何の根拠にも
フカとしては、ミコナだけでなく、タムテルのことも気になっていました。タムテルが誰かに意地悪されないかという以上に、誰かに意地悪しないかが大事だったんです。
世の中では『イジメられてないか』ということを気にする人は多いですけど、実際に誰かをイジメる時って、『一人を何人もで』ってことの方が多いですよね? だとしたら、『イジメられる』よりも『イジメる側になる』ことの方が多いんじゃないですか? だったら、『イジメてないか?』ということを先に心配するのが合理的だとは思いませんか?
『うちの子に限って』なんて何の根拠にもなりませんよ。
フカも、ミコナのことをそういう意味でも気にかけていました。ミコナが他の子に意地悪するような子じゃないのは分かってますけど、気持ちが追い詰められたりすると、ついということもありますからね。
だからタムテルの場合はなおさらです。
お弁当の他にも、リュックとかの持ち物を理由にイジメる人もいますよね。そういうのもあってフカは様子を見に来たんですけど、すべて杞憂でした。実際にかなりくたびれた印象のあるリュックを使ってたり、靴がかなり古かったりという子がいても、それについて揶揄する子もいませんでした。タムテルも、自身のお弁当代わりのスナックパンを誰かにからかわれたり、逆にくたびれたリュックや靴を使ってる子をからかったりということもありませんでしたし。
彼の家庭環境は相変わらずでありつつ、フカが話し相手になっていることでタムテルの精神的なバランスは保たれて、問題を起こすほどは追い詰められていないということでしょうね。
そうして遠足は楽しいままに終わり、お昼過ぎ、下山を始めます。途中、転んで怪我をした子もいたりしつつも、それも大事にはならずに済んで、みんなバスに乗り、学校へと戻っていったのでした。
もちろんフカはまた、バスの屋根に捉まって。
こうしてミコナ達がバスで学校に向かってる間、学校内のベンチでサンギータとティーさんが話をしていました。ミコナと一緒に帰るためです。
「それで、お母はんとは上手くやれてるんでっか?」
サンギータの様子を見てるだけでも大丈夫そうなのは察しながらも、念のためティーさんは聞きます。
「うん。まあまあかな」
そんな風に言いながらも、彼女の表情はとても穏やかで。気持ちがトゲトゲしてないのがすごく伝わってきます。
「それはええこっちゃ」
ティーさんも笑顔になります。この調子で、サンギータの方は問題なさそうなのをいつも確認するんです。
彼女のお父さんとのことについては何も進展してませんけど、サンギータとヴァドヤさえ平穏に暮らせていればそれでいいでしょう。下手に父親に干渉したらやぶ蛇になるかもしれません。向こうから関わってこないならそっとしておくのが一番ですね。




