てみなさい!」
「魂の核!? わけわかんねえって!」
だが、悠真は必死に右目を凝らした。すると、ガルムの胸の中心に、赤く脈打つ光の点が見えた。まるで心臓のように、ドクドクと動いている。
「――あれか!」
悠真は一気に加速し、ガルムの攻撃をくぐり抜ける。死鎌に全神経を集中させ、叫んだ。
「くらえ、俺の全力一撃! 青春斬りぃ!」
「技名、ダサいね!」
リリスのツッコミを無視し、死鎌がガルムの胸を貫く。赤い光が爆発し、ガルムは断末魔の叫びを上げて黒い煙に変わった。
「はぁ……はぁ……やった、ぞ……」
悠真は地面にへたり込み、死鎌が消えるのを見届けた。リリスが拍手しながら近づいてくる。
「やー、悠真くん、ナイスファイト! 魂の核を見抜くなんて、初戦から二連勝だよ!」
「ハァ……マジで死ぬかと思った……ていうか、リリス、さっきの『魂の核』って何? 死神の目って何? 俺、説明されてねえんだけど!」
リリスは意味深に微笑み、眼帯を軽く押さえた。
「ふふっ、死神の目はね、魂を視る力。悪魔の弱点を見抜いたり、時には人間の魂の秘密まで覗けちゃう、すっごい能力なの。でも、悠真くんがその力を継いだ理由……それはまだ秘密!」
「秘密って! 俺の人生かかってんだぞ!」
「まあまあ、細かいことはこれから少しずつね。ほら、死神協会の本部に行こ? キミの仲間が待ってるよ!」
「仲間!? いや、待て、話が急すぎる!」
悠真の叫びを無視し、リリスはスキップしながら路地の奥へ歩き出す。悠真はため息をつきながら立ち上がった。
「マジで、俺の青春、どうなっちまうんだよ……」
だが、どこかで小さな興奮が芽生えている自分に気づいていた。死神の力、悪魔との戦い、そしてリリスの言う「仲間」。この先、どんなバトルが待っているのか――。
「ま、悪魔なんかに負ける気はねえけどな!」
夜崎悠真の死神ライフは、まだ始まったばかりだ!