どこかで見聞きした記憶みたいな
「それにしても本当に視点が変わるといろんなもの見えてくるよね」
ガーと手分けしてキッチンを掃除しているルリアが言います。
「そうなのかな。ボク、最初からかぷせるあにまるだからよく分かんないや」
床下収納の掃除をしながらガーが応えます。それに対してルリアも、
「そういやそうだね」
改めて気付かされて。そうですね。元々は人間だったルリアと違ってガーは人間だった経験がありませんから。ルリアの魂の一部が宿っていた時にはその記憶もそれなりにありましたけど、今ではどこかで見聞きした記憶みたいな感じになっていました。
何となく覚えてはいても実感がないと言いますか。それはガーだけじゃなくてウルもティーさんもオウもフカも大なり小なりそうでありつつ、ガーは特にその傾向が強いみたいですね。
だけどそれで何か困るかと言えば何も困りませんけど。でもその時、
「あれ…?」
床下収納の掃除をしていたガーは、そこに本来いるはずのないものを見付けて小さく声をあげました。床下収納ので底面をもそもそと動くそれは、ダンゴムシと呼ばれる虫でした。床下収納の蓋はしっかりと隙間なく閉まっていたのにどこから入ったのでしょう?
その答えは簡単でした。床下収納には小さな換気用の穴があり、虫などが簡単には入ってこられないようにカバーも付けられていたのですが、そのカバーのスリットの幅がダンゴムシくらいなら通れるほどのサイズだったのです。だから床下からそこを通って入ってきたんでしょう。
「カワイイ…」
ガーはもそもそ動くダンゴムシの姿を見てつぶやきました。こういう虫についてダメな人は本当にダメなんでしょうけど、毛虫を熱心に観察していたタムテルと同じで平気な人もいるんですね。
ガーは<人>じゃないですけど。
ダンゴムシを見付けたガーは、それを見つめていました 。たくさんの足を規則正しく動かし、ゆっくりとですけど確実に前へと進むその姿は不思議な<美しさ>のようなものも感じさせます。
それは、タムテルが毛虫に感じていたものと似ているのかもしれません。こんなに小さくてもそこにはちゃんと命があるという実感と言いますか。
そうです。人間とは全然仕組みが違うけれど、確かに命があります。その様子を見ていると、元々は作られたものでしかない自分達かぷせるあにまるにも、人間やこのダンゴムシとは違う形だとしてもちゃんと命があるんだと思えてきます。
かぷせるあにまるのそれが本当に命なのかどうかというのはこれから検証されることになっていくでしょうけど、自分で考えて判断して決断して行動できるガー達は、命と言えるかどうかは別としても少なくとも意地悪なことをしていい相手とは思えないですね。




