お願い、手を握ってて……!
ミコナが生まれたばかりの頃、ハカセは発明の仕事を休んでずっとルリアと一緒にミコナを育てていました。だけどそれはハカセ自身にとっても大変に有意義な時間でした。ミコナの世話をしていると次々新しいアイデアが浮かんできたんです。
『こうしたらいいんじゃないか?』
『ああしたらいいんじゃないか?』
そんな風に思えてそれを次々メモを取っていったんです。その中にかぷせるあにまるを実現するためのアイデアも含まれていました。
『胎児に魂が宿るのはどうやって?』
というのをミコナのオムツを替えながら考えていたらひらめいたんです。だけどこの時はまさか実際に活かされるとまでは思っていませんでしたけど。
いろいろな経験こそが自分自身に役立つというのをハカセは知っています。だから無駄なことなんてない。経験を無駄にするか活かすかは結局は自分次第なんですね。
ルリアも本当は自分が母親になれるかどうか不安もありました。世の中にはたくさんたくさんネガティブな情報も溢れてますから。他の人からはあまりそういうのを気にしない人だと思われてる彼女ですけど、実際には平気なふりをしてるだけで、気にしすぎるとそっちに引っ張られるというのが分かってるから気にしないように心掛けていただけなんです。
だから口にはしませんけど不安だったんです。それをハカセは分かってくれました。
「僕も一緒に頑張るから」
口先だけの人もいる中でハカセは確かに妊娠中の彼女のこともとても気遣ってくれました。それを実感してルリアも覚悟が決まったんです。
出産は計画無痛分娩でしたけどそれでもやっぱり覚悟は必要です。何があるか分かりませんから。痛みは想像してたのよりも随分とマシでした。だけどやっぱり怖い。
「お願い、手を握ってて……!」
縋るように言ったルリアにハカセは、
「もちろん」
言ってくれたのでした。
『生みの苦しみを乗り越えてこそ愛情も生まれる』
なんてことを言う人もいますけど、だったらどうして自然分娩しか方法のなかった昔に子供を労働力として酷使とかできたんでしょうか? また、虐待は昔からあったはずです。昔は虐待を虐待として見做さなかっただけで。
それに計画無痛分娩だからといって命の危険がなくなるわけじゃありません。そのことが分かってれば命の危険を乗り越えて生んだというのも分かるんじゃないですか? それが分からないという方がむしろおかしいんじゃないでしょうか?
ルリアも、痛みこそ抑えられてても大変な不安と戦ってミコナを生みました。それを支えてくれたのはハカセでした。だから信頼できました。
ミコナが生まれてからもハカセは笑顔で接するように努めてくれました。ミコナの前で大きな声を出したり乱暴なことをしないようにしてたんです。




