それができるような関係に
もちろん試作段階と言ってもティーさんはあくまでルリアの魂を宿そうとして上手くいかなかった例であって詳しく説明すると長くなるのでそういう感じに端折ったんですね。
認識としてはそれで大きく違っていませんので問題はないでしょう。
それにティーさんの存在はヴァドヤとサンギータがちゃんと母娘であることを説明する上では特に重要ではありませんし。
とにかくこうして若い警察官にも大まかな事業は伝わったみたいですから、そこで別れて改めて学校に向かいます。
本当は自転車で行けば早いんですけど、生徒は自転車では学校に行けない上に、実はヴァドヤは自転車にも乗れないんです。親から自転車も与えてもらえませんでしたし自転車に乗る練習もさせてもらえませんでしたから。だからサンギータもそんな母親に合わせてこうやって一緒に歩いてくれるんです。
それができるような関係になれたということですね。
そうして学校に着くとティーさんはヴァドヤの肩に乗って一緒に教室に向かいます。 教室の前では、
「こんにちは」
順番が一つ前の父子二人から挨拶されました。
「こ…こんにちは……!」
焦った感じで、しかも消え入りそうな小さな声ではありつつ、ヴァドヤも応えます。これだけでも実は大変な事なんです。以前の彼女ならこんな時は何も応えられなかったですから。
応えられるようになったというとても大事なんです。
それを<普通のこと>と言う人も多いでしょうけど、その普通のことができるというのは実際にはとても幸せなんでしょうね。
そんな普通のことをヴァドヤとサンギータも少しずつでもできるようになってきています。
ティーさんは間近でその様子を確認できているのがとても嬉しかった。完全に普通にはなれないとしても、でもこうやって自分がつきっきりにならなくても出掛けられるようになれば何よりです。
そうして待っているうちに、順番が来ました。
「お先です」
先程の父子が会釈してくれたのをヴァドヤとサンギータも会釈で応えます。それから教室に入って。
担任とはこれまでにも家庭訪問で顔を合わせてましたけど、ヴァドヤにとってはやっぱりすぐには慣れることもできなくて、すごくおどおどとしてしまいます。
そんな彼女の肩をティーさんがそっとトントンしてくれました。
「…!」
すると不思議と気持ちが落ち着いていきます。そんな彼女に担任は、
「サンギータさんは個性的なお子さんですが、お友達も多く、とても慕われてらっしゃいます。勉強の方も必ずしも上位というわけではありませんが、国語と音楽が得意のようですね。このまま得意な分野を伸ばすことを心掛けていただくのをオススメします」
言われた通りサンギータの国語と音楽の成績は五段階中の四。抜群に良いというわけではありませんけど、頑張っている方と言えるでしょう。




