もし変な奴だったらそれこそ
猫のルリアが仲間だと思ってる人間は、あんまり慣れ慣れしくしてこないから、嫌いじゃありませんでした。だけど、そいつがたまに勝手に縄張りに入れる人間はすぐに触ろうとしてくるので嫌いでした。
そういう時は隠れて届かないようにします。
最近はそういうのもこなくなってたのに、今回は縄張りごとメチャクチャにされてしまったものですから、かなり怒っていました。
だから特にお気に入りのエサを用意されても許せません。仲間だと思ってる人間のことは嫌いにはなってませんけど、簡単に許してやろうとも思えないんです。
すると、ドアがこんこんと叩かれました。だからまたなにかあるのかと身構えてしまいました。
体をぎゅっと奥に押し込んで、もし変な奴だったらそれこそ噛み付いてやろうとさえ思いました。
なのに、
「いいか?」
「はい、どうぞ」
ってやり取りがあって入ってきた奴は、覗き込んだりしてきませんでした。
「どうだ? 少しは落ち着いたか?」
「はい、大丈夫です」
そんなやり取りがが聞こえてくるだけで、猫のルリアが隠れてるところを覗き込んでくる気配はまったくありません。
なので、
「……」
ちょっとだけ前に出て様子を伺ってみます。するとそこには、なんか、ボールのような丸いものが浮かんでいるではありませんか。
しかも、ちょうど猫のルリアがいつも遊んでいるのと同じくらいの大きさの。
だからそれを見た途端、うずうずしてしまいました。何しろそのボールのような丸いものは、ベッドに座った仲間だと思っている人間のすぐ目の前に浮かんでいて、ベッドを足場にして飛び掛かれば十分に届きそうなところにいたのです。
外に出るつもりなんかなかったのに、そんなものを見てしまったから、なんだかたまらない気分です。
『絶対に出て行くものか!』
とは思いつつも、体が勝手に前へ出てしまいます。
そのボールのような丸いやつには、平たい足のようなものと尻尾のようなものが生えていました。しかも、人間じゃないくせに、人間と同じ声で鳴いているのです。
しかも、その口にはたくさんの牙も生えてて少し強そうにも見えますけど、やっぱり我慢できないんです。
じりじりと前に出て、距離とタイミングを測ります。直接飛びかかるのではなくて、まずベッドを足場にしなければいけないので、しっかりと頭にイメージを描かなければいけません。
仲間だと思っている人間が座っている感じから、足場としてはかっちりしている印象です。だから多分、飛びかかるための足場にするには問題ないはず。だからこそその後の姿勢とかが大事です。
華麗にそのボールを床にはたき落として、遊んでやろうと思います。
しっかりイメージが固まって、さあ、いよいよです。体にも十分な力がみなぎりました。




