ちゃんと記憶として
そんな中、ウルは考えます。
『ハカセとルリアが幸せそうでいいな』
自分の中からルリアの魂がいなくなったことであどけない感じになってしまったことは自覚してますけど。それは別に嫌じゃない。ただただ素直にルリアがちゃんとかぷせるあにまるになれたことと、自分がこうして残れたことが嬉しかったんです。その上で、ハカセとルリアが幸せそうな様子に心が満たされる。
ウルはただ、みんなが幸せでいてくれたらいいんです。特にハカセとミコナとルリアが。みんなが幸せそうにしてるのを見てるだけでいい。
ああもう、本当に。
するとハカセが、
「ありがとう、ウル。君がみんなをまとめてくれてたから、ルリアの魂も無事にまとまれたんだと思う」
不意にそんなことを。しかもルリアも、
「そうだね。私の中にもウルがどれくらい頑張ってくれたのか、ちゃんと記憶として残ってるよ」
言ってくれたのでした。
「僕は別に…そこまで上手くやれてなかったと思うから……」
ハカセとルリアに褒められて逆に恐縮してしまいました。ウル自身、みんなをまとめられていた自覚はないんです。ホントにみんな、好き勝手にしてて。特にオウとフカは、ぜんぜん制御できなかった。
ただ、結果としてオウもフカも、ミコナを守ることはできてましたからよかったなと思うだけで。
けれど、ハカセとルリアの目には、ウルはちゃんと頑張ってくれていたと見えているんです。だから感謝してます。
真面目過ぎてあまり目立たないウルですけど、見てる人は見ています。ウルの生真面目さはオウやフカが暴走しないようにしっかりと抑える役目を果たしていました。
ハカセとルリアはそのことをウルに伝えたかった。そうやって伝えるというのは大切なことですね。思っているだけじゃ相手には伝わりませんから。
こうして穏やかなひと時を過ごしたウルとルリアとハカセは、あったかい気持ちになって、バイクで家へと帰りました。
一方その頃、ティーさんは、ミコナを迎えに行く用意をします。フカはタムテルがまだフォローが必要なので家まではティーさんが一緒に帰っているんです。
加えて、ティーさんの場合はサンギータの様子も気になりますからね。
そして学校の校門前で待っていると、ミコナとルイネとエンファとサンギータが一緒に出てきました。
するとティーさんは、
「調子はどないでっか?」
サンギータに問い掛けます。それに対して彼女は、
「まあぼちぼちだね」
と返します。でも、『ぼちぼち』とは言いながらもその表情はとても穏やかで、気持ちに余裕があるそれでした。母親との関係がうまくいっているということでしょう。
それを確かめてティーさんはホッとします。