オレはヒナじゃない
そうですね。確かになんでもかんでもきっちりと決まっているんだとしたらウル達がここにこうしているはずもありませんからね。
そんなウルとティーさんの会話をオウは、
「……」
何も言わずただ黙って聞いていました。
同じ頃、ガーはミコナに寄り添ったまま静かに寝ています。なんだか笑顔で。それというのもこの時、ガーは夢を見ていたんです。みんなでピクニックに行っている夢でした。それが楽しくて自然と笑顔になってしまっていたようです。
一方フカはいつものように屋根の上に陣取って見張りを続けています。とは言っても別に何も起こりませんけど。何の泥棒騒ぎ以降はいたって平和なものです。時々コウモリが空をよぎるくらいで。
あとこの辺りはイタチとかタヌキとか野生の動物も時々出てくるのでそれの目が闇夜の中にキラリと光ったりするくらいですね。
フカは空を飛ぶコウモリを見て思います。
『こいつらは別に生きる意味なんか考えて生きてないよな。それでもこうやってちゃんと生きてる。考えなきゃいけないのは生きる意味じゃなくてどうやって生きるかだよな。
オレは、ミコナやカリナには幸せでいてもらいたい。ミコナやカリナが幸せでいるにはどうすればいいのかっていうのを考えなきゃいけないだろ。こいつらだって人間みたいには複雑に考えちゃいないかもしれないが、生きていくために、どうやって餌を捕まえるかとかは考えているんだろうしな。
ミコナやカリナに幸せでいてもらうにはオレはどうしなきゃいけないのかを考えなきゃいけないだろ。自分じゃそれを考えもしないで誰かが幸せを持ってきてくれるのを口を開けてただ待ってるだけとか、めちゃくちゃ怠け者だよな。それか、ヒナだろ。
オレはヒナじゃない』
コウモリ達の姿を見て色々と考えるフカも、今の状態がしっくりきているみたいですね。
空を見上げれば月がかかっています。そして月明かりが、フカとミコナ達が休んでる家や街を照らしています。
静かで平和な夜。
これも結局、人間自身が作ってきたものです。歴史を振り返ればたくさんたくさん悲しいことつらいこともありましたけど、安心して寝られる夜を作ってきたのは事実なんです。
『そうだな。人間のやってきたことの中でふざけた真似だけを取り上げたら『人間なんていない方がいい』とか思うかもしれないが、人間がいなかったらミコナのカリナもいなかったんだからな……なんでもいろんな面があるってことだ。人間はそれを知らなきゃいけねーよな……それを知るってのは『考える』ってことだ。こんな静かで平和な夜を作れたのも、人間があれこれ考えてきたからだし』




