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とても好きな笑顔

ルリアとウルを伴って、ハカセはバイクを走らせます。小さな電動スクーターはそんなにスピードも出ませんけど、ハカセにとってはそれで十分でした。スピードのスリルを味わう趣味はありませんから。


ハカセにとってバイクはあくまで移動時間を短縮するための道具。ただ、それにルリアとウルが乗っているというのがなんだか嬉しくて。前かごにちょこんと収まったルリアとウルを見ると、頬が緩んでしまいます。


「気持ちいいね」


ルリアが声を上げると、


「そうだね」


ハカセも少し弾んだ声で応えて。


ウルはそんな二人を見守っています。


そして目的のカフェに着くと、そこは今日も若い女性やカップルで賑わっていました。やっぱりあまり男性が一人で来るような雰囲気ではありません。だからハカセも一人では足が向かなかった。けれどウルが一緒に行ってくれるようになって、さらに今はルリアも一緒に行ってくれるようになって、ハカセにとっても楽しみになっていたんです。


「注文は?」


席に着いたハカセが問い掛けると、


「パンケーキ!」


ルリアとウルが声を揃えて応えました。だからハカセは、呼び鈴を押してホールスタッフを呼んで、


「パンケーキを二つ。僕にはホットコーヒーを」


と告げました。


「ご注文を確認します。パンケーキ二つにホットコーヒーがお一つですね」


若い女性のホールスタッフがそう口にすると、


「それでお願い」


ルリアが言いました。可愛らしいイルカのペットロボット?に、その女性は口元が緩みながら、


「かしこまりました」


何とかホールスタッフとしての姿勢を貫いて頭を下げて、戻っていきます。


「うふふ♡ 楽しみ~♡」


それこそ緩みきったルリアの笑顔に、ハカセも笑顔になって、


「その笑い方は、変わらないね」


言いました。ハカセがとても好きな笑顔でした。そんな彼女の笑顔にどれだけ励まされたか分からないくらいに。


そしてパンケーキが届くと、


「これよこれ! 美味しそ~!」


ルリアはそれこそ満面の笑みを浮かべて、喜びました。そんな彼女を見て、ハカセも嬉しそうに微笑みました。見た目こそかぷせるあにまるでも、その表情やしぐさはまぎれもなくルリアだったのですから。


それに対してウルは、


「いただきます」


と、なんだか以前より真面目そうな感じに。ルリアの魂が分離したことで、ウルとルリアは全く別の存在になったのだということが改めて伝わってきました。


でも、それでいい。それでいいんです。


この穏やかな時間が続くことが最も望ましいんです。


「うふふ、美味しい」


大きな口を開けてパンケーキを味わうルリアの姿を見て、他のお客が、


「見て見て、可愛い~」


「ホントだ、可愛い~」


と声を上げます。


とても柔らかい空気が店内にも満ちているかのようでした。



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