それを理解するからこそ
対して『相手の言葉に耳を傾ける』というのは、
『相手の意図を理解しようとする』
『相手が何を望んでいるのか理解しようとする』
『相手がどう思っているのか理解しようとする』
『相手が何を伝えようとしているのか理解しようとする』
ことですからね。それを理解するからこそ、
『聞き入れられる場合もあれば、聞き入れられない場合もある』
というのが判断できるわけですから。言いなりになっているだけじゃできることではありません。
ルリアやハカセがそうしてくれていたから、目の前でそれを示してくれていたから、ミコナもそれができるようになっていた。ハカセやミコナがそうするようにしてくれていたからカリナも自分の意図をちゃんと伝えようとしてくれるようになったんです。
最初から自分の言葉に耳を傾けるつもりもない相手の言葉に耳を傾けようという気にはなかなかなれませんからね。
こうしてカリナは、ルリアがこの家庭を築いて幸せになっていたことを実感しました。
ルリアが亡くなってミコナの家族がハカセだけになってもルリアの気配がこんなに感じ取れるんですから。彼女がどれほど大切にされていたかがすごく伝わってきます。
ハカセがもしただの自分勝手なズルい人だったりしたらミコナはこんなに穏やかな笑顔でいられなかったでしょう。カリナにもそれが実感できてしまったんです。だからこそ自分も力になりたいと改めて思えました。
『そのためには二人のことをちゃんと理解しないといけない』
そうも思います。
自分のことを認めてもらえるからこそ相手のことも認めようと思えるし、自分のことを理解しようとしてくれているのを実感できるからこそ自分の相手のことを理解しようと思えるというのは確かにあるでしょうね。
もちろん自分が相手を認めようとしても理解しようとしても必ず相手もそうしてくれるとは限りませんけど。
自分が相手を理解しようとしても相手に自分を理解しようとしてくれるかどうかは分からない。
それも確かに事実です。でもだからってそれを相手の所為にして最初から理解しようとしないんでしたらそれは自分の方が<相手を理解しようとしない人>ってことになってしまいませんか?
ルリアもハカセもそう思うから、相手に理解してもらえることを期待して相手を理解する努力をするわけじゃないんです。あくまで、自分を理解しようとしてくれる人に出会えた時に備えてというのも理由のひとつなんです。
しかも、ミコナが生まれてからは、彼女に手本を示そうとしているのあります。親として。
そしてミコナは、ルリアやハカセが示してくれたそれを学び取って、今、カリナのことを理解しようとしてくれています。
だからこそカリナもミコナを理解しようとしてくれているんです。