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それが救いに

「ありがと……」


帰り道、サンギータが不意にそう口にしました。


『ギータちゃんは歌を続けた方がいいと思う』


ヴァドヤがそう言ってくれたことに対してのものでした。するとヴァドヤも、


「ううん、私、ギータちゃんのお母さんだから……」


やっぱりおどおどとした感じながら、でもはっきりとそう応えます。


自分がほとんど何もしなくてもそうやってお互いを労り合うことができている二人を見て、ティーさんはとても嬉しそうに笑顔を浮かべていました。


こうやって少しずつできることが増えていくことを<成長>と言うんじゃないでしょうか。サンギータだけじゃなくヴァドヤもちゃんと成長していってるんです。それがこうやって傍にいることで確かめられていく。


これまでの人生がとてもつらいものであったとしても、そこから先が穏やかなもの幸せなものであればそれが救いになるんじゃないでしょうか。


つらい過去を持った人がそれを乗り越えていけるのは、結局は幸せをつかめたからでしょう。つらい経験を経てきたからといってそれを誰かにぶつけるようなことをしたら、それでも所詮はただの八つ当たりでしかなくて、不幸を再生産するだけでしかありません。


つらい経験をする人がただ増えるだけです。そんなことをしていたら誰も幸せになんかなれないですよね。


ティーさんにはそれが分かるから、二人が幸せそうにしてくれているのが嬉しいんです。大事にしたい幸せ。失いたくない幸せ。そういうものがあるという実感を持つからこそ、サンギータもヴァドヤもその幸せが維持できるように努力できるでしょうから。


もっともそうは言ってもまだまだ危なっかしいところがあるのも事実ですから、当面はこうやってティーさんが見守らなきゃいけないでしょうけど。


それでも、サンギータとヴァドヤの関係が良好なものになっていることをこうやって確認できるのは、ティーさんにとっても何よりのことです。


こうして二人を家まで送り届けて 、ティーさんもミコナ達の家に帰ります。すると屋根の上にはフカがいて、


「よお……」


声を掛けてきました。フカもタムテルを家まで送り届けて帰ってきたところでした。


そんなフカにティーさんが、


「タムテルはんはどないでっか?」


問い掛けると、


「まあまあだな。悪くはないと思うぜ」


淡々と応えます。タムテルの個人懇談については母親が出席してくれたんですけど、


「個人懇談なんて本当にくだらない。どうしてこんな無駄なことをやめられないのかしら。こんな無意味なことをしていて給料が貰えるって、教師はいいご身分よね」


タムテルの前で吐き捨てるようにしてそう言い放ったそうです。子供の前で親がそんなことを言っていて子供が教師を敬うようになると思うのでしょうか。



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