ママとはまた必ず会えるから
ママと会えなくなって悲しかったのは事実です。別に本当に平気だったわけじゃありません。
だけどハカセが、
「ママとはまた必ず会えるから」
と言ってくれていたからそれを信じることができたというのは間違いなくあります。そして何よりまだハカセがいてくれたから。
発明や発明のための研究に夢中になると自分のことさえちゃんとできなくなるような人だったけど、ミコナのことはちゃんと見ててくれましたし、ママが入院してからは家のことも不器用ながらやるようにしてくれていました。
それに加えて、ミコナがまだ赤ちゃんだった頃にハカセがすごく丁寧に接してくれていたことをさすがにはっきりは覚えていないんでしょうけどルリアに対して以上にハカセになついていたというのがあったからかもしれません。
ハカセのことがちゃんと信頼できていたということでしょう。
それからハカセは、ルリアを迎えるための準備も整えながら、そのための発明に全力を注ぎながら、同時にミコナのこともちゃんと見るように気を付けていました。
ルリアがいた頃には彼女に任せてしまえていたことを全部自分一人でやらないといけないわけですから。
だけどそれは正直なところとても大変なことでした。ミコナは年齢の割にはしっかりしたところのある子だったとはいえさすがにまだ幼かったですから、目を離すことはできません。発明のための研究はミコナが保育園に行っている間に集中するしかなかったんです。
家のことは敢えてミコナが家にいる時に一緒にやるようにしましたけど。こうすればミコナとコミュニケーションを取りながら家のこともできますしね。できることは手伝ってもらうんです。
もちろん無理はさせられないですが、幼いミコナに合わせることで効率はとても悪いですが、ミコナが家にいる間は研究には集中できないのでそんなに問題はありませんでした。
ハカセはミコナに家のことを手伝ってもらっている時も完璧になってもらおうとは考えていませんでした。だってそれはあくまでミコナとの一緒の時間を楽しむためのものですから。それ以外は別に重要じゃなかったんです。
それにハカセ自身が上手にできないのにミコナが上手にできないことを責めていてどうするんでしょう。
しかもこれはルリアもしていたことです。だからミコナもママがやっていることを傍で見ていて、
「わたしもわたしも!」
って言ったらママはちゃんとやらせてくれて少しは分かるようになっていたんです。むしろハカセよりは分かっているくらいには。
だから掃除をする時にも、
「パパ、そうじはうえからするんだよ」
「そ、そうなんだ?」
なんて感じで逆にハカセの方が掃除のやり方を教わったり。
料理だってハカセはずっとレトルトを温めるだけなのにミコナは目玉焼きを作って見せたんです。
さすがに卵はハカセに割ってもらいましたけど。