つぶさに観察
『三時間おきの授乳』とは言われますけど、それはあくまで、
『一般的にはそれくらい』
というだけの話で、しかもオムツの交換やミルクを使う時にはミルクの用意やげっぷをさせた時に母乳やミルクを吐き戻すことがあるのでそれの対処や終わった後で寝かしつけることとかを考えると、
『三時間おきの授乳だから三時間は休める』
なんてことは全然なくて、実際には一時間くらいしか休めません。これを母親一人にやらせた上でさらに家のことをさせようなんて、
『正気の沙汰じゃない……』
ハカセにはそう思えました。だからハカセは自分もできることをするんです。自分は母親にはなれないけど、母親じゃないからこそ母乳以外のことはできる。男性でもできることは多いと実感しました。
そのついでに人間の赤ちゃんの様子をつぶさに観察できる。
とても貴重な経験でした。
生まれたばかりの赤ん坊は目もよく見えません。だからそれこそ自分が置かれている状況がよく分かりません。それだけに不安になる。恐い。だったら強い言葉を使わないのが当然じゃないでしょうか。
その上で安心してもらえるようにと穏やかに声を掛けます。
するとミコナも、ハカセの方を見ようとしてくれるんです。そんなミコナの反応も、ハカセにとってはとても興味深い。
ロボットが見せる反応とは、ロボットが再現している反応とは、確かに違っているんです。それを見るとロボットの技術はまだまだだと実感してしまいます。
人間の脳内で起こっている様々な情報処理とは違うのが分かるんです。ロボットのそれはとてもシンプルで最短距離で結果にたどり着こうとするものですけど、人間のそれは、特に赤ん坊のそれは、最短距離を目指しているものじゃないんでしょうね。
人間の赤ん坊の脳はまだまだ最適化が図られていなくて適切な情報処理が行えません。だから余計に自分の置かれている状況というものがよく分からなくて不安になってしまうというのがあるのかもしれません。しかも経験がないので自分の行動の基準というものも持ち合わせていない。
加えて何よりも自分自身の能力がとてもとても低い。危険が迫っても自分じゃなにもできない。身を守ることもできない。何が危険で危険じゃないのかも判断ができません。それを判断するための経験がないんです。だったら当然、怖くもなるでしょう。
ハカセにもそれくらいは想像ができます。そんな弱いミコナを相手に配慮の一つもできないようでは役に立つものを発明することもできないんじゃないでしょうか。
ハカセの発明の基になっているのは『誰かの助けになる』ということ。それが大事なんです。




